【完結】わたしの娘を返してっ!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
4 / 13

彼は娘を彼らに会わせた!!!

しおりを挟む



 子供が生まれた。

 可愛い女の子なのに……

 彼が、自分の両親に会わせたいと言った。

 相変わらず、自分の親類がわたしのことをどう思っているのかわからないみたい。

 わたし、嫌われてるのに。

 あんな酷いことを言った連中に、この子が歓迎されると思ってるのかしら?

 本当、能天気で無神経な人。

 どうにか断ろう。その方がこの子のためだ。



 ――――・・・・・・


 赤ちゃんの頃から、どうにかこうにか会わせないように頑張っていた。

 まだ小さいからと断っていたのに。

 この子を彼の親族に会わせる気なんて無かったのに……本当に、最悪だ。

「もう三歳になるからいいだろう?」

 と、彼が勝手に向こうの両親と約束していた。娘を見せないといけない。

 なにが孫は可愛いだ!!!

 自分達が言ったことも忘れて!!

 ろせって、言ったクセに!!

 なにがこれからはもっと遊びにおいでだ!!!

 マジフザケンな!!!

 クソ! クソクソクソ!!!



 ――――彼女の、怒りに任せた乱雑な文字。



 彼が、余計なことを言った。

 最悪、最低だ。

 本当に、心底から彼を見損なった。

 そのせいで、あの子の両親がわたしの娘を見たいと言ったそうだ。

 嫌なのに。嫌で厭で堪らなかったのに。

 なのに、彼は娘を彼らに会わせた!!!

 なにが、あの子の生まれ変わりだ!!!

 彼は、娘があの子に少し似てるって言っただけじゃない!!!

 その言葉でさえも厭だったのに!!!




 娘の調子が悪い。病院へ連れて行った。

 娘はどうやら喘息持ちのようだ。




 あの子の母親が、家に来た。厭だ。気持ち悪い。

 娘の様子を見に来たと言い、訳知り顔で病弱な子供を育てるための心得とやらを語る。

 やめてほしい。迷惑だ。

 あの女や、彼の両親が娘に勝手にオモチャや服、お菓子を与えて酷く甘やかす。

 心底やめてほしい。

 やめるよう言ってくれと彼に頼んでみたが、

「ありがたいじゃないか。君も助かるだろう?」

 そう言って、笑っていた。

 信じられない。

 なんでわからないの?

 馬鹿なの?




 彼の母親と、あの子の母親が我が家に入り浸るようになった。そして、わたしを責める。

 娘の面倒を見るのが下手だと。

「見てられないから、わたし達が手を貸してあげる。子供はみんなで育てるものでしょう?」

 笑って、そう言った。

 そんなこと頼んでないっ、余計なお世話だ!!!


 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!

 あの子の母親のあの女が、わたしの娘をあの子の名前で呼ぶ!!!

 娘も、あの女に懐いている!!!

 娘に、わたしの悪口を吹き込む。

 お願いだから、やめてほしい……


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を起こす~転校生渉の怪異事変~

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

ファムファタールの函庭

石田空
ホラー
都市伝説「ファムファタールの函庭」。最近ネットでなにかと噂になっている館の噂だ。 男性七人に女性がひとり。全員に指令書が配られ、書かれた指令をクリアしないと出られないという。 そして重要なのは、女性の心を勝ち取らないと、どの指令もクリアできないということ。 そんな都市伝説を右から左に受け流していた今時女子高生の美羽は、彼氏の翔太と一緒に噂のファムファタールの函庭に閉じ込められた挙げ句、見せしめに翔太を殺されてしまう。 残された六人の見知らぬ男性と一緒に閉じ込められた美羽に課せられた指令は──ゲームの主催者からの刺客を探し出すこと。 誰が味方か。誰が敵か。 逃げ出すことは不可能、七日間以内に指令をクリアしなくては死亡。 美羽はファムファタールとなってゲームをコントロールできるのか、はたまた誰かに利用されてしまうのか。 ゲームスタート。 *サイトより転載になります。 *各種残酷描写、反社会描写があります。それらを増長推奨する意図は一切ございませんので、自己責任でお願いします。

本当にあった怖い嘘の噂

ツヨシ
ホラー
ある日転校してきた絶世の美少女。しかし悪い噂が彼女を襲った。

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

ペルシャ絨毯の模様

宮田歩
ホラー
横沢真希は、宝石商としての成功を収め、森に囲まれた美しい洋館に住んでいた。しかし、その森からやってくる蟲達を酷く嫌っていた。そんな横沢がアンティークショップで美しい模様のペルシャ絨毯を購入するが——。

処理中です...