【完結】わたしの娘を返してっ!

月白ヤトヒコ

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彼は娘を彼らに会わせた!!!

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 子供が生まれた。

 可愛い女の子なのに……

 彼が、自分の両親に会わせたいと言った。

 相変わらず、自分の親類がわたしのことをどう思っているのかわからないみたい。

 わたし、嫌われてるのに。

 あんな酷いことを言った連中に、この子が歓迎されると思ってるのかしら?

 本当、能天気で無神経な人。

 どうにか断ろう。その方がこの子のためだ。



 ――――・・・・・・


 赤ちゃんの頃から、どうにかこうにか会わせないように頑張っていた。

 まだ小さいからと断っていたのに。

 この子を彼の親族に会わせる気なんて無かったのに……本当に、最悪だ。

「もう三歳になるからいいだろう?」

 と、彼が勝手に向こうの両親と約束していた。娘を見せないといけない。

 なにが孫は可愛いだ!!!

 自分達が言ったことも忘れて!!

 ろせって、言ったクセに!!

 なにがこれからはもっと遊びにおいでだ!!!

 マジフザケンな!!!

 クソ! クソクソクソ!!!



 ――――彼女の、怒りに任せた乱雑な文字。



 彼が、余計なことを言った。

 最悪、最低だ。

 本当に、心底から彼を見損なった。

 そのせいで、あの子の両親がわたしの娘を見たいと言ったそうだ。

 嫌なのに。嫌で厭で堪らなかったのに。

 なのに、彼は娘を彼らに会わせた!!!

 なにが、あの子の生まれ変わりだ!!!

 彼は、娘があの子に少し似てるって言っただけじゃない!!!

 その言葉でさえも厭だったのに!!!




 娘の調子が悪い。病院へ連れて行った。

 娘はどうやら喘息持ちのようだ。




 あの子の母親が、家に来た。厭だ。気持ち悪い。

 娘の様子を見に来たと言い、訳知り顔で病弱な子供を育てるための心得とやらを語る。

 やめてほしい。迷惑だ。

 あの女や、彼の両親が娘に勝手にオモチャや服、お菓子を与えて酷く甘やかす。

 心底やめてほしい。

 やめるよう言ってくれと彼に頼んでみたが、

「ありがたいじゃないか。君も助かるだろう?」

 そう言って、笑っていた。

 信じられない。

 なんでわからないの?

 馬鹿なの?




 彼の母親と、あの子の母親が我が家に入り浸るようになった。そして、わたしを責める。

 娘の面倒を見るのが下手だと。

「見てられないから、わたし達が手を貸してあげる。子供はみんなで育てるものでしょう?」

 笑って、そう言った。

 そんなこと頼んでないっ、余計なお世話だ!!!


 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!

 あの子の母親のあの女が、わたしの娘をあの子の名前で呼ぶ!!!

 娘も、あの女に懐いている!!!

 娘に、わたしの悪口を吹き込む。

 お願いだから、やめてほしい……


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