【完結】わたしの娘を返してっ!

月白ヤトヒコ

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本当に、最悪の酷い式だった。

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 彼の両親、そしてわたしの両親へ挨拶を済ませたわたし達二人は、数ヵ月後結婚式を挙げることとなった。

 彼は気付いてない様子だったけど、実は彼の親類がわたしへ向ける視線は、ご両親への挨拶の時点で、どこか冷ややかだった。

 だからわたしは、無理に式を挙げなくてもいいと言ったのだけど……「あの子があなた達の式を楽しみにして、参加したいと言っているんだから、ちゃんとした式を挙げてちょうだい」と。

 そう、彼の母親に言われた。あの子の母親とは、姉妹なのだそうだ。



 ――――アイツが俺達の結婚式を見たいというから、是非見せてやってほしいと叔母夫婦に頼まれたんだ。おふくろにも、是非にと言われて……



 結婚式に、あの子が来た。数ヵ月前に比べると大分痩せていて、メイクでは誤魔化せない程にやつれた面持ちをしていた。

 それから式が始まってすぐにあの子が、胸を押さえてテーブルに突っ伏した。ガチャン! と、食器やグラスの落ちて割れる音が会場に響き渡った。

 結局、あの子は心臓発作で倒れて、救急車でそのまま運ばれて行った。

 あの子の両親は、あの子に付き添って会場を後にするまで、なぜかわたしをずっと睨み続けていた。

 会場は凍り付き、「無理して来なくても」そんな言葉がわたし側の親族から零れた。

 すると、「なんて薄情な」と、彼側の親族がわたしの親族達へと零してっ・・・

 彼は謝ってくれたけど、ハッキリ言って式は、とても酷いものになってしまった。台無しだ。

 これからのことが、不安で不安で堪らない。



 ――――お前は、そんな風に思っていたのか? 気にしていないから大丈夫だと、そう言っていたじゃないか。そして、この時点で俺の親族が冷たいと思っていたのか? 俺はそれに、気付いていなかった?


 あの結婚式からわたしは、彼側の親族からよく思われていないということが、あからさまに判るようになった。彼には悪いけど、向こうの親類とはあまり顔を合わせたくない。



 ――――嫌、だったのか。君は――――

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 ――――ページを捲ると、几帳面な文字に少し荒さが見えた。



 あの子が死んだと、彼の母親から連絡があった。

 嫌だったけど、葬式に出ることにした。

 予感していた通り……本当に、散々な葬式だった。これなら、あんなの出ない方がマシだった。

 意味がわからない。

 なぜわたしが、あの子から彼を奪った泥棒猫だなんて言われないといけないの?

 挙げ句、わたしが人殺し? 冗談じゃない。なんであの子の両親に責められなきゃいけないの?

 あの子が彼を好きだったからなに? あの子を返せ? できるワケないだろうが!

 子供を亡くしたばかりで可哀想? そして、今は錯乱してるだけだから許してやってほしい?

 錯乱してたら、傷心だったら他人になに言っても許されるワケっ? フザケンなっ!

 本当に、最悪の酷い式だった。

 彼との結婚が、間違いだった……と。そんな風には、まだ思いたくない。



 ――――結婚式から数ヵ月後、アイツが突然死んで、叔母夫婦が葬式で取り乱したときの……

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