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彼女は幼い頃から病弱だったそうだ。

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 久々に妻の日記を、広げると――――少し几帳面さを感じさせる、妻の文字が並んでいた。





 あの子は、彼の六つ年下のイトコだそうだ。

 彼女は幼い頃から病弱だったそうだ。そんな彼女を、彼は妹のように可愛がったという。

「妹のように思っている子なんだ。だから、仲良くしてやってほしい」

 そう言って待ち合わせたというおしゃれなカフェで紹介されたのは、華奢で可憐な、線の細い儚げな印象の綺麗な女の子だった。

「え? お兄ちゃん、結婚するの?」

 彼を兄と称した彼女。わたしと彼を見詰め、驚いたように大きな瞳が見開いた。サッと色を失くしたその顔に、わたしは気付いた。

 ああ、この子は……彼のことが好きだったのだと。

「ああ。お前は俺の妹も同然だからな。これから家族になるこの人と、仲良くしてくれると嬉しい」

 彼が、驚くあの子にそう言って微笑むと、あの子は不安そうにわたしへ挨拶をした。

「どうした? 顔色が悪いが、体調が悪かったのか? なら、無理して来なくてもよかったんだぞ?」

 顔色を悪くしたあの子に彼が尋ねると、あの子は首を振った。

「ううん。だい、じょ……ぅっ!」

 大丈夫。と、そう言い切る前に、あの子は顔を歪めて胸を押さえた。そして、苦しそうに喘ぎ出した。

 ヒューヒューと苦しげな呼吸音。

 なんでも、彼女は幼い頃から心臓が弱いそうで、いつもは薬を持ち歩いているのに、最近は体調がよかったからと油断して、薬を持っていなかったようだ。

 救急車を呼ぶか聞くと、彼女は首を振って嫌がった。

 舌打ちした彼は彼女を抱き上げてタクシーを呼ぶと、わたし達は急いで彼女の家へと向かった。

 あの子の家に着いて薬を飲んだあの子が落ち着くと、あの子の母親は彼にありがとうと言って感謝した。

「ごめんなさいね、お友達と一緒だったのに、わざわざこの子を送ってくれて」
「いや、友達じゃなくて、俺。この人と結婚するんだ。それで、紹介しようとしたんだけど」

 彼が困ったように言葉を濁すと、わたしへ向けていた彼のお友達という認識だった視線の温度が、サッと低くなった気がした。

「そう、それはごめんなさいね」
「いや、いいよ。まあ、そういうことだから。よろしくお願いします」

 と、彼の両親への挨拶より、彼の叔母への挨拶の方が先になってしまった。

「その、折角ご挨拶してくれたのに悪いんだけど、今からこの子を病院に連れて行かなきゃいけないの。慌ただしくてごめんなさいね」

 そう言われ、わたし達はお暇することにした。



 ああ……確か、アイツと彼女の初対面はそんな風に終わった。彼女の日記を読みながら、あのときのことを思い出す。

 アイツが発作を起こして、デートが台無しになって……彼女は――――


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