【完結】わたしの娘を返してっ!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
1 / 13

妻と離縁した。

しおりを挟む



 学生時代、彼女に一目惚れをした俺は、彼女を妻にと乞うて結婚した。

 優しくて温かい女性で――――

 彼女となら幸せになれる、と。そう、思っていた。

 だが、彼女は子供が生まれると変わってしまった。

жжжжжжжжжжжжжж


 わたしの子供はとても可愛いの。

 わたしと、あの人との子供。

 わたしが生んだ、あの人との子供。

 可愛い可愛い女の子。

 将来はきっと、美人になるだろう可愛い子供。

 愛しい子供。可愛い子供。

 ええ、愛しているの。愛しているわ。

 そう、わたしは娘を愛してる。

 だって、自分で生んだ子だもの。

 そんなの、当然・・のことでしょ?

 愛しているわ。愛しているの。

 愛してる。

 可愛いと、思っているの。

 可愛いのよ? 本当よ? 本当なの。

 本当にっ……

 愛してるの。愛してるわ。愛してる。

 嘘じゃないの。本当よ?

 だって、あの子はわたしの子供なんだから!

 愛してるはず・・よ。

 わたしはっ、あの子・・・をちゃんとっ……

 違う、あの子じゃない!

 わたしは娘を愛してるんだってばっ!!! 嘘なんかじゃないっ!!!

 だからっ、返してっ!

жжжжжжжжжжжжжжж

 ――――精神的におかしくなった妻が、向こうの両親に連れられて家を出て行ってしまった。

 病弱な娘を育てるのに、育児ノイローゼになってしまったようだった。「なんでアンタはわたしに似ていないの!」と、「早く丈夫になりなさいよ!」そうヒステリックに、小さな娘を何度も何度も強く責めていた。

 その姿をもう、いい加減見ていられなくなった。なにも悪くない娘が可哀想だったんだ。

 向こうの両親には、「孫の親権は求めない。頼むから、娘にはもう関わらないでくれ」と、そう言われて離婚届けに判を押した。

 それから、男親の俺一人で病弱な娘を育てるのは難しいからと、娘の面倒を見ようと快く言ってくれた叔母夫婦に娘を預けて……

 あれからもう、何年が経つか……

 今でも脳裏に蘇るのは――――

「わたしの娘を返してよっ!?」

 という取り乱した悲痛な姿。

 関わるなと言われて、その理由を聞いた俺へと、妻の母親が怒りを籠めた顔で投げ付けた手帳。

 中身は日記のようだったが、日付などは特に無く、彼女が嫌だと思った出来事が延々と綴られていた。

 あのときにはうんざりして、『彼女の日記』を読むのをやめたが――――

жжжжжжжжжжжжжжж

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

Chain to life

時谷 創
ホラー
原因不明の昏睡状態に陥った幼馴染。様子を見に家へ向かう途中、 謎の男に声をかけられ、その甘い言葉に誘われて・・・?

ペルシャ絨毯の模様

宮田歩
ホラー
横沢真希は、宝石商としての成功を収め、森に囲まれた美しい洋館に住んでいた。しかし、その森からやってくる蟲達を酷く嫌っていた。そんな横沢がアンティークショップで美しい模様のペルシャ絨毯を購入するが——。

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

apocalypsis

さくら
ホラー
女子生徒が持ち込んだ一冊の本により、数学教師の斎は非日常へと足を踏み入れる。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

処理中です...