13 / 13
ああ……ようやくお前の気持ちがわかったよ!
しおりを挟む「あははははははははははははっ!!」
あの頃、毎日毎日わたしを殴っていたときとは別人のようになってしまったこの真性の外道男。
怪我をして不自由になった身体は弱々しく、わたしが世話をしないと生きて行けなくなった。
手術費や入院費はそれなりに掛かったけど、『彼女の証言』で事故として処理されたため……そして、わたしも事故だろうと認めたため、保険金は結構手に入った。
だから、実はわたしがあくせく必死に働かなくても、贅沢をしなければそれなりに暮らしては行ける。
けど、家にコイツと二人きりでいるのもつまらない。そして、放置した後の縋るような表情と、憎しみの混じる表情とが面白いと思ってしまった。
あの頃――――自分が殴られているときには、『なんでこの人はわたしを殴るんだろう?』と、ずっと不思議で仕方なかった。
でも、コイツがこうなって・・・わたしよりも弱くなってから、気が付いた。
ああ、コイツの顔が、表情が苦痛で、恥辱で、怒りで、歪む姿が愉しい! もっと見ていたい! と。そう、気が付いてしまった。
最初は、復讐のつもりだった。
一応、彼女に本当のことを証言させてコイツを刑務所へぶち込むことも考えたけど・・・ほら? そうすると、わたしの気が済まないから。
少し調べてみたら――――
寝たきりの容疑者が逮捕された場合……囚人は、刑務官や同じ囚人に、ちゃんとした世話や介護をしてもらえるらしい。刑務所には医者もいて、ちゃんと診察も受けられる。場合によっては、医療刑務所や一般の病院に移されることだってあるのだとか。
コイツがそんな環境で、ちゃんと介護されて、人間扱いしてもらえるだなんて、わたしが赦さない。
あの子を殺された復讐。
あの子を殺したクセに、『お前が腹を庇わなかったせいだ』と。そうクソ戯けな外道に宣われたことへの復讐。更には、あの子の死を、不倫の……彼女を誑かして遊ぶために利用したことへの復讐。
コイツを、このクソ外道を、うんと苦しめてやろうと思った。けれど、簡単には死なせてやらないつもりで。
自分は介護士だからと言って、コイツを家に連れ帰った。わたしをコイツに紹介したおばさんも、元介護士のわたしに任せるのなら安心だと言って、太鼓判を押してくれた。
それで、コイツを苦しめることにした。介護をするという名目で、死んだ方がマシだと思う程の苦しみを与えて・・・絶対、地獄に叩き落としてやろうと。
でも、ある日わたしは、コイツが苦しむ姿を笑顔で見ていられることに気付いた。
とても、気分がスッキリする。清々しく気が晴れる。
ああ、コイツもこういう気分だったのか。そうだったのか。
だから、コイツはわたしを殴ることをやめなかった。いや、やめられなかったのか……
「ふふっ、あははははははっ!! ああ……ようやくお前の気持ちがわかったよ!」
そうしてわたしは、今日も寝たきりになった旦那を虐待する。
介護の現場で、この患者さんはきっと地獄を味わっているだろうと、殺してほしいと願っているのだろうと、そう感じたような酷い待遇。
絶対に、ああはなるまい。あんなことはしては絶対にいけない、と思っていたこと。
それと、同じことをわたしはする。コイツへ、している。し続けると、決めた。
コイツが死ぬまで。ずっと、ずっと・・・
生き地獄を。殺してくれと願う程の地獄を、味合わせてやるっ!!
「ふふっ……あははははははっ、ははははははっ!! 苦しめ苦しめ苦しめ苦しめっ!!」
ごめんね? あのとき、わたしがもっと強くなれていれば……産まれて来れたかもしれないのに――――と、空っぽのお腹を撫でながら。
わたしはきっと、もう狂っている。だって、コイツを甚振ることが、愉しくて愉しくて仕方ない。
ああ、でも・・・
コイツ以外を苦しめて、愉しいと、そう思えるようになったら。なってしまったら・・・
そうしたら、きっとわたしはコイツと、この外道と同じになってしまう。
けど、わたしは、絶対にコイツと同じところまでは堕ちたくない。そこまで腐りたくはない。
だから、そのときには介護士の仕事を辞めようと固く決意をしている。
「ふふっ、ふふふ……」
コイツの顔が苦痛に歪む姿が、嬉しくて笑いが止まらない。自然と笑えて来る。
・・・コイツもわたしも、死んだらきっと地獄に堕ちるんだろうなぁ。
「あはははははははははっ……」
__________
というワケで、奥さんの闇落ちエンドで終了。
※介護虐待は犯罪です。
※書いてる奴は犯罪行為を推奨しているワケではありませんので、あしからず。
※『虐待』タグを付けようと思ったのですが、アルファポリスでは『虐待』はタグのキーワードに使用禁止になっているようで、付けられませんでした。
でも、きっとこういう風な復讐は、現実にあるんだろうなぁ……と。(-""-;)
25
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ハートを捧げたシンデレラ
月白ヤトヒコ
ホラー
父親がなく、ママが病気になり、児童養護施設に預けられることになったサンディが、養子として引き取られた家の義兄ディアンに恋をして、彼の『唯一無二の存在』になる話。
話自体はダークですが、心の綺麗な方にはハッピーエンドに見えるかも?
【完結】淘汰案件。~薬屋さんは、冤罪だけど真っ黒です~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
とある酒場で、酒を飲んでいた冒険者のうち、約十名が体調不良を訴えた。そのうち、数名が意識不明の重体。そして、二人が死亡。
調査の結果、冒険者の体調不良や死因は、工業用アルコールの混ぜ物がされた酒と、粗悪なポーションが原因であると判明。
工業用アルコールが人体に有害なのは勿論だが。その上、粗悪なポーションは酒との飲み合わせが悪く、体外へ排出される前にアルコールを摂取すると、肝臓や腎臓へとダメージを与えるという代物。
酒屋の主人は、混ぜ物アルコールの提供を否定。また、他の客からの証言もあり、冒険者のうちの誰かが持ち込んだ物とされている。
そして、粗悪なポーションの製作者として、とある薬屋が犯人として浮上した。
その薬屋は、過去に幾度も似たような死亡事故への関与が疑われているが、証拠不十分として釈放されているということを繰り返している、曰く付きの怪しい薬屋だった。
今回もまた、容疑者として浮上した薬屋へと、任意で事情聴取をすることになったのだが――――
薬屋は、ひひひひっと嬉しげに笑いながら・・・自らを冤罪だと主張した。
密やかで、けれど致命的な報復。
ざまぁと言えばざまぁですが、あんまりすっきりはしない類のざまぁだと思います。
【完結】「まずは……手前ぇよりも上位の存在に犯されて来い。話はそれからだ」
月白ヤトヒコ
ファンタジー
よその部署のヘルプという一仕事を終えて帰ろうとしたら、突然魔法陣が現れてどこぞの城へと『女神の化身』として召喚されたわたし。
すると、いきなり「お前が女神の化身か。まあまあの顔だな。お前をわたしの妻にしてやる。子を産ませてやることを光栄に思うがいい。今夜は初夜だ。この娘を磨き上げろ」とか傲慢な国王(顔は美形)に言われたので、城に火を付けて逃亡……したけど捕まった。
なにが不満だと聞かれたので、「まずは……手前ぇよりも上位の存在に犯されて来い。話はそれからだ」と言ってやりました。
誘拐召喚に怒ってないワケねぇだろっ!?
さあ、手前ぇが体験してみろ!
※タイトルがアレでBLタグは一応付けていますが、ギャグみたいなものです。
女だけど生活のために男装して陰陽師してますー続・只今、陰陽師修行中!ー
イトカワジンカイ
ホラー
「妖の調伏には因果と真名が必要」
時は平安。
養父である叔父の家の跡取りとして養子となり男装をして暮らしていた少女―暁。
散財癖のある叔父の代わりに生活を支えるため、女であることを隠したまま陰陽師見習いとして陰陽寮で働くことになる。
働き始めてしばらくたったある日、暁にの元にある事件が舞い込む。
人体自然発火焼死事件―
発見されたのは身元不明の焼死体。不思議なことに体は身元が分からないほど黒く焼けているのに
着衣は全く燃えていないというものだった。
この事件を解決するよう命が下り事件解決のため動き出す暁。
この怪異は妖の仕業か…それとも人為的なものか…
妖が生まれる心の因果を暁の推理と陰陽師の力で紐解いていく。
※「女だけど男装して陰陽師してます!―只今、陰陽師修行中‼―」
(https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/892377141)
の第2弾となります。
※単品でも楽しんでいただけますが、お時間と興味がありましたら第1作も読んでいただけると嬉しいです
※ノベルアップ+でも掲載しています
※表紙イラスト:雨神あきら様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる