3 / 4
彼女は男爵令嬢ではなくなった。
しおりを挟むわたくしは男爵の悪事を暴き、然るべき関係各所へと通報した。無論、証拠も提出致しましたわ。
そうやって男爵が逮捕された今、彼女は男爵令嬢ではなくなった。
年齢詐称がバレ、学費も払えなくなった。
彼女に群がっていた男子生徒達も、彼女から波が引くように一気に去って行った。
ぽつんと、一人で退学の手続きをして、荷物を抱える小さな背中。
彼女が小柄で、庇護欲を誘うのは、今では当然に思える。
だって、十五歳以上の子女ばかりの高等部で、彼女はただ一人の十二歳だったのだから。
年下なのだから、小さくて当然。頼りなくて当然。無邪気で当然。
彼女は、男子生徒達に嘘は吐いてなかった。
母親が病気なのも本当で、お昼にお腹が空いていたのも本当だった。
この学園では、寮に食費を払えば朝食と夕食が出て来る。だけど彼女は既に支払われていた食費を、男爵に内緒で食事は食べないからと払い戻しさせ、そのお金を母親の医療費に充てていた。
朝食と夕食を寮で食べず、昼食を男子生徒達に奢らせ、テイクアウトのメニューを夕食と翌朝の朝食として食べていたという。
男子生徒からの貢ぎ物も、街で換金して医療費に。街で買い食いしたりしたお菓子は、保存の利く焼き菓子が中心。その焼き菓子は、自分で食べたり、母親へお見舞いとして持って行ったり、入院する診療所のスタッフへの賄賂として配っていた。
彼女の、『病気の母がいるんです』という言葉を、本気にしていた人は、一体どれだけいたのでしょうか?
男に金を出させるための嘘。
恋人ごっこ、判り易く可哀想な嘘を吐く彼女へ見せかけの同情をしての恋愛ゲーム。
男子生徒達はそういう風に思っていたからこそ、本当に高価な品物は彼女へ買い与えなかった。多くの現金を直接彼女へ与えなかった。
彼女に侍っていたクセに、彼女のことを、心から信じている男はいなかった。彼女のことを、本気で調べた男は誰もいなかった。
更には、『誰が彼女を落とせるか?』だとか、『誰が彼女を宿に連れ込むことができるか?』と、下世話な賭けをしていた男子生徒が何名かいたそうです。
困窮していると主張していた彼女を対象にした、恋愛ゲームや賭け事。
まぁ、彼女に実年齢と男爵の逮捕とで、そういうクズ野郎共は去って行きましたが・・・
問題は、そんな風にして、これからの生活を不安に思っている彼女を、本気で囲おうとしているロリコン且つ、真性のクソ野郎共、と言ったところでしょうか。
まぁ、彼女は年下ですし。病気の母親を助けるためとは言え、男子生徒達にあれこれ貢がせていたのは事実なのですが・・・
わたくしの婚約者がクズ男だと知ることができたのも、彼女のお陰ですし。
「あなた、わたくしの侍女になりなさい」
18
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
やはり婚約破棄ですか…あら?ヒロインはどこかしら?
桜梅花 空木
ファンタジー
「アリソン嬢、婚約破棄をしていただけませんか?」
やはり避けられなかった。頑張ったのですがね…。
婚姻発表をする予定だった社交会での婚約破棄。所詮私は悪役令嬢。目の前にいるであろう第2王子にせめて笑顔で挨拶しようと顔を上げる。
あら?王子様に騎士様など攻略メンバーは勢揃い…。けどヒロインが見当たらないわ……?
とある婚約破棄に首を突っ込んだ姉弟の顛末
ひづき
ファンタジー
親族枠で卒業パーティに出席していたリアーナの前で、殿下が公爵令嬢に婚約破棄を突きつけた。
え、なにこの茶番…
呆れつつ、最前列に進んだリアーナの前で、公爵令嬢が腕を捻り上げられる。
リアーナはこれ以上黙っていられなかった。
※暴力的な表現を含みますのでご注意願います。
閉じ込められた幼き聖女様《完結》
アーエル
ファンタジー
「ある男爵家の地下に歳をとらない少女が閉じ込められている」
ある若き当主がそう訴えた。
彼は幼き日に彼女に自然災害にあうと予知されて救われたらしい
「今度はあの方が救われる番です」
涙の訴えは聞き入れられた。
全6話
他社でも公開
真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。
反論する婚約者の侯爵令嬢。
そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。
そこへ………
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。
◇なろうにも上げてます。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?
中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。
殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。
入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。
そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが……
※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です
※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる