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しおりを挟む※シリアスなのは最初だけで、すぐにコメディになって行きます。
__________
腹違いの妹とやらが僕に「是非ともお会いしたい」と、面会を求めていると聞いて――――
なんとなく、了承した。
腹違いの妹は側妃の子で、我が国の第一王女。名前は確か・・・ネレイシア。彼女には双子の兄がいるという。第三王子のネロ。
彼ら双子は癇癪持ちと噂される側妃似の容姿で、長い黒髪にアメジストの瞳をしているというが、幸いなことに二人共その性格は母親には似なかったようで、大人しくて聡明な子だと聞いた。
そして、ネレイシアとネロの二人は母である側妃との仲が上手く行っていない、とも。
そして僕は、父の愛妾の子。第二王子シエロ。
本来なら、僕は庶子として王子と名乗ってはいけない筈だった。
けれど、国王である父の横紙破りにより、僕は第二王子として扱われている……らしい。
父とは、一度も顔を合わせたことは無いけど。
愛妾であった母と、異母弟妹の母である側妃との仲は良かった……ということはない。むしろ、僕がいなければネロが第二王子を名乗れた筈……と、疎まれてすらいる。
僕の乳母とその息子の乳兄弟であるグレンには、「呉々もお気を付けください」と散々言われたけど――――
もしかしたら僕は、母親と上手く行っていないという妹と、傷を舐め合いたいのかもしれない。
母の命と引き代えにして生まれた僕は・・・
❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅
それから数日が経ち、とうとうやって来た件の妹との面会の日。
先にテーブルに着いて待っていた、妹だと紹介された幼女が、食い入るように僕を見詰め……
長い黒髪、赤く染まった白い頬に潤む紫の瞳、さくらんぼのような半開きの唇で、
『あぁ・・・生シエロたん、しかも無垢なショタバージョン、マジ尊い♥』
と、鼻息を荒くして聞き慣れない意味不明な言葉を、鈴の鳴るような声で小さく呟いた。
その瞬間――――
『俺』の脳裏に、藍色の星夜から暁へと変わるグラデーションの美しい空を背景に、顔のわからない男に後ろから抱き締められている美少年のスチルのパッケージが浮かんだ。
タイトルは確か、【愛に染まる空~ Il ciero si è tinto di amore ~】だった気がする。読み方は……なんだっけ? 【イル・シエロ・スィ・ティント・ディ・アモーレ】……だったかな? 覚えるまで繰り返させられた、イタリア語だかスペイン語辺りの言葉で、まんま【愛に染まる空】というタイトルと同じサブタイトル。
「っ!?」
なんかこう、嫌な、厭な予感がひしひしとして――――唐突に・・・思い出したっ!?!?
『俺』は確か、十九歳の大学生だった。
あの日。姉貴に頼まれて、限定版のゲームを買いにパシらされたんだった。
タイトルは、そう・・・
【愛に染まる空~ Il ciero si è tinto di amore ~】というゲームだっ!?
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