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第1章
宣託と凶行
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キール様が我が家を訪れた翌日、私は神殿へ赴くことにした。
空は今にも雨が降り出しそうな曇天模様だったけれど、昨晩キール様が生み出してくれた光る蝶が忘れられなくて。
だから自分に天啓があるのか、もしあるのならそれが何なのかを知るため、初めての宣託を受けに行くのだ。
「ちょっと歩くの早すぎやしませんかー?」
「え、そう?」
神殿に行くくらい一人で大丈夫だといったのに、突然「なんだか嫌な予感がする」なんて言い出したメリンダに押し切られるような形で同伴を認めた。
「疲れたのであそこのお店で飲み物でも飲みましょうよー」
ワガママな子供のように私の裾を引っぱるメリンダ。
うーん、連れてきたのは間違いだったかもしれないと今更ながらに後悔していた。
「何言ってるの、あとちょっとでしょ」
実際、神殿までは大した距離ではない。
この街は王城を中心として、周りをぐるりと囲むように貴族街がある。
さらに更にその周りを平民街が囲んでいる円形状で、神殿は貴族街と平民街を跨ぐようにして建っている。
これは信仰に身分の貴賤は関係ないという教えがあるかららしい。
ちなみに私が住んでいる男爵家は貴族街の一番外側にあるので、平民街との境にある壁を沿うように歩いていればいずれ着くわけだ。
「ほら、見えてきたわよ」
さすが王城の次くらいに歴史のある建物だ。
遠くからでも底しれない威容を感じる。
「ほー、神殿なんてものには全く関わることがなかったのではじめて入りますよ」
「そんなの私もだってば」
遠くからその姿を見ることはあっても、用事で訪れることはあまりない場所だ。
入口を目の前にしたらなんだかちょっぴり緊張してきた。
「さ、行きましょう」
わずかな緊張を振り払うように大股で歩き、開け放たれたままの入口をくぐった。
建物の中へ入るとわずかにひんやりとしている。
目の前に現れた神聖な雰囲気の礼拝堂がそう感じさせるのだろうか。
はじめての神殿にしばらく目を奪われていると、修道女が近づいてきて優しく声を掛けてくれる。
宣託の儀を受けに来たというと一瞬意外そうな顔をしたけれど、すぐに人を呼びに走ってくれた。
「やっぱり令嬢が宣託の儀ってやつを受けることって少ないんですかねー? なんかびっくりしてましたしー」
「ええ、戦を前にした騎士様たちがおまじないのように受けることが多いんですって」
「へー、そうなんですね」
メリンダが素直に関心してくれることに私は気を良くした。
「ちなみにほとんどの人はなんの天啓もないといわれて肩を落とすんだって」
「まさに選ばれしものって感じなんですねー。辺境伯様のお話によればお嬢様もその選ばれしものなんでしょう?」
「かもってことだと思うけれどね。っていうかその選ばれしものっていうのやめて。なんかバカにされてる気がする」
「ええっ、そんな意図は全く全然これっぽっちもないんですけどねー」
わざとらしく声まで変えて強調していたくせにとぼけるメイドの頬を引っ張ろうとすると、上手いこと避けられる。
思わずムキになってメリンダと静かな攻防を繰り広げていると、後ろから声が掛かった。
「もし。貴方がたが宣託の儀を受けられるのかな?」
慌てて振り返ると、深い皺を刻んだ威厳のある顔つきの神官様が立っていた。
横には先程人を呼びに行ってくれた修道女が控えている。
「はい、そうです」
「そうか、よろしい。では着いてきなさい」
そういうと神官様はくるり、踵を返した。
その背中を追うように、私とメリンダが続いていく。
どうやら礼拝堂のさらに奥へいくらしい。
長い廊下をしばらく進むと、突き当りにある荘厳な扉が見えてきた。
扉がゆっくり開かれると、神聖な雰囲気のあった礼拝堂とはまた違った神々しさを感じる部屋が現れ、思わず息を呑んだ。
「それではこちらへ立っていてください」
そう促され、私は小さな台座の前に立つ。
神官様は私と台座を挟む対面へ移動すると、よく聞き取れない言葉で祝詞をあげる。
何節かの詞を編むと、やがて台座が薄く発光しはじめ——。
カランという小気味のいい音を響かせて台座の上に小さな石が転がった。
「これは……宝石ですか?」
「いいえ。これは叙賜石といい、女神様から天啓を賜ったものにのみ顕現する証みたいなものです。どうやら貴女は天啓を賜っておるようです」
叙賜石……初めて見たのになんだか最初から自分のものだったように感じる。
もしかしたら石の色が私の銀色の瞳と同じだからだろうか。
「こちらの叙賜石を鑑定することで天啓をより詳しく調べられますが、視ても構いませんかな?」
「は、はい。お願いします!」
自分の秘密を人に覗かれるようで少し恥ずかしい。
けど今日はまさにそれを知りにきているのだから尻込みしているわけにはいかない。
「ほう、これは凄い」
「ど、どうだったのですか?」
「ええ、どうやら貴女の天啓は魔力を象ることができるというものだそうです」
「魔力、を象る……?」
私は教えられた言葉が今ひとつピンとこず、首を傾げた。
「例えば鳥や花、あとは……そうですな多少野蛮な例えになりますが剣や弓などを模して魔力を構築できる、そんな天啓でしょう」
鳥や花といわれて、昨日の蝶を思い出した。
あれはやっぱり私の天啓によるものだったんだ。
でも私はただ蝶の刺繍をしただけで魔力を象るなんて……。
「すみません、実は魔力というものがよくわからないのですが……」
「まあ普通に生活してる人であればそういう人も多いでしょう。ただ魔力というものは量の多寡こそあれど、全ての人に備わっているものです」
そういって神官様は台座に転がる叙賜石を恭しく拾い上げる。
「私の天啓である鑑定眼で視たところ貴女の潜在的な魔力量はかなりのものです。ですので魔力の使い方さえ覚えればその創造の天啓をもって……」
——貴女は神にも悪魔にもなれるかもしれませんね。
神官様は目を光らせながらそういって私の手に叙賜石を握らせる。
「叙賜石は貴女のものです。願わくば女神様から賜った力は正しいことに使ってくださるよう願っております」
「あ、ありがとうございます」
もちろん正しいことにしか使うつもりはない。
けれど何が正しくて何が正しくないことなのかを一体誰が判断するのだろう?
石を握った手がわずかに震えた。
でもこれだけはいえる。
私は私が正しいと思ったことをする、それだけだ。
「さて、次はそちらのお嬢さんの宣託を執り行うとしましょう」
「え、ええっ! 私ですかー? 私はただお嬢様に着いてきただけで……」
突然、自分に話かけられたメリンダは珍しく狼狽えた。
まあ列に並んでもいないのに順番が回ってきたら誰だって驚くだろうけれど。
「視たところ貴女にも素質がありそうですが……宣託の儀を受けにきたのではなかったのですか」
「え、メリンダにも素質があるんですか? ならいいじゃないメリンダ、貴女も受けてみなさいよ」
「で、でも私は平民のメイドですから……」
メリンダが身分を理由に固辞しようとすると、神官様の目が厳しくなった。
「……神殿で身分の話を持ち出しますか」
そうだった、信仰には身分の貴賤がないというのが神殿の教義だった。
メリンダもそれを思い出したようでぺこりと頭を下げる。
「それじゃ……お願いします」
こうして二度目の宣託の儀が執り行われた。
結果として神官様の見立ては正しく、メリンダも天啓を持っていることが分かった。
メリンダのそれは天啓の中ではよく発現するもので、直感が鋭くなるというような天啓だったようだ。
ただこの天啓を極めて預言者や占い師になる人もいるらしいから侮れるものでもない。
「ありがとうございました。こちら喜捨になります」
私は少し悩んでから金貨を二枚取り出すと、修道女の手に載せた。
「御心に感謝いたします」
「はぁ、まったく驚きましたねー」
神殿を出た、メリンダは大きく伸びをしながらそういった。
「ええ、メリンダまで天啓を賜っているなんて……。実は案外多いのかもね」
「そんなー。私も選ばれしものだったんだって少しは喜ばせてくださいよー」
「ふふ。実は神殿に無理矢理ついてきたのもその天啓が導いてくれたとか?」
「いやー違うと思いますよ。アレはなんかもっと嫌な予感だったっていう……かっ!」
強い衝撃を感じた。
メリンダが突然私を突き飛ばしたのだ。
「何を……っ?」
何をしているの、そう聞きかけた。
けれどその理由はすぐにわかることとなる。
なぜならメリンダが糸の切れた人形のように地面へと崩れ落ちたから。
そのお腹を赤く滲ませていたから。
——目の前に震える手でナイフを握ったシェリングフォード伯爵令嬢、ミザリィが立っていたからだ。
空は今にも雨が降り出しそうな曇天模様だったけれど、昨晩キール様が生み出してくれた光る蝶が忘れられなくて。
だから自分に天啓があるのか、もしあるのならそれが何なのかを知るため、初めての宣託を受けに行くのだ。
「ちょっと歩くの早すぎやしませんかー?」
「え、そう?」
神殿に行くくらい一人で大丈夫だといったのに、突然「なんだか嫌な予感がする」なんて言い出したメリンダに押し切られるような形で同伴を認めた。
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さらに更にその周りを平民街が囲んでいる円形状で、神殿は貴族街と平民街を跨ぐようにして建っている。
これは信仰に身分の貴賤は関係ないという教えがあるかららしい。
ちなみに私が住んでいる男爵家は貴族街の一番外側にあるので、平民街との境にある壁を沿うように歩いていればいずれ着くわけだ。
「ほら、見えてきたわよ」
さすが王城の次くらいに歴史のある建物だ。
遠くからでも底しれない威容を感じる。
「ほー、神殿なんてものには全く関わることがなかったのではじめて入りますよ」
「そんなの私もだってば」
遠くからその姿を見ることはあっても、用事で訪れることはあまりない場所だ。
入口を目の前にしたらなんだかちょっぴり緊張してきた。
「さ、行きましょう」
わずかな緊張を振り払うように大股で歩き、開け放たれたままの入口をくぐった。
建物の中へ入るとわずかにひんやりとしている。
目の前に現れた神聖な雰囲気の礼拝堂がそう感じさせるのだろうか。
はじめての神殿にしばらく目を奪われていると、修道女が近づいてきて優しく声を掛けてくれる。
宣託の儀を受けに来たというと一瞬意外そうな顔をしたけれど、すぐに人を呼びに走ってくれた。
「やっぱり令嬢が宣託の儀ってやつを受けることって少ないんですかねー? なんかびっくりしてましたしー」
「ええ、戦を前にした騎士様たちがおまじないのように受けることが多いんですって」
「へー、そうなんですね」
メリンダが素直に関心してくれることに私は気を良くした。
「ちなみにほとんどの人はなんの天啓もないといわれて肩を落とすんだって」
「まさに選ばれしものって感じなんですねー。辺境伯様のお話によればお嬢様もその選ばれしものなんでしょう?」
「かもってことだと思うけれどね。っていうかその選ばれしものっていうのやめて。なんかバカにされてる気がする」
「ええっ、そんな意図は全く全然これっぽっちもないんですけどねー」
わざとらしく声まで変えて強調していたくせにとぼけるメイドの頬を引っ張ろうとすると、上手いこと避けられる。
思わずムキになってメリンダと静かな攻防を繰り広げていると、後ろから声が掛かった。
「もし。貴方がたが宣託の儀を受けられるのかな?」
慌てて振り返ると、深い皺を刻んだ威厳のある顔つきの神官様が立っていた。
横には先程人を呼びに行ってくれた修道女が控えている。
「はい、そうです」
「そうか、よろしい。では着いてきなさい」
そういうと神官様はくるり、踵を返した。
その背中を追うように、私とメリンダが続いていく。
どうやら礼拝堂のさらに奥へいくらしい。
長い廊下をしばらく進むと、突き当りにある荘厳な扉が見えてきた。
扉がゆっくり開かれると、神聖な雰囲気のあった礼拝堂とはまた違った神々しさを感じる部屋が現れ、思わず息を呑んだ。
「それではこちらへ立っていてください」
そう促され、私は小さな台座の前に立つ。
神官様は私と台座を挟む対面へ移動すると、よく聞き取れない言葉で祝詞をあげる。
何節かの詞を編むと、やがて台座が薄く発光しはじめ——。
カランという小気味のいい音を響かせて台座の上に小さな石が転がった。
「これは……宝石ですか?」
「いいえ。これは叙賜石といい、女神様から天啓を賜ったものにのみ顕現する証みたいなものです。どうやら貴女は天啓を賜っておるようです」
叙賜石……初めて見たのになんだか最初から自分のものだったように感じる。
もしかしたら石の色が私の銀色の瞳と同じだからだろうか。
「こちらの叙賜石を鑑定することで天啓をより詳しく調べられますが、視ても構いませんかな?」
「は、はい。お願いします!」
自分の秘密を人に覗かれるようで少し恥ずかしい。
けど今日はまさにそれを知りにきているのだから尻込みしているわけにはいかない。
「ほう、これは凄い」
「ど、どうだったのですか?」
「ええ、どうやら貴女の天啓は魔力を象ることができるというものだそうです」
「魔力、を象る……?」
私は教えられた言葉が今ひとつピンとこず、首を傾げた。
「例えば鳥や花、あとは……そうですな多少野蛮な例えになりますが剣や弓などを模して魔力を構築できる、そんな天啓でしょう」
鳥や花といわれて、昨日の蝶を思い出した。
あれはやっぱり私の天啓によるものだったんだ。
でも私はただ蝶の刺繍をしただけで魔力を象るなんて……。
「すみません、実は魔力というものがよくわからないのですが……」
「まあ普通に生活してる人であればそういう人も多いでしょう。ただ魔力というものは量の多寡こそあれど、全ての人に備わっているものです」
そういって神官様は台座に転がる叙賜石を恭しく拾い上げる。
「私の天啓である鑑定眼で視たところ貴女の潜在的な魔力量はかなりのものです。ですので魔力の使い方さえ覚えればその創造の天啓をもって……」
——貴女は神にも悪魔にもなれるかもしれませんね。
神官様は目を光らせながらそういって私の手に叙賜石を握らせる。
「叙賜石は貴女のものです。願わくば女神様から賜った力は正しいことに使ってくださるよう願っております」
「あ、ありがとうございます」
もちろん正しいことにしか使うつもりはない。
けれど何が正しくて何が正しくないことなのかを一体誰が判断するのだろう?
石を握った手がわずかに震えた。
でもこれだけはいえる。
私は私が正しいと思ったことをする、それだけだ。
「さて、次はそちらのお嬢さんの宣託を執り行うとしましょう」
「え、ええっ! 私ですかー? 私はただお嬢様に着いてきただけで……」
突然、自分に話かけられたメリンダは珍しく狼狽えた。
まあ列に並んでもいないのに順番が回ってきたら誰だって驚くだろうけれど。
「視たところ貴女にも素質がありそうですが……宣託の儀を受けにきたのではなかったのですか」
「え、メリンダにも素質があるんですか? ならいいじゃないメリンダ、貴女も受けてみなさいよ」
「で、でも私は平民のメイドですから……」
メリンダが身分を理由に固辞しようとすると、神官様の目が厳しくなった。
「……神殿で身分の話を持ち出しますか」
そうだった、信仰には身分の貴賤がないというのが神殿の教義だった。
メリンダもそれを思い出したようでぺこりと頭を下げる。
「それじゃ……お願いします」
こうして二度目の宣託の儀が執り行われた。
結果として神官様の見立ては正しく、メリンダも天啓を持っていることが分かった。
メリンダのそれは天啓の中ではよく発現するもので、直感が鋭くなるというような天啓だったようだ。
ただこの天啓を極めて預言者や占い師になる人もいるらしいから侮れるものでもない。
「ありがとうございました。こちら喜捨になります」
私は少し悩んでから金貨を二枚取り出すと、修道女の手に載せた。
「御心に感謝いたします」
「はぁ、まったく驚きましたねー」
神殿を出た、メリンダは大きく伸びをしながらそういった。
「ええ、メリンダまで天啓を賜っているなんて……。実は案外多いのかもね」
「そんなー。私も選ばれしものだったんだって少しは喜ばせてくださいよー」
「ふふ。実は神殿に無理矢理ついてきたのもその天啓が導いてくれたとか?」
「いやー違うと思いますよ。アレはなんかもっと嫌な予感だったっていう……かっ!」
強い衝撃を感じた。
メリンダが突然私を突き飛ばしたのだ。
「何を……っ?」
何をしているの、そう聞きかけた。
けれどその理由はすぐにわかることとなる。
なぜならメリンダが糸の切れた人形のように地面へと崩れ落ちたから。
そのお腹を赤く滲ませていたから。
——目の前に震える手でナイフを握ったシェリングフォード伯爵令嬢、ミザリィが立っていたからだ。
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