愛する

れいか

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彼は寂しがり屋だ。
でもその事に、彼は気がついていない。

私はそんな彼を愛している。
好きとか、そんな言葉ではまとめられない。

あいしてる

この言葉が1番しっくりくる。


少し彼の話をしよう。

彼には、お父さんがいない。
正確に言えば、今この世にいない。

幼い頃に離婚したが、彼は両親どちらとも仲は良かった。父とは、ご飯を食べに行ったりするほどだったようだ。

だが、彼が高校1年の時…うつ病を患い自殺をしてしまった。彼は夏の間ずっと、首に形見
の指輪をネックレスにしてさげていた。その話をしてくれた。

さらに、不幸はそれだけではない。

彼のお母さんは、ガンを3つも患っている。1度完治をして、薬を飲みつつも現在は元気だが、いつ親を失ってもおかしくない状態だと彼は私にそう話した。

兄もいるが、あまり仲が良くないようだ。


彼はとても強い。
彼の家族も。

電話越しに、同じような笑い声が聞こえてくる。彼と、彼のお母さんの笑い方は、そっくりそのままだ。

明るくて、ちょっとした事で笑う性格。


ここからは私の憶測で話していくから、あくまでも私の考えとして受け取って欲しい。


幼少期から彼は、どうやらうちの過保護な親とは違い、自由に育てられたようだ。小さい頃から親の離婚、思春期に父親を亡くし、兄は仲違い…。

彼は、人を信じることが出来ないと言っていた。何か、裏があるのではないか…。疑ってしまう、と。

彼も人間だ、そのような環境を耐え抜いてきたのだから、仕方がないだろう。

その性格も、彼自身なのだ。

そして彼は、自分のことを人にあまり話さない上に、1人で物事を考えて結論づけてしまう。

これもまた、人を心から信用出来なかった為に、自分で解決せざるを得ない状況だったことが多かったからなのではないか…。きっと彼は、頼り方が下手くそなのだ。

私は思った。


守りたい。


私は逆に、物凄く有り余るほどの愛情で育てられた。家族だけでなく、人との出会いのおかげで今の私がある。


彼は平気なフリをしているけれど、実は物凄く苦しい時もあったんじゃないか…。寂しい時も悲しい時もあっただろう…なぜ、私は気付いてあげられなかったのか。


それは、私が愛されることを望んでいたから。


愛されることを望むのは決して悪いことではないし、人間として正解だ。だが、私は愛され無いことを恐れすぎたのだ。

私は、母と兄がかなりサバサバした性格だった。だから、私は面倒くさい女になってはいけないんだと、染付けられた。それが、私を余計面倒くさい女にさせた。

人のせいにする訳では無い。

ただ、育ってきた環境で性格というのは出来てしまうものだから、きっと彼も同じだろうと思う。


ただ、私は愛されてきた自覚はある。
愛し方も分かっている。

自分のことを棚に上げていたあの時の自分を、物凄く殴りたい。自分の幸せを願うのは愛ではなく、執着だ。

私は彼のことが大好きだった。
彼の短所も含めて、全てが愛おしかった。
彼に笑って欲しくて、色んなことを考えた。

でもどこかで見返りを求めていた。

彼<私
だったのかもしれない。


上手くいくわけがない。彼とは3ヶ月あまりで別れてしまった。


だが、このことに気付けたのは
私が彼を本気で好きだったからだ。
彼があの時、別れるという選択を
悩みながらも選んでくれた。

私は教えられたのだ。


数日間、眠ることも出来ない。
ご飯も食べたいのに、喉を通らなくて食べられない。ふとした時に、彼が目の前にいるような錯覚になって、涙が止まらない。

彼が口癖のように言っていた、
「水分ちゃんと取りなよ」
って言葉通り、食べられなくても水分だけは取っていた。そんな自分にまた泣くのだ。


だが、冷静になれると
自分を見つめ直すことができる。
そして、見つけた答え。


ー私は彼を愛している。


別れた今でも、私の気持ちは変わらない。
心から彼の全てを愛している。
彼の育ってきたその環境も、彼のその性格も、彼が仲良くしている友達も…
全てを受け入れて愛することが出来る覚悟が私にはある。


こんなこと初めてだ。


今は彼が心を開いてくれるのを
私は待つしかない。

自分を磨いて。

彼が帰ってきてくれることを毎日祈って。


私は彼が幸せに笑って過ごしてくれるのであれば、私もそれが1番の幸せ。だけど、ワガママをひとつだけ言うとしたら…


もう一度私と付き合ってくれないでしょうか?

きっと今の私なら、あの時とは全く違う付き合いが出来ると思います。

なぜなら、あなたに教えてもらったから。



私は待っています。
あなたの心を開くのは、とても難しいでしょう。それでも、私はあなたという人に出会えて、幸せものだと思っています。

いつかこのことを
あなたに伝えたいと思う。

愛してます。


出会ってくれて、ありがとう。
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