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3 一人ぼっちになった少女「かのん」
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1
警戒警報が鳴るたび、かのんは防空壕に駆けこんだ。
昼はかのんのお母さんがいれば一緒だったが、用事でお母さんがでかけているときは一人だった。
お母さんは町会の役員の仕事を手伝っていたので、昼の外出が多かった。
となりの松井家は、奥さんも銀座の医院で仕事をしていた。
銀座も空襲でやられていたが、松屋百貨店の裏にある松井歯科医院は、百貨店とともにまだ残っていた。
かのんは気になった。
警戒警報が鳴ったとき、防空壕からでてはいけないと両親にいわれていた。
だがちょっとだけ隠れ、すぐに顔をだした。
壕のなかに用意されていたぶかぶかの大人の鉄兜をかぶっていた。
鉄兜の縁を指先でもちあげて空をあおいだ。
低い民家の屋根のつづくずっとむこうの高い空に、一機のB-29の影が見えた。
かのんは首をふり、空を見わたした。
日本の戦闘機の姿はなかった。
高射砲が白い煙の煙幕を張っていた。
B-29は悠然とその上空を通過しようとしていた。
ごーん、とかすかな爆音がきこえているような気がした。
次の日の昼も、一機のB-29が東京の空を飛んだ。
どんぐりさんがいったように、爆弾を気まぐれに落とす偵察機のような気がした。
そしてその次の日、かのんは、ばんざーい、の声をきいた。
あわてて防空壕の外にとびだした。
今度は、真鍮の小鉢を金棒で叩いたような金属音が聞こえた。
金属音は、まっすぐ深川上空までやってくると空気を引き裂くプロペラ音に変った。
日本の戦闘機、飛燕だった。
深川の街の上空一帯が振動でふるえた。
戦闘機は翼を振り、家々の屋根をかすめて飛んだ。
闘志いっぱいに、プロペラがばりばりと空気を噛んだ。
戦闘機は隅田川の川面をざわめかせるや、ふいに機首をあげ、一気に宙に跳ね上がった。
あわてているようにも見えたし、かねてから用意された行為のようにも見えた。
はるか上空には、いつもの一機のB-29の影があった。
がんばれー、ばんざーい、の声援があちこちから湧きあがった。
かのんは目を瞠った。胸に手を合わせ、息を止めた。
戦闘機がなにをしようとしているのかは、だれにでもよくわかった。
真っ直ぐに、一直線に、戦闘機は空を駆けのぼった。
青空がまぶしかった。
銀色の翼の日の丸がまぶしかった。
まさか──。
がんばれー、がんばれー、やっつけろー、と声援がさらにあがった。
「どんぐりさん、あなたなの──。見ていてくれって、このことなの」
かのんはしっかり力をこめ、両手を胸におし当てた。まばたきをしなかった。
戦闘機は矢のように、B-29の横腹に突き刺さろうとしていた。
ためらいは微塵もなかった。
一直線に──。
青空にかすかな気焔を残し、ぐんぐん迫った。
そして──。
巨大なB-29の影と重なった。
ひとつの固まりになった。
青空のなかで、銀色の光りがぱっと砕けた。
翼を左右にひろげ、悠然と飛んでいたB-29だった。
不意を衝かれ、おどろいたように、ぐらっと揺れた。
そしてなおも二度、三度、大きなからだをふるわせた。
B-29の機首がふっと横をむいた。
「やったあー、やったあー」
「ばんざーい、ばんざーい」
街のあちこちから歓声があがった。
かのんは両足をそろえ、からだを硬直させ、頭上を見あげていた。
胸に当てた手が汗ばんだ。
もし、どんぐりさんなら……。
唇から、ことばがもれた。
もし、どんぐりさんなら……。
たしかに一機の戦闘機が、B-29に体当たりした。
みんながそれを目撃していた。
地上すれすれを通過したとき、操縦席の窓に少年の横顔が見えたような気がした。
が、その少年は、瞬時に砕け散った。
B-29が速度を落とした。
B-29は、煙を吐きながら進路からはずれた。
いつもの悠然とした直進ではなく、斜めむこうに首をふった。
さらになにかにつまずいたかのごとく、がくんと速度を落とした。
しかし、戦闘機の影はどこにもなかった。
神経を集中させ、てんてんは機影をさがした。
「やったあー、やったあー」
「ばんざーい、ばんざーい」
さっきから歓声があがっていた。
B-29は速度を落としながら、千葉のほうに遠ざかった。
小さな点になった。
吐きだした一筋の煙は、たちまちのうちに青空に拡散した。
もしどんぐりさん、もしあなたなら……。
あなただったら……。
手紙ください……。
手紙をくれるといったではないですか……。
でも、いくら上空に目を凝らしても、手紙らしきものは見あたらなかった。
一瞬のうちに戦いを終え、永劫の空間がひろがっているだけだった。
2
翌日の新聞に記事がでていた。
都民が見守っていた真昼の突撃は、やはり244戦隊の帝都防衛隊だった。
しかし、勇敢な兵隊の名前は書かれていなかった。
公式に名前が発表されていなかったのだ。
かのんは弁当持参で、調布の244戦隊まで面会にいった。ほんとうに、どんぐりさんかどうかをたしかめたかった。
とちゅうで、何度も空襲警報が鳴った。
そのたびに電車をおり、バスをおり、沿道の塹壕に避難した。
調布に着いたときは夕方になっていた。
かのんは、駅前の旅館に泊まった。
その日は三月の九日だった。
自分のそんな行為が自分の命を救うなどと、夢にも思っていなかった。
その夜の深夜、かのんは調布の旅館の二階で、東京上空を低空飛行で襲う四百機からのB-29の大編隊をはるかに目撃した。
轟音がこだまし、空が赤くなり、無数の松葉牡丹の花火のような火柱が、遠く都心の夜空を染めた。
ラジオも、警戒警報をだしていなかった。
大編隊は海面すれすれを忍者のような低空飛行で東京湾岸をこえ、焼夷弾の集中攻撃をおこなったのだ。
初めのB-29の一隊が、街を四角く炎で囲うように焼夷弾を落としていく。
あとからきたB-29が、その四角のなかに、ありったけの焼夷弾をおとしていく。
かのんは、旅館の二階から遠くの地獄を眺めていた。
都内からきていたほかの客たちが悲鳴をあげ、卒倒した。
いままでも数限りなく、爆撃があった。だが、あきらかに様相がちがっていた。
東京の方向の空は赤く染まり、広大なひろがりをみせていた。
炎の下で何百、何千もの人間が、一気に焼かれていこうとしていたのだ。
一仕事を終えたB-29の大編隊が、次から次へ帝都を横切っていく。
大地震のごとき地獄の死者の轟が、東京郊外の町々をゆさぶった。
いくら戦争とはいえ、降参しない日本をやっつけるためとはいえ、アメリカはよくもこんな人殺しの方法を思いつくものだと、てんてんは総毛だった。
「ああ……」
「おお……」
遠くの赤い空をながめ、ほかの客たちが悲鳴をもらした。
アメリカは、正真正銘、悪魔の国だった。
撃墜され、落下傘で脱出したB-29の乗り組員が、地上でまちかまえていた日本人に石や棒で叩き殺される話をかのんは思いだした。
それをきいたときは、なんとひどいことをと顔をしかめた。
だが、いまはちがっていた。
「あれでは、隅田川のむこうもこっちもやられてしまうだろう」
旅館の二階の廊下で、客が話しをしていた。
お父さんやお母さんは、どうしているだろう……かのんの頭がぼっとなった。
眠れなかった。翌朝てんてんは、ラジオのニュースを聞いた。
深川一帯が焼け、明け方になってようやく鎮火したと。
かのんはふらつく足で、224戦隊の戦隊本部におもむいた。
「松井一郎伍長殿は作戦履行中であり、面会はできません」
受付の上等兵が告げた。
何度も面会にいっているので、受付の上等兵とは顔見知りだった。
「もしきたらわたしてくれと、これを預かっております」
かのんは、茶封筒に入った手紙を上等兵からもらった。
「松井伍長殿については、なにも申し上げられません。お引き取りください。深川のほうが、昨夜の爆撃でかなりの被害だそうです」
上等兵は、二人が深川の住民であることを知っていた。
かのんは茶封筒を開けてみた。
一枚の手紙と婚姻届の用紙だった。
『かのんさん、わたしたちは結婚します。これでわたしたちは夫婦になりました。ちゃんと役所に届け出てください。取り急ぎ、乱筆にて、失礼いたします。どんぐりより』
かのんの名前を書き、印を押せばいいようになっていた。
おどろかそうというのか、悪戯心のあるあたたかい手紙だった。
これで二人は晴れて夫婦になったのである。嬉しかった。でも悲しかった。
3
かのんは電車やバスや市電を乗り継いだ。
都心は一変していた。
八重洲の京橋寄りに、建物はなかった。父の会社も消えていた。
足がふるえた。頭のなかが、からからに乾き、白くなった。
瓦礫の陰に死体らしきものが見えると、あわてて目をそらした。
両脚をひきづり、必死にまえに進んだ。
京橋から銀座にむかった。
火であぶられ、建物の背後にくすぶった跡を残していた。
松屋の裏の松井歯科医院の建物は無事だった。
どんぐりさんや自分の両親や知っている人がいるかもしれないと思った。
でも、医院の前にはだれもいなかった。なかに人の気配もなかった。
かのんは、日本橋から水天宮のほうにむかった。
永代橋をわたったときは昼をすぎていた。
焼けて真っ平らになった地面に、炭状の人間が無数に横たわっていた。
もう目をそらすわけにはいかなかった。
無数の人間の死を受けとめるのは──感情の放棄だった。
あちこちから煙が立ち昇り、異臭が漂っていた。
川にも死体がかたまって浮いていた。
とおってきた道、すべてが地獄だった。
どこから狩りだされてきたのか、男たちが死体を一ヶ所に集めていた。
公園や空き地が死体の山になっていた。
かのんは夢遊状態のまま歩きつづけた。
どこまでいっても平らで、焼け焦げた人間が横たわっていた。
からだから力がぬけ、膝が崩れそうになった。でも、けんめいにこらえた。
公園を目印に、路地に入った。
自宅とおぼしき場所に立っていた。
なにもなかった。松井家と進藤家共用の防空壕をのぞいてみた。
誰もいなかった。なかは黒く焼け焦げていた。
木造二階建ての松井家も進藤家も、ただの平らな黒い地面と化していた。
引き出しの奥にしまってあったどんぐりさん愛用の懐中時計もふくめ、遺品は一つとして残っていなかった。
水道管が一本、にょろりと突きでて、透明な水をこぼしていた。
かのんは、川岸の空き地や公園などにできていた臨時の救護施設を訪ねた。
だが、両親どころか、近所の顔見知りにさえ出会わなかった。
午後遅くなると、焼け跡にすこしずつ人が姿を見せるようになった。
その人たちは、深川に住んでいた住民の親類か知人たちだった。
ようすを見にきたのである。
日が暮れてきた。
かのんは銀座の松井歯科医院のほうにもどった。
なんども遊びにいっていたので、玄関の鍵のある場所はわかっていた。
医院の建物の内部は無事だった。
もしかしたら、両親や親類がきているかもしれないと期待をした。やはり人影はなかった。
お腹が空いていたので、台所にいってお釜の蓋をとってみた。
中に白いご飯が残っていたので、手づかみで頬ばった。
食事を終え、待合の長椅子で眠った。
朝になっても、訪ねてくる者はいなかった。
かのんは、また自分の家の焼け跡にでかけていった。
あちこちに、よろよろ歩く人影が見えた。
かのんとおなじように、肉親や知人を捜し歩く人たちだった。
やはり顔見知りはいなかった。
かのんは深川にたどり着くまでの焼け跡で、いくつかの伝言板を見た。
地面に差した棒に取りつけられていた。そこには生き残った者の連絡先が書かれていた。
かのんは医院にもどり、拾った板切れに自分の名前を書いた。
その看板を自分の家の焼け跡に立てた。
その夜も医院に泊り、釜の中のご飯を食べた。
翌日も、焼け跡を探しまわった。
やはり、両親とも知人とも巡り会えなかった。
とにかくわかったことは、そこの区域の住民は全滅した、という事実だった。
人の話によれば、火に囲まれ、逃げ場を失ったとき、焼夷弾を豪雨のように落とされとのだ。そして人々は、一瞬のうちに蒸発した、というのである。
『一瞬のうちに蒸発した……』
かのんは、その言葉を頭のなかでくりかえし、からだがふるわせた。
泪はでなかった。悲しみの感情は、どこか遠くに消えていた。
焼夷弾で焼かれたように、頭のなかが乾ききっていた。
かのんの家系は代々が東京生まれ、東京育ちだった。
一族縁者は深川近辺、あるいは下町に固まっていた。
探せばいるのだろうが、思いつく地方や田舎の親類や知人は皆無だった。
歯科医院の看護婦さんも、下働きの女中さんも、みんな深川からの通いの人たちだった。
十六歳のてんてんは、着の身着のまま、たった一人ぼっちになってしまった。
4
かのんは、医院の台所の床下で、食料貯蔵庫を発見した。
歯の治療費の代わりに、米や芋などを置いていった患者がいたのだろう。
それを昼間、医院の人たちが昼食として料理していたのだ。
しかしいまや、医院の先生夫婦も看護婦さんもい行方不明だった。
とにかく、当分の食べ物には困らなかった。
かのんはお握りを作り、あちこちの臨時の病院や看護所を、自分の両親やどんぐりさんの両親を探して歩いた。
五日後だった。一人の若い男が、松井歯科医院を訪ねてきた。
「たった一人なのか?」
男は、か弱い娘のかのんに、おどろいたようにきいた。
男は、かのんの父親の従兄弟だった。
服部武志といった。
かのんの父親とはちがい、体格がよかった。
顎の形や眉毛の濃いところに、どこか父親の面影があった。
学生帽をかぶり、脚にはゲートルを巻いていた。
学徒勤労動員で横浜の工場に徴用されていたのだ。二十二歳の大学生だった。
技術者として徴用されていたので、兵隊にはいかなかったのだ。
服部は、深川がやられたと聞き、ようすを見にきたのだった。
だが、かのんと同じように、両親も家も跡形もなく消滅し、親類知人をだれ一人として発見できなかったのだ。
かのんが立てた看板を見、訪ねてきたのである。
服部は呆然となりながら身内で一人だけ残ったかのんから、いままでのいきさつをきいた。
服部は、もうだれも生き残っていないだろうな、といった。
もうすこしまってから、もてるだけの食料をもって、横浜の自分の下宿にこいともいった。
かのんは、そこを動きたくなかった。もしかしたら、ほんとうはまだ出撃していないか、あるいはなんらかの理由でもどってきているかもしれないどんぐりさんが、帰ってくるかもしれない、と期待していたのだ。
いまは、あたふたとしているが、時期がきたら結婚届けも役所にだしにいきたかった。
「十六の娘を一人で放っておけるかよ」
服部はいった。だが、かのんはこの医院にいる、と言い張った。
「心配だったらときどき、見にきてちょうだい」
わざと無理な注文をした。かすかに父親の面影のある従兄弟に、いくら探しても姿を見せようとしない父親に対するいらだちの気持ちをぶつけていた。
服部は、仕事が休みになると、だいじょうぶか、元気か、と本当にのぞきにきた。
ときには野菜類を背負ってきた。
「おまえはだれに似たんだ。観音様みたいな頬してさ」
てんてんは痩せていたが、頬はすべすべで白かった。
「このままここにいてどうする」
銀座にくるたびにかのんにいった。
「わたしはどんぐりさんと結婚しました。あの人はまっていれば、きっとここに帰ってきます。ここには食べ物がまだあるので、なくなるまでいます」
一人で食うぶんには、米は半年分くらいが台所にあった。
服部は、深川の街では名の知れた少年飛行兵の松井伍長と、かのんの仲についてはよく知っていた。
しかし、食料の問題だけではなかった。相変わらず空襲警報が続いていたのだ。
やっと生き残った人々をも、B-29は容赦していなかった。
毎日、毎晩やってきては爆弾を落とし、無垢な市民にハイエナのように襲いかかった。
そしてとうとう、松井歯科医院が直撃弾をうけ、破壊されてしまった
警報をきいたかのんが、近くの塹壕に避難したときだった。
皮肉にも、それが銀座を襲った最後の空襲となった。
でもかのんは、塹壕から見あげる空に、撃墜されていくB-29をときどき目撃した。
日本はまだ負けていないんだ、どんぐりさんが活躍しているんだと、かのんはそのたびに思った。
そのころ同時に、横浜も空襲され、工場地帯が爆破された。
自動車の工場も焼けてなくなり、服部はようやく学徒勤労から解放された。
横浜からやってきた服部は、破壊された松井歯科医院を発見した。
が、近くの瓦礫のなかにいたかのんにめぐり会うと、医院の跡地に、あちこちから集めてきた材料でバラックの家を建てた。
家には台所と、てんてんの部屋と服部の部屋があった。
三畳のそれぞれの部屋には、どこかで拾ってきた畳もちゃんと敷かれていた。
服部は、男手のないほかの被災者の家族のためにも、いくつかのバラックを建て、衣類やら火鉢などでお礼をもらった。
それをどこで手に入れたのか、リヤカーに積んで郊外にでかけ、食料品と交換してきた。もってきた食料品は、かのんといっしょに家の前の露店で売った。
どんぐりさんからは、葉書も手紙もこなかった。
かのんは何回か調布に面会にいったが、どんぐりさんには会えなかった。
連絡をまてといわれただけだった。
あのときの飛燕が、やっぱりどんぐりさんだったのか──。
かのんは空気を引き裂いて、まっすぐに飛んでいった戦闘機の軌跡を、頭のなかに思いうかべた。
八月十五日の終戦は、二人がそこに住んで三ヶ月後にやってきた。
●3章終
7518
警戒警報が鳴るたび、かのんは防空壕に駆けこんだ。
昼はかのんのお母さんがいれば一緒だったが、用事でお母さんがでかけているときは一人だった。
お母さんは町会の役員の仕事を手伝っていたので、昼の外出が多かった。
となりの松井家は、奥さんも銀座の医院で仕事をしていた。
銀座も空襲でやられていたが、松屋百貨店の裏にある松井歯科医院は、百貨店とともにまだ残っていた。
かのんは気になった。
警戒警報が鳴ったとき、防空壕からでてはいけないと両親にいわれていた。
だがちょっとだけ隠れ、すぐに顔をだした。
壕のなかに用意されていたぶかぶかの大人の鉄兜をかぶっていた。
鉄兜の縁を指先でもちあげて空をあおいだ。
低い民家の屋根のつづくずっとむこうの高い空に、一機のB-29の影が見えた。
かのんは首をふり、空を見わたした。
日本の戦闘機の姿はなかった。
高射砲が白い煙の煙幕を張っていた。
B-29は悠然とその上空を通過しようとしていた。
ごーん、とかすかな爆音がきこえているような気がした。
次の日の昼も、一機のB-29が東京の空を飛んだ。
どんぐりさんがいったように、爆弾を気まぐれに落とす偵察機のような気がした。
そしてその次の日、かのんは、ばんざーい、の声をきいた。
あわてて防空壕の外にとびだした。
今度は、真鍮の小鉢を金棒で叩いたような金属音が聞こえた。
金属音は、まっすぐ深川上空までやってくると空気を引き裂くプロペラ音に変った。
日本の戦闘機、飛燕だった。
深川の街の上空一帯が振動でふるえた。
戦闘機は翼を振り、家々の屋根をかすめて飛んだ。
闘志いっぱいに、プロペラがばりばりと空気を噛んだ。
戦闘機は隅田川の川面をざわめかせるや、ふいに機首をあげ、一気に宙に跳ね上がった。
あわてているようにも見えたし、かねてから用意された行為のようにも見えた。
はるか上空には、いつもの一機のB-29の影があった。
がんばれー、ばんざーい、の声援があちこちから湧きあがった。
かのんは目を瞠った。胸に手を合わせ、息を止めた。
戦闘機がなにをしようとしているのかは、だれにでもよくわかった。
真っ直ぐに、一直線に、戦闘機は空を駆けのぼった。
青空がまぶしかった。
銀色の翼の日の丸がまぶしかった。
まさか──。
がんばれー、がんばれー、やっつけろー、と声援がさらにあがった。
「どんぐりさん、あなたなの──。見ていてくれって、このことなの」
かのんはしっかり力をこめ、両手を胸におし当てた。まばたきをしなかった。
戦闘機は矢のように、B-29の横腹に突き刺さろうとしていた。
ためらいは微塵もなかった。
一直線に──。
青空にかすかな気焔を残し、ぐんぐん迫った。
そして──。
巨大なB-29の影と重なった。
ひとつの固まりになった。
青空のなかで、銀色の光りがぱっと砕けた。
翼を左右にひろげ、悠然と飛んでいたB-29だった。
不意を衝かれ、おどろいたように、ぐらっと揺れた。
そしてなおも二度、三度、大きなからだをふるわせた。
B-29の機首がふっと横をむいた。
「やったあー、やったあー」
「ばんざーい、ばんざーい」
街のあちこちから歓声があがった。
かのんは両足をそろえ、からだを硬直させ、頭上を見あげていた。
胸に当てた手が汗ばんだ。
もし、どんぐりさんなら……。
唇から、ことばがもれた。
もし、どんぐりさんなら……。
たしかに一機の戦闘機が、B-29に体当たりした。
みんながそれを目撃していた。
地上すれすれを通過したとき、操縦席の窓に少年の横顔が見えたような気がした。
が、その少年は、瞬時に砕け散った。
B-29が速度を落とした。
B-29は、煙を吐きながら進路からはずれた。
いつもの悠然とした直進ではなく、斜めむこうに首をふった。
さらになにかにつまずいたかのごとく、がくんと速度を落とした。
しかし、戦闘機の影はどこにもなかった。
神経を集中させ、てんてんは機影をさがした。
「やったあー、やったあー」
「ばんざーい、ばんざーい」
さっきから歓声があがっていた。
B-29は速度を落としながら、千葉のほうに遠ざかった。
小さな点になった。
吐きだした一筋の煙は、たちまちのうちに青空に拡散した。
もしどんぐりさん、もしあなたなら……。
あなただったら……。
手紙ください……。
手紙をくれるといったではないですか……。
でも、いくら上空に目を凝らしても、手紙らしきものは見あたらなかった。
一瞬のうちに戦いを終え、永劫の空間がひろがっているだけだった。
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翌日の新聞に記事がでていた。
都民が見守っていた真昼の突撃は、やはり244戦隊の帝都防衛隊だった。
しかし、勇敢な兵隊の名前は書かれていなかった。
公式に名前が発表されていなかったのだ。
かのんは弁当持参で、調布の244戦隊まで面会にいった。ほんとうに、どんぐりさんかどうかをたしかめたかった。
とちゅうで、何度も空襲警報が鳴った。
そのたびに電車をおり、バスをおり、沿道の塹壕に避難した。
調布に着いたときは夕方になっていた。
かのんは、駅前の旅館に泊まった。
その日は三月の九日だった。
自分のそんな行為が自分の命を救うなどと、夢にも思っていなかった。
その夜の深夜、かのんは調布の旅館の二階で、東京上空を低空飛行で襲う四百機からのB-29の大編隊をはるかに目撃した。
轟音がこだまし、空が赤くなり、無数の松葉牡丹の花火のような火柱が、遠く都心の夜空を染めた。
ラジオも、警戒警報をだしていなかった。
大編隊は海面すれすれを忍者のような低空飛行で東京湾岸をこえ、焼夷弾の集中攻撃をおこなったのだ。
初めのB-29の一隊が、街を四角く炎で囲うように焼夷弾を落としていく。
あとからきたB-29が、その四角のなかに、ありったけの焼夷弾をおとしていく。
かのんは、旅館の二階から遠くの地獄を眺めていた。
都内からきていたほかの客たちが悲鳴をあげ、卒倒した。
いままでも数限りなく、爆撃があった。だが、あきらかに様相がちがっていた。
東京の方向の空は赤く染まり、広大なひろがりをみせていた。
炎の下で何百、何千もの人間が、一気に焼かれていこうとしていたのだ。
一仕事を終えたB-29の大編隊が、次から次へ帝都を横切っていく。
大地震のごとき地獄の死者の轟が、東京郊外の町々をゆさぶった。
いくら戦争とはいえ、降参しない日本をやっつけるためとはいえ、アメリカはよくもこんな人殺しの方法を思いつくものだと、てんてんは総毛だった。
「ああ……」
「おお……」
遠くの赤い空をながめ、ほかの客たちが悲鳴をもらした。
アメリカは、正真正銘、悪魔の国だった。
撃墜され、落下傘で脱出したB-29の乗り組員が、地上でまちかまえていた日本人に石や棒で叩き殺される話をかのんは思いだした。
それをきいたときは、なんとひどいことをと顔をしかめた。
だが、いまはちがっていた。
「あれでは、隅田川のむこうもこっちもやられてしまうだろう」
旅館の二階の廊下で、客が話しをしていた。
お父さんやお母さんは、どうしているだろう……かのんの頭がぼっとなった。
眠れなかった。翌朝てんてんは、ラジオのニュースを聞いた。
深川一帯が焼け、明け方になってようやく鎮火したと。
かのんはふらつく足で、224戦隊の戦隊本部におもむいた。
「松井一郎伍長殿は作戦履行中であり、面会はできません」
受付の上等兵が告げた。
何度も面会にいっているので、受付の上等兵とは顔見知りだった。
「もしきたらわたしてくれと、これを預かっております」
かのんは、茶封筒に入った手紙を上等兵からもらった。
「松井伍長殿については、なにも申し上げられません。お引き取りください。深川のほうが、昨夜の爆撃でかなりの被害だそうです」
上等兵は、二人が深川の住民であることを知っていた。
かのんは茶封筒を開けてみた。
一枚の手紙と婚姻届の用紙だった。
『かのんさん、わたしたちは結婚します。これでわたしたちは夫婦になりました。ちゃんと役所に届け出てください。取り急ぎ、乱筆にて、失礼いたします。どんぐりより』
かのんの名前を書き、印を押せばいいようになっていた。
おどろかそうというのか、悪戯心のあるあたたかい手紙だった。
これで二人は晴れて夫婦になったのである。嬉しかった。でも悲しかった。
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かのんは電車やバスや市電を乗り継いだ。
都心は一変していた。
八重洲の京橋寄りに、建物はなかった。父の会社も消えていた。
足がふるえた。頭のなかが、からからに乾き、白くなった。
瓦礫の陰に死体らしきものが見えると、あわてて目をそらした。
両脚をひきづり、必死にまえに進んだ。
京橋から銀座にむかった。
火であぶられ、建物の背後にくすぶった跡を残していた。
松屋の裏の松井歯科医院の建物は無事だった。
どんぐりさんや自分の両親や知っている人がいるかもしれないと思った。
でも、医院の前にはだれもいなかった。なかに人の気配もなかった。
かのんは、日本橋から水天宮のほうにむかった。
永代橋をわたったときは昼をすぎていた。
焼けて真っ平らになった地面に、炭状の人間が無数に横たわっていた。
もう目をそらすわけにはいかなかった。
無数の人間の死を受けとめるのは──感情の放棄だった。
あちこちから煙が立ち昇り、異臭が漂っていた。
川にも死体がかたまって浮いていた。
とおってきた道、すべてが地獄だった。
どこから狩りだされてきたのか、男たちが死体を一ヶ所に集めていた。
公園や空き地が死体の山になっていた。
かのんは夢遊状態のまま歩きつづけた。
どこまでいっても平らで、焼け焦げた人間が横たわっていた。
からだから力がぬけ、膝が崩れそうになった。でも、けんめいにこらえた。
公園を目印に、路地に入った。
自宅とおぼしき場所に立っていた。
なにもなかった。松井家と進藤家共用の防空壕をのぞいてみた。
誰もいなかった。なかは黒く焼け焦げていた。
木造二階建ての松井家も進藤家も、ただの平らな黒い地面と化していた。
引き出しの奥にしまってあったどんぐりさん愛用の懐中時計もふくめ、遺品は一つとして残っていなかった。
水道管が一本、にょろりと突きでて、透明な水をこぼしていた。
かのんは、川岸の空き地や公園などにできていた臨時の救護施設を訪ねた。
だが、両親どころか、近所の顔見知りにさえ出会わなかった。
午後遅くなると、焼け跡にすこしずつ人が姿を見せるようになった。
その人たちは、深川に住んでいた住民の親類か知人たちだった。
ようすを見にきたのである。
日が暮れてきた。
かのんは銀座の松井歯科医院のほうにもどった。
なんども遊びにいっていたので、玄関の鍵のある場所はわかっていた。
医院の建物の内部は無事だった。
もしかしたら、両親や親類がきているかもしれないと期待をした。やはり人影はなかった。
お腹が空いていたので、台所にいってお釜の蓋をとってみた。
中に白いご飯が残っていたので、手づかみで頬ばった。
食事を終え、待合の長椅子で眠った。
朝になっても、訪ねてくる者はいなかった。
かのんは、また自分の家の焼け跡にでかけていった。
あちこちに、よろよろ歩く人影が見えた。
かのんとおなじように、肉親や知人を捜し歩く人たちだった。
やはり顔見知りはいなかった。
かのんは深川にたどり着くまでの焼け跡で、いくつかの伝言板を見た。
地面に差した棒に取りつけられていた。そこには生き残った者の連絡先が書かれていた。
かのんは医院にもどり、拾った板切れに自分の名前を書いた。
その看板を自分の家の焼け跡に立てた。
その夜も医院に泊り、釜の中のご飯を食べた。
翌日も、焼け跡を探しまわった。
やはり、両親とも知人とも巡り会えなかった。
とにかくわかったことは、そこの区域の住民は全滅した、という事実だった。
人の話によれば、火に囲まれ、逃げ場を失ったとき、焼夷弾を豪雨のように落とされとのだ。そして人々は、一瞬のうちに蒸発した、というのである。
『一瞬のうちに蒸発した……』
かのんは、その言葉を頭のなかでくりかえし、からだがふるわせた。
泪はでなかった。悲しみの感情は、どこか遠くに消えていた。
焼夷弾で焼かれたように、頭のなかが乾ききっていた。
かのんの家系は代々が東京生まれ、東京育ちだった。
一族縁者は深川近辺、あるいは下町に固まっていた。
探せばいるのだろうが、思いつく地方や田舎の親類や知人は皆無だった。
歯科医院の看護婦さんも、下働きの女中さんも、みんな深川からの通いの人たちだった。
十六歳のてんてんは、着の身着のまま、たった一人ぼっちになってしまった。
4
かのんは、医院の台所の床下で、食料貯蔵庫を発見した。
歯の治療費の代わりに、米や芋などを置いていった患者がいたのだろう。
それを昼間、医院の人たちが昼食として料理していたのだ。
しかしいまや、医院の先生夫婦も看護婦さんもい行方不明だった。
とにかく、当分の食べ物には困らなかった。
かのんはお握りを作り、あちこちの臨時の病院や看護所を、自分の両親やどんぐりさんの両親を探して歩いた。
五日後だった。一人の若い男が、松井歯科医院を訪ねてきた。
「たった一人なのか?」
男は、か弱い娘のかのんに、おどろいたようにきいた。
男は、かのんの父親の従兄弟だった。
服部武志といった。
かのんの父親とはちがい、体格がよかった。
顎の形や眉毛の濃いところに、どこか父親の面影があった。
学生帽をかぶり、脚にはゲートルを巻いていた。
学徒勤労動員で横浜の工場に徴用されていたのだ。二十二歳の大学生だった。
技術者として徴用されていたので、兵隊にはいかなかったのだ。
服部は、深川がやられたと聞き、ようすを見にきたのだった。
だが、かのんと同じように、両親も家も跡形もなく消滅し、親類知人をだれ一人として発見できなかったのだ。
かのんが立てた看板を見、訪ねてきたのである。
服部は呆然となりながら身内で一人だけ残ったかのんから、いままでのいきさつをきいた。
服部は、もうだれも生き残っていないだろうな、といった。
もうすこしまってから、もてるだけの食料をもって、横浜の自分の下宿にこいともいった。
かのんは、そこを動きたくなかった。もしかしたら、ほんとうはまだ出撃していないか、あるいはなんらかの理由でもどってきているかもしれないどんぐりさんが、帰ってくるかもしれない、と期待していたのだ。
いまは、あたふたとしているが、時期がきたら結婚届けも役所にだしにいきたかった。
「十六の娘を一人で放っておけるかよ」
服部はいった。だが、かのんはこの医院にいる、と言い張った。
「心配だったらときどき、見にきてちょうだい」
わざと無理な注文をした。かすかに父親の面影のある従兄弟に、いくら探しても姿を見せようとしない父親に対するいらだちの気持ちをぶつけていた。
服部は、仕事が休みになると、だいじょうぶか、元気か、と本当にのぞきにきた。
ときには野菜類を背負ってきた。
「おまえはだれに似たんだ。観音様みたいな頬してさ」
てんてんは痩せていたが、頬はすべすべで白かった。
「このままここにいてどうする」
銀座にくるたびにかのんにいった。
「わたしはどんぐりさんと結婚しました。あの人はまっていれば、きっとここに帰ってきます。ここには食べ物がまだあるので、なくなるまでいます」
一人で食うぶんには、米は半年分くらいが台所にあった。
服部は、深川の街では名の知れた少年飛行兵の松井伍長と、かのんの仲についてはよく知っていた。
しかし、食料の問題だけではなかった。相変わらず空襲警報が続いていたのだ。
やっと生き残った人々をも、B-29は容赦していなかった。
毎日、毎晩やってきては爆弾を落とし、無垢な市民にハイエナのように襲いかかった。
そしてとうとう、松井歯科医院が直撃弾をうけ、破壊されてしまった
警報をきいたかのんが、近くの塹壕に避難したときだった。
皮肉にも、それが銀座を襲った最後の空襲となった。
でもかのんは、塹壕から見あげる空に、撃墜されていくB-29をときどき目撃した。
日本はまだ負けていないんだ、どんぐりさんが活躍しているんだと、かのんはそのたびに思った。
そのころ同時に、横浜も空襲され、工場地帯が爆破された。
自動車の工場も焼けてなくなり、服部はようやく学徒勤労から解放された。
横浜からやってきた服部は、破壊された松井歯科医院を発見した。
が、近くの瓦礫のなかにいたかのんにめぐり会うと、医院の跡地に、あちこちから集めてきた材料でバラックの家を建てた。
家には台所と、てんてんの部屋と服部の部屋があった。
三畳のそれぞれの部屋には、どこかで拾ってきた畳もちゃんと敷かれていた。
服部は、男手のないほかの被災者の家族のためにも、いくつかのバラックを建て、衣類やら火鉢などでお礼をもらった。
それをどこで手に入れたのか、リヤカーに積んで郊外にでかけ、食料品と交換してきた。もってきた食料品は、かのんといっしょに家の前の露店で売った。
どんぐりさんからは、葉書も手紙もこなかった。
かのんは何回か調布に面会にいったが、どんぐりさんには会えなかった。
連絡をまてといわれただけだった。
あのときの飛燕が、やっぱりどんぐりさんだったのか──。
かのんは空気を引き裂いて、まっすぐに飛んでいった戦闘機の軌跡を、頭のなかに思いうかべた。
八月十五日の終戦は、二人がそこに住んで三ヶ月後にやってきた。
●3章終
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