転生貴族の異世界無双生活

guju

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国士騎士⑫

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 今俺の手元にいる従者のうち、人間であるものは1人としていない。
 悪魔、天使、精霊、そのどれもが人を逸脱した、言わば化け物達だ。
 
 無論、その事に対して不満は欠片も無いのだが、ここは魔法の世界。
  宗教絡みでどうしても人で無ければならないという事態など、想定しておきたい。

 それに、次にくる奴隷達の教育も任せたいと思っている。
 人であり、それも貴族の3女とあらば、養女だとしてもそれなりの教養と知識はもちあわせているはずだし。

「貴方の、元で? 」
「うん、そうだよ」
「本当に、私を解放してくれるの? 」

 貴族の三女、それも養子である彼女は、その生活の日々が辛かった事だろう。
 日々の訓練は辛かっただろう、兄妹たちからの対応も辛かっただろう。

「全ての鎖から、俺が解き放ってやる。だから、俺の元にこい」
「よろこんで」

 頬を濡らす涙からは、彼女の今まで受けてきた苦労が感じ取れる。
 ミスをすれば、罰と称して傷つけられ。

 そんな生活は、今日で終わりだ。

まず、ネメスに念話を繋げる。

<ネメス、頼みたいことがある>
<なんでしょうか、主様>
<昨日調べてもらった、リアヌ子爵家の令嬢に接触した>
<やはり、貴方様を? >
<あぁ、その通りだ>
<それで、如何致しましょう? >

 ネメスとしては、俺の事を殺そうとした輩をタダで返す気は無いらしい。
 言葉に篭もっている棘が、明らかに感じられる。

<うん、まぁ事情が事情だから本人をどうにするとかはないんだけど>
<でしたら、子爵家を滅ぼしでも致しましょうか? >
<いや、まぁそうなんだけど。とりあえず、リアヌ子爵の屋敷を抑えてくれ。死人等はゼロで>
<なぜ、そんな……。家ごと燃やしてしまえば……>
<んな事するか>

 やはり、奴隷達の教育や人間との対応では、ネメスやスーリヤとの価値観の差が大きくでるな。
 これは、意地でもミッツェを確保したいところだ。

<子爵家と侯爵家が、繋がっていると言っていたよな。俺としては、 陛下に仇なす貴族をこのまま放って起きたくない。だから、芋ずる式に安全圏に居るヤツらごと根こそぎ決してやりたいんだ>

 子爵家を抑えれば、恐らく高確率で裏帳簿が残っているだろう。
 資金の流れ、繋がり、悪行。
 その全てが露呈してしまえば、この王国の腐り切った部分が一掃される。

 これを使わない手はない。

 だが、ここで使用人や子爵家の親族や騎士を殺してしまえば、後々突つかれるポイントになりかねない。
 可能性は少ないにしろ、可能な限りの懸念点は解消しておきたいし。

<その証拠を消されては困るし、人に死なれるのも困る。だから、生け捕っておけ>
<主様のお心のままに>


 俺は、服の下に忍んでいるキウンに念話を繋げる。

<キウン、頼みがある>
<如何した、主>
<あの子を、守ってやってくれ>
<分かった、自我を分離して彼女に我の半数を纏わせよう>
<助かる>
<気にするでない>

 俺に纏っていたキウンの鎧が、ゆっくりと剥がれ、右手を伝い彼女の元へと行く。

「これ、は? 」
「これは自我を持つ鎧だ、護衛替わりに付けておく」
「す、凄い……そんなもの」
「わかってると思うが、他言無用だ」
「わかった」
「では、俺は少し行ってくる。くれぐれも、この部屋から出るな」

 俺はそう言い残し、その場をあとにした。



◇◇◇


 私は今、奴隷商の前にいる。
 ご主人様からの命で、適正のある奴隷の購入を命じられた。
 
 私が知る限り、この世界……と言うより、この国では奴隷制度を認めている。
 借金の形に売り払われた借金奴隷や、犯罪を犯したものを奴隷とする犯罪奴隷。

 中には、盗賊達が借金奴隷と偽り、拉致してきた人を売る違法奴隷もいるけれど。

 まぁ、どの奴隷も必要悪として目を瞑られている。

 もちろん奴隷に人権など無く、法律としては主人の言葉が全ての正とされ、それに応じた罰を主人が決められるという、言わば何でもありだ。

「早く購入してしまって、訓練所にら連れていかないとね」

 奴隷商の中に入る。
 とても豪華な店は、いかに奴隷商が儲かっているのかを顕にしている。

「いらっしゃいませ。この度は如何様で? 」
「奴隷を買いに来たわ、見せて欲しいのだけれど」

 とても露骨に、品定めするように商人は私に目を向ける。
 金を持っていない相手は、お断りって事のようね。

 私は、胸ポケット――収納魔法からご主人様から預かっているお金を取り出した。
 麻袋には金貨が数百枚、パンパンにしまわれている。

「これでいいかしら、早く済ませたいのだけれど」
「ははぁ、失礼致しました。では、早速こちらへどうぞ」

 私が店に入ってきた時とは比にならない程の高待遇とえばいいのか、直ぐに判断し物腰を低くする彼はやはり商売人と言ったところかしら。

「お客様は高貴な御方でしょう、犯罪奴隷など似合いますまい。まずはこちらの、借金奴隷からご拝見ください」

 そう言って扉を開く。
 その先には、一つの檻に3人づつ、足にお守りをつけられた奴隷達がいた。

 ご主人様は、確かこの道具の露呈は避けたいと言っていたわね。

「ねぇ、出来れば私一人にして欲しいのだけれども」
「申し訳ございません、それは致しかねます」

 まぁ、当然といえば当然ね。
 もし私が、この奴隷達を皆殺しにでもすれば終わりだ物ね。

 仕方がない、ここを出る時に記憶をいじるしか無いみたいね。

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