転生貴族の異世界無双生活

guju

文字の大きさ
上 下
98 / 136

国士騎士⑪

しおりを挟む


まずは、この毒の無効化と言ったところか。
犯人の素性は、昨日時点で少し違和感を覚えたため昨日ネメスに洗わせた。

結論からいえば、子爵家の養子だ。
だが、その子爵は傀儡とも言える子爵。
大元である、チャン侯爵家の下請けのようなものであり、その領地の方針やその他含め、全てチャンが管理している。

そんな人間が、独断で王宮に間者を入れるわけがない。
貴族派閥のチャンが、指示を出したに違いない。

「毒の種類は、リアリカの花」

リアリカの花とは、一言で言えば猛毒を持つ花だ。
その毒を吸えば、30分ほどでなんの前触れもなく命を落とすという恐ろしいもの。

「ひぇー、おっかねえな。本気じゃねぇか」

俺じゃなきゃ死んでいたぞ。

「浄化の風、浄化の清水 」

2つの魔法が発動される。
ひとつは、その場を浄化する風魔法。主に、臭い場所や今回のような毒物の充満した場所を人が生きられる様にする魔法だ。

2つ目は、体内の浄化魔法。
毒物の浄化や、悪霊の類の浄化、解呪なんかにも使用される。

とりあえず、この毒素はどうにか出来た。
あとは、もうすぐやってくる犯人が異変に気づき、この部屋を開ける前に立ち去ってしまうことを防ぐために細工しておかなければならない。

恐らくだが、間者は透視スキルを保持しているだろう。それコミコミで、チャンはこの作戦を立てたに違いない。

陛下に反発する馬鹿なやからではあるが、侯爵の地位を持つもの。それくらいの策を立てていると考えるのが当然だろう。

「幻影」

俺は、魔法を発動する。
魔法名の通り、相手に幻覚を見せる魔法だ。
間者がこの扉を開けば、そこには倒れた俺と齧られたクッキー。そして、俺が発生させた全く無害な毒素の香りがするだろう。

相手は、何らこの解毒方法を保持しているだろうから、恐らく毒素を吸い込むことを苦とはしていないはず。
となれば、香りがなければ不自然だ。

とりあえず、舞台は整った。あとは、敵を待つのみだ。

――トッ、トッ、トッ……。

「きたか……」

既に、幻影は発動しているから今動き回っても問題ない。
あとは、捕獲するだけだ。

足音が、だんだんと近づいてきた。
扉が開くまで、あと6秒って所か。
扉に手をかけた。透視スキルを使っている。

5、4、3、2、1……。

――ガチャ

「眠り姫」

闇属性魔法である眠り姫を発動させ、俺は間者の意識を刈り取った。
睡眠魔法に対抗する手段は持ち合わせておらず、その場に倒れる彼女を、俺はそっと抱き抱えてソファーに寝かせた。

そして、魔法を発動させる。

「捕縛蔦」

植物属性魔法、捕縛蔦。
地面から現れた蔦は、彼女の足首と手首をしっかりと固定した。



◇◇◇



それからしばらくして、彼女は目を覚ました。

「んぅ……ここは……」
「起きたか、リアヌ子爵家養子の第三女ミッツェ・リアヌ」
「な、なんでそれを! 」
「お前の動きに隙が無かったからな、違和感を感じて昨日調べさせた」

そう、彼女はほかのメイドと違い、動きに隙が無かった。
多少、武の心得があるものであればおかしいことではないが、彼女は特別隙が無さすぎたのだ。

まるで、訓練された上位の騎士のように。

恐らく、腕の経つ暗殺者を手の内に置いておきたくて、孤児院から彼女を引き取り育てたのだろう。

「なら、私が暗殺者ってことも割れてんでしょ。殺しなさい」
「何故だ、命が惜しくないのか? 」
「どうせ戻ったら殺されるだけよ。なら、ここで痛みなく殺してくれる方がいいわ。あなた、高位の魔法士なんでしょ? 」

幻影魔法の質でバレているようだ。
彼女の対応能力と、把握能力は優秀だ。ここで殺してしまうには惜しい。

「お前は、死にたいのか? 」
「はぁ……? 」
「苦労して手に入れたその力をあっさりと手放し、1度のミスだけで人生の幕を閉じたいのかと聞いている」
「……ゎけない」
「なんだ? 」
「そんなわけない! 」

そういう彼女の目には、沢山の涙が浮かんでいた。

失敗すれば、いたぶられ殺されると分かっているのだろう。
扉を閉ざされ、光を失い、闇に追い込まれ。

もうダメだと、全てを諦めていた。
でも。

「そんなの……生きたいに決まってる。私だって、死にたくない……」

俺は、彼女を拘束していた蔦を消し、彼女を自由にする。
そして、椅子に座った彼女の目線の高さに合わせて言う。

「ならば、俺の元で働かないか? 」
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる
ファンタジー
目覚めるとそこは地球とは違う世界だった。 怒る女神にブサイク認定され地上に落とされる俺はこの先生きのこることができるのか? 初投稿でのんびり書きます。 ※23年6月20日追記 本作品、及び当作者の作品の名称(モンスター及び生き物名、都市名、異世界人名など作者が作った名称)を盗用したり真似たりするのはやめてください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

処理中です...