転生貴族の異世界無双生活

guju

文字の大きさ
上 下
62 / 136

大進行⑭

しおりを挟む
トールス王国王宮内

大きな窓がいくつも並んだ廊下は、東に登る太陽の光に照らされて眩しいくらいに明るい。
その廊下を、腰に剣を携えて肘や膝に部分鎧を付けた軽装の兵士が1人、息を切らしながら走っていた。


その頃、王宮内の会議室では2つの派閥による騒がしい会議が執り行われていた。
その声は、結界魔法の一種である''防音結界''が張られていなければ、その内容は全てが外に漏れ出ているであろう大きさである。

椅子に座った国王の前に、通路で分裂した4列横隊の形で並んでいる。


「陛下、高レートの魔物の出現が近頃増えているようですぞ! 」
「そうですぞ、今すぐに手を打つべきです」

白髪をオールバックで整えた老人と、顔中に皮脂汗を浮かべ、無駄な養分をたゆたゆとさせている中年の男が声を荒らげる。

この2人は、現国王陛下に反発するもの、つまりは貴族派閥の人間である。
その中でも二人は大きな力をもち、白髪の老人が公爵家、中年の男が侯爵だ。

その貴族派閥は国王から見て左側に、国王派閥の人間は右側に並んでいる。

「それならばヴェスター殿、貴方の兵を向かわせれば良いのでは? 」
「そうですな、あの森の管理はヴェスター殿が担っておろう」

公爵家の白髪の男(ヴェスター)は、苦虫を噛み潰したような顔で口を紡ぐ。

「ですが陛下、それでもあの森は王都の範囲内。 やはり陛下が手を回すべきだと、私は思いますぞ」
「私もそう思います、チャン様。 いくら森の管理を任されてるとはいえ、ヴェスター様お独りにこの事態を押し付けるのは、国王として良くは無いと思います」

皮脂汗を、ハンカチで拭うチャンに後ろからまだ若い貴族が同意の意を示す。
その他にも、貴族派閥の人間のほとんどのものが「そうだ」と首を縦に振る。
貴族派閥の人間からすれば、この一件でなにか不手際があればそれを攻撃材料にできる故、ここぞとばかりに好き放題に言っている。

「そう言えば陛下……」
「なんだ? 」
「最近新しい騎士団を設立なさったそうで」

国王、トールスの眉間にシワが集まる。

「確かに……作ったな」
「では、その者達を使えば宜しいのでは? 」
「いやはや、そうですな。 国士騎士と言ったでしょうか、その騎士団の力試しにもなりましょう」

次々にあげられる貴族派閥の声に国王は苛立ちを抱えるも、やはり国王と言えよう、巧みに隠し切っている。

静かに目を瞑り、腕を組み、俯く。
色々な声が飛び交う中、どうにか冷静に判断しようとしているのだろう。

その時、会議室のドアがノックされることも無く勢いよく開かれた。

「何事だ、今は会議中であるぞ! 」

国王派閥の大公の爵位を持つスピラスが声を荒らげる。
普通、どのような用事があろうとも会議中に無断で乱入する事は許されていない。

「よい、申せ 」

国王のその一言で辺りは静まりかえる。

「ですが陛下! 」
「よいと言っている。 何があった? 」

はい、そう言って片膝をついて頭を垂れている兵士は息を荒らげながらも話し出す。

「ただいま、アジュワの森より魔物の大群が王都に向けて進行中! 」
「何? 数は」
「はっ! 凡そ2万、それに、高レートの魔物も複数確認できており、最低でも劣等竜、火竜クラスの大物が数匹目撃されています! 」
「竜種だと! 」

勢いよく立ち上がった国王は頭を抱える。

「陛下! どうなさるおつもりですか」
「このようなことになる前に手を打っておけば」
「そうですぞ、判断が遅かったのではないのでは? 」

王都に強大な危機が迫り来る中、未だに国王の揚げ足を取ろうと必死な貴族派閥の人間に、スピラスの怒りは頂点に達した。
もとより、この会議が始まって以来から国王派閥の貴族達は貴族派閥の人間に苛立ちを隠しきれていなかったのだが。

「お前達、今はそのような事よりも魔物をどうするかの話の方が先決だろう! 」

騒がしかった会議室は、スピラスの噴火した火山のような怒りにより、静まり返った。

「うむ……これ程までの、ましてや竜種も居るとなれば王国の兵士だけでは解決できまい」


ーーふぅ


小さく息を吐き出すと、トールスは顔を上げ指示を出す

「大公殿は王国内の冒険者に協力を仰げ! 

シャーリー伯爵とマルクス子爵は治癒魔法師を集めれるだけ集めろ! 」
「御意に! 」

3人は首を縦に振ると、直ぐに部屋から立ち去る。
だが、まだ国王の指示は終わらない。

「チャン侯爵とリーズ辺境伯は治癒の魔法薬の調達を、ルーザム公爵は教会と連携してけが人の受け入れの出来る天幕を用意しろ!」
「はっ! 」

二人共貴族派閥の人間ではあるものの、この緊急事態、スピラスの怒声で少しは目を覚ましたのだろう、従順に動いているようで直ぐに部屋から退室した。

そして、隣に控えていた宰相に指示を出した。

「シルウェは、ラジュワの森の反対側にあるアジュの森に居る2人を連れてきて欲しい」
「ついに出されるのですね、あの方々を」
「そうだ。国士騎士の初陣だ」

トールスは、このような時のために用意しておいた精鋭部隊、未だメンバーは二人しかいないが個々の力が強く、その言葉の通り百人力……いや、千人力、万人力にもなるだろう戦力が動き出した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

貴族の家に転生した俺は、やり過ぎチートで異世界を自由に生きる

フリウス
ファンタジー
幼い頃からファンタジー好きな夢幻才斗(むげんさいと)。 自室でのゲーム中に突然死した才斗だが、才斗大好き女神:レアオルによって、自分が管理している異世界に転生する。 だが、事前に二人で相談して身につけたチートは…一言で言えば普通の神が裸足で逃げ出すような「やり過ぎチート」だった!? 伯爵家の三男に転生した才斗=ウェルガは、今日も気ままに非常識で遊び倒し、剣と魔法の異世界を楽しんでいる…。 アホみたいに異世界転生作品を読んでいたら、自分でも作りたくなって勢いで書いちゃいましたww ご都合主義やらなにやら色々ありますが、主人公最強物が書きたかったので…興味がある方は是非♪ それと、作者の都合上、かなり更新が不安定になります。あしからず。 ちなみにミスって各話が1100~1500字と短めです。なのでなかなか主人公は大人になれません。 現在、最低でも月1~2月(ふたつき)に1話更新中…

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...