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大進行⑭
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トールス王国王宮内
大きな窓がいくつも並んだ廊下は、東に登る太陽の光に照らされて眩しいくらいに明るい。
その廊下を、腰に剣を携えて肘や膝に部分鎧を付けた軽装の兵士が1人、息を切らしながら走っていた。
その頃、王宮内の会議室では2つの派閥による騒がしい会議が執り行われていた。
その声は、結界魔法の一種である''防音結界''が張られていなければ、その内容は全てが外に漏れ出ているであろう大きさである。
椅子に座った国王の前に、通路で分裂した4列横隊の形で並んでいる。
「陛下、高レートの魔物の出現が近頃増えているようですぞ! 」
「そうですぞ、今すぐに手を打つべきです」
白髪をオールバックで整えた老人と、顔中に皮脂汗を浮かべ、無駄な養分をたゆたゆとさせている中年の男が声を荒らげる。
この2人は、現国王陛下に反発するもの、つまりは貴族派閥の人間である。
その中でも二人は大きな力をもち、白髪の老人が公爵家、中年の男が侯爵だ。
その貴族派閥は国王から見て左側に、国王派閥の人間は右側に並んでいる。
「それならばヴェスター殿、貴方の兵を向かわせれば良いのでは? 」
「そうですな、あの森の管理はヴェスター殿が担っておろう」
公爵家の白髪の男(ヴェスター)は、苦虫を噛み潰したような顔で口を紡ぐ。
「ですが陛下、それでもあの森は王都の範囲内。 やはり陛下が手を回すべきだと、私は思いますぞ」
「私もそう思います、チャン様。 いくら森の管理を任されてるとはいえ、ヴェスター様お独りにこの事態を押し付けるのは、国王として良くは無いと思います」
皮脂汗を、ハンカチで拭うチャンに後ろからまだ若い貴族が同意の意を示す。
その他にも、貴族派閥の人間のほとんどのものが「そうだ」と首を縦に振る。
貴族派閥の人間からすれば、この一件でなにか不手際があればそれを攻撃材料にできる故、ここぞとばかりに好き放題に言っている。
「そう言えば陛下……」
「なんだ? 」
「最近新しい騎士団を設立なさったそうで」
国王、トールスの眉間にシワが集まる。
「確かに……作ったな」
「では、その者達を使えば宜しいのでは? 」
「いやはや、そうですな。 国士騎士と言ったでしょうか、その騎士団の力試しにもなりましょう」
次々にあげられる貴族派閥の声に国王は苛立ちを抱えるも、やはり国王と言えよう、巧みに隠し切っている。
静かに目を瞑り、腕を組み、俯く。
色々な声が飛び交う中、どうにか冷静に判断しようとしているのだろう。
その時、会議室のドアがノックされることも無く勢いよく開かれた。
「何事だ、今は会議中であるぞ! 」
国王派閥の大公の爵位を持つスピラスが声を荒らげる。
普通、どのような用事があろうとも会議中に無断で乱入する事は許されていない。
「よい、申せ 」
国王のその一言で辺りは静まりかえる。
「ですが陛下! 」
「よいと言っている。 何があった? 」
はい、そう言って片膝をついて頭を垂れている兵士は息を荒らげながらも話し出す。
「ただいま、アジュワの森より魔物の大群が王都に向けて進行中! 」
「何? 数は」
「はっ! 凡そ2万、それに、高レートの魔物も複数確認できており、最低でも劣等竜、火竜クラスの大物が数匹目撃されています! 」
「竜種だと! 」
勢いよく立ち上がった国王は頭を抱える。
「陛下! どうなさるおつもりですか」
「このようなことになる前に手を打っておけば」
「そうですぞ、判断が遅かったのではないのでは? 」
王都に強大な危機が迫り来る中、未だに国王の揚げ足を取ろうと必死な貴族派閥の人間に、スピラスの怒りは頂点に達した。
もとより、この会議が始まって以来から国王派閥の貴族達は貴族派閥の人間に苛立ちを隠しきれていなかったのだが。
「お前達、今はそのような事よりも魔物をどうするかの話の方が先決だろう! 」
騒がしかった会議室は、スピラスの噴火した火山のような怒りにより、静まり返った。
「うむ……これ程までの、ましてや竜種も居るとなれば王国の兵士だけでは解決できまい」
ーーふぅ
小さく息を吐き出すと、トールスは顔を上げ指示を出す
「大公殿は王国内の冒険者に協力を仰げ!
シャーリー伯爵とマルクス子爵は治癒魔法師を集めれるだけ集めろ! 」
「御意に! 」
3人は首を縦に振ると、直ぐに部屋から立ち去る。
だが、まだ国王の指示は終わらない。
「チャン侯爵とリーズ辺境伯は治癒の魔法薬の調達を、ルーザム公爵は教会と連携してけが人の受け入れの出来る天幕を用意しろ!」
「はっ! 」
二人共貴族派閥の人間ではあるものの、この緊急事態、スピラスの怒声で少しは目を覚ましたのだろう、従順に動いているようで直ぐに部屋から退室した。
そして、隣に控えていた宰相に指示を出した。
「シルウェは、ラジュワの森の反対側にあるアジュの森に居る2人を連れてきて欲しい」
「ついに出されるのですね、あの方々を」
「そうだ。国士騎士の初陣だ」
トールスは、このような時のために用意しておいた精鋭部隊、未だメンバーは二人しかいないが個々の力が強く、その言葉の通り百人力……いや、千人力、万人力にもなるだろう戦力が動き出した。
大きな窓がいくつも並んだ廊下は、東に登る太陽の光に照らされて眩しいくらいに明るい。
その廊下を、腰に剣を携えて肘や膝に部分鎧を付けた軽装の兵士が1人、息を切らしながら走っていた。
その頃、王宮内の会議室では2つの派閥による騒がしい会議が執り行われていた。
その声は、結界魔法の一種である''防音結界''が張られていなければ、その内容は全てが外に漏れ出ているであろう大きさである。
椅子に座った国王の前に、通路で分裂した4列横隊の形で並んでいる。
「陛下、高レートの魔物の出現が近頃増えているようですぞ! 」
「そうですぞ、今すぐに手を打つべきです」
白髪をオールバックで整えた老人と、顔中に皮脂汗を浮かべ、無駄な養分をたゆたゆとさせている中年の男が声を荒らげる。
この2人は、現国王陛下に反発するもの、つまりは貴族派閥の人間である。
その中でも二人は大きな力をもち、白髪の老人が公爵家、中年の男が侯爵だ。
その貴族派閥は国王から見て左側に、国王派閥の人間は右側に並んでいる。
「それならばヴェスター殿、貴方の兵を向かわせれば良いのでは? 」
「そうですな、あの森の管理はヴェスター殿が担っておろう」
公爵家の白髪の男(ヴェスター)は、苦虫を噛み潰したような顔で口を紡ぐ。
「ですが陛下、それでもあの森は王都の範囲内。 やはり陛下が手を回すべきだと、私は思いますぞ」
「私もそう思います、チャン様。 いくら森の管理を任されてるとはいえ、ヴェスター様お独りにこの事態を押し付けるのは、国王として良くは無いと思います」
皮脂汗を、ハンカチで拭うチャンに後ろからまだ若い貴族が同意の意を示す。
その他にも、貴族派閥の人間のほとんどのものが「そうだ」と首を縦に振る。
貴族派閥の人間からすれば、この一件でなにか不手際があればそれを攻撃材料にできる故、ここぞとばかりに好き放題に言っている。
「そう言えば陛下……」
「なんだ? 」
「最近新しい騎士団を設立なさったそうで」
国王、トールスの眉間にシワが集まる。
「確かに……作ったな」
「では、その者達を使えば宜しいのでは? 」
「いやはや、そうですな。 国士騎士と言ったでしょうか、その騎士団の力試しにもなりましょう」
次々にあげられる貴族派閥の声に国王は苛立ちを抱えるも、やはり国王と言えよう、巧みに隠し切っている。
静かに目を瞑り、腕を組み、俯く。
色々な声が飛び交う中、どうにか冷静に判断しようとしているのだろう。
その時、会議室のドアがノックされることも無く勢いよく開かれた。
「何事だ、今は会議中であるぞ! 」
国王派閥の大公の爵位を持つスピラスが声を荒らげる。
普通、どのような用事があろうとも会議中に無断で乱入する事は許されていない。
「よい、申せ 」
国王のその一言で辺りは静まりかえる。
「ですが陛下! 」
「よいと言っている。 何があった? 」
はい、そう言って片膝をついて頭を垂れている兵士は息を荒らげながらも話し出す。
「ただいま、アジュワの森より魔物の大群が王都に向けて進行中! 」
「何? 数は」
「はっ! 凡そ2万、それに、高レートの魔物も複数確認できており、最低でも劣等竜、火竜クラスの大物が数匹目撃されています! 」
「竜種だと! 」
勢いよく立ち上がった国王は頭を抱える。
「陛下! どうなさるおつもりですか」
「このようなことになる前に手を打っておけば」
「そうですぞ、判断が遅かったのではないのでは? 」
王都に強大な危機が迫り来る中、未だに国王の揚げ足を取ろうと必死な貴族派閥の人間に、スピラスの怒りは頂点に達した。
もとより、この会議が始まって以来から国王派閥の貴族達は貴族派閥の人間に苛立ちを隠しきれていなかったのだが。
「お前達、今はそのような事よりも魔物をどうするかの話の方が先決だろう! 」
騒がしかった会議室は、スピラスの噴火した火山のような怒りにより、静まり返った。
「うむ……これ程までの、ましてや竜種も居るとなれば王国の兵士だけでは解決できまい」
ーーふぅ
小さく息を吐き出すと、トールスは顔を上げ指示を出す
「大公殿は王国内の冒険者に協力を仰げ!
シャーリー伯爵とマルクス子爵は治癒魔法師を集めれるだけ集めろ! 」
「御意に! 」
3人は首を縦に振ると、直ぐに部屋から立ち去る。
だが、まだ国王の指示は終わらない。
「チャン侯爵とリーズ辺境伯は治癒の魔法薬の調達を、ルーザム公爵は教会と連携してけが人の受け入れの出来る天幕を用意しろ!」
「はっ! 」
二人共貴族派閥の人間ではあるものの、この緊急事態、スピラスの怒声で少しは目を覚ましたのだろう、従順に動いているようで直ぐに部屋から退室した。
そして、隣に控えていた宰相に指示を出した。
「シルウェは、ラジュワの森の反対側にあるアジュの森に居る2人を連れてきて欲しい」
「ついに出されるのですね、あの方々を」
「そうだ。国士騎士の初陣だ」
トールスは、このような時のために用意しておいた精鋭部隊、未だメンバーは二人しかいないが個々の力が強く、その言葉の通り百人力……いや、千人力、万人力にもなるだろう戦力が動き出した。
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