60 / 136
大進行⑬
しおりを挟む
「まさか、たった2週間で物にするとはな」
アルトにタオルを手渡しながら言う。
「いえ、貴方のおかげですよ」
「そうだな」
謙遜をせずに認める彼は、それほどの力を自負しているのだろう。
長い年月をかけて培ってきた自身の術に。
彼は、一見ではアルトと殆ど歳が変わらぬような見た目をしているが、実際は103歳という超高齢だ。
一昔前、戦場で剣聖として活躍してきた彼は、老後師となることも無く今いる森奥に隠居した。
だが、国王の代変わりのあと、今の国王がどこかで手に入れた ''秘薬''を使って若返らせたのだ。
この秘薬と呼ばれるものは、世界樹と呼ばれる大木からごく稀に抽出される樹脂であり、その養分により身体が若返るものだ。
世界樹は龍種の長 龍王、森魔族の長ハイエルフが守護しているものである。
つまりは、人間では到底手にいらることの出来ないものだ。
だが、どういう訳だか国王はそれを可能とした。
これは、未だアルトも理由をわかっていない。
そんな特別な師から剣術を教わったアルトは、以前より無駄のない、スキルに頼りきらない戦闘スタイルを確立できた。
たったの2週間で。
だが、未だに純粋な剣術勝負でアルトがハヴェに勝利を収めた事は無い。
だが、魔法を使用した場合は別だ。
ハヴェは、剣術には特化しているものの魔法に置いては素人に毛が生えた程度、身体強化魔法、中級程度(魔法ランクで言うD~B)のものしか使用できない。
それも、適正属性は1つだけである。
故に、アルトが全力で……つまり、魔法をフル使用した場合、ハヴェでは手も足も出ないのだ。
魔法師が1人で生き抜いていくことは困難、剣術士ならばそれが可能であり、単体での戦力は高いものの、パーティーを組んだりする場合、集団戦闘に置いては、遠距離から高火力の魔法を放つ魔法師は剣術士にも優る。
つまりは、場所と場合によるのだ。
だが、それ1人でまかなえる、アルトが相手になった場合、勝てるものはいないだろう。
「それにしても、本当に強くなったな。ここに来たばかりの時は、てんでダメだったのに」
「優秀な師をもてて、私は幸せですね」
上品にクスリと笑うようにアルトがそう答えると、ハヴェは何が面白いのか、腹を抱えながら大笑いをした。
「フフっ、フハハッ! 気持ち悪いぞ、アルト」
目に浮かんだ、笑い涙を拭いながらアルトの肩を叩くと、先程までの上品な態度を改め、取り繕う事の無い、すの表情で薄ら笑いを、アルトは、浮かべる。
「茶番が過ぎたな、先生」
「過ぎすぎだよ、対応が甘過ぎて砂糖を吐くかと思ったわ」
「そうか……砂糖を吐いてもらいたいものですね、我が師よ」
アルトは、また取り繕ったような態度になると、少し屈んでハヴェの手を取り言う。
「巫山戯るな、気持ち悪い」
コツンとアルトの頭を叩くと、大きく伸びをする。
「戻るか」
「おう」
アルトは、タオルを首にかけるとハヴェと共に家に戻った。
「どうだ、あの刀の使い心地は」
「最高だよ、重さも丁度いいし」
それに……と続ける。
「能力の使い勝手が良い」
道中、ハヴェはアルトに尋ねる。
アルトは、その刀をアイテムボックスから取り出し少しだけ抜きながら言う。
あの刀は、ハヴェから貰ったものだ。
と言うより、ハヴェから貰った魔鉱石を使って、アルト自ら作ったものだ。
この世界には、魔鉱石という鉱石がある。
これは、洞窟の奥深く、地中の奥深くなどで稀に採掘出来るもので、この鉱石に魔力を流すと自らに一番合った武器に変化するというものだ。
魔鉱石は、長年魔力を吸い込んだ魔石からなる。
その為、魔鉱石自体に自我のようなものが芽生え主の魔力に反応し、武器の形を変えるといわれている。
この世界にいる妖精と似た者だ。
妖精は、完全に自立した魔力の塊が自我を持った生き物である。
つまり、魔鉱石とは、魔石が長年かけて魔力を吸収し、妖精に似たようなものになった鉱石である。
それをハヴェから貰い、アルトが制作した刀が今使ってる武器だ。
その武器には能力が備わり、例えばアルトのものならば魔力無効と、再生不可である。
能力事態は作成後頭に入って来て初めてわかる。
この能力は、単純だが強い。
魔力無効は魔法が聞かない。つまり、魔法を断ち切れるというもの。
再生不可は、任意発動型であり、その刀がつけた傷は再生できないというものだ。
魔武器が魔法を切る事はよくある事だが、せいぜい中級までだ。
高ランクの魔法は魔武器でも切れない。
それに付け加え、名前を呼べば手元に来るという能力が魔鉱石から作り出した武器には備わっている。
それ故、魔鉱石は高価で、魔武器は珍しいのだ。
アルトにタオルを手渡しながら言う。
「いえ、貴方のおかげですよ」
「そうだな」
謙遜をせずに認める彼は、それほどの力を自負しているのだろう。
長い年月をかけて培ってきた自身の術に。
彼は、一見ではアルトと殆ど歳が変わらぬような見た目をしているが、実際は103歳という超高齢だ。
一昔前、戦場で剣聖として活躍してきた彼は、老後師となることも無く今いる森奥に隠居した。
だが、国王の代変わりのあと、今の国王がどこかで手に入れた ''秘薬''を使って若返らせたのだ。
この秘薬と呼ばれるものは、世界樹と呼ばれる大木からごく稀に抽出される樹脂であり、その養分により身体が若返るものだ。
世界樹は龍種の長 龍王、森魔族の長ハイエルフが守護しているものである。
つまりは、人間では到底手にいらることの出来ないものだ。
だが、どういう訳だか国王はそれを可能とした。
これは、未だアルトも理由をわかっていない。
そんな特別な師から剣術を教わったアルトは、以前より無駄のない、スキルに頼りきらない戦闘スタイルを確立できた。
たったの2週間で。
だが、未だに純粋な剣術勝負でアルトがハヴェに勝利を収めた事は無い。
だが、魔法を使用した場合は別だ。
ハヴェは、剣術には特化しているものの魔法に置いては素人に毛が生えた程度、身体強化魔法、中級程度(魔法ランクで言うD~B)のものしか使用できない。
それも、適正属性は1つだけである。
故に、アルトが全力で……つまり、魔法をフル使用した場合、ハヴェでは手も足も出ないのだ。
魔法師が1人で生き抜いていくことは困難、剣術士ならばそれが可能であり、単体での戦力は高いものの、パーティーを組んだりする場合、集団戦闘に置いては、遠距離から高火力の魔法を放つ魔法師は剣術士にも優る。
つまりは、場所と場合によるのだ。
だが、それ1人でまかなえる、アルトが相手になった場合、勝てるものはいないだろう。
「それにしても、本当に強くなったな。ここに来たばかりの時は、てんでダメだったのに」
「優秀な師をもてて、私は幸せですね」
上品にクスリと笑うようにアルトがそう答えると、ハヴェは何が面白いのか、腹を抱えながら大笑いをした。
「フフっ、フハハッ! 気持ち悪いぞ、アルト」
目に浮かんだ、笑い涙を拭いながらアルトの肩を叩くと、先程までの上品な態度を改め、取り繕う事の無い、すの表情で薄ら笑いを、アルトは、浮かべる。
「茶番が過ぎたな、先生」
「過ぎすぎだよ、対応が甘過ぎて砂糖を吐くかと思ったわ」
「そうか……砂糖を吐いてもらいたいものですね、我が師よ」
アルトは、また取り繕ったような態度になると、少し屈んでハヴェの手を取り言う。
「巫山戯るな、気持ち悪い」
コツンとアルトの頭を叩くと、大きく伸びをする。
「戻るか」
「おう」
アルトは、タオルを首にかけるとハヴェと共に家に戻った。
「どうだ、あの刀の使い心地は」
「最高だよ、重さも丁度いいし」
それに……と続ける。
「能力の使い勝手が良い」
道中、ハヴェはアルトに尋ねる。
アルトは、その刀をアイテムボックスから取り出し少しだけ抜きながら言う。
あの刀は、ハヴェから貰ったものだ。
と言うより、ハヴェから貰った魔鉱石を使って、アルト自ら作ったものだ。
この世界には、魔鉱石という鉱石がある。
これは、洞窟の奥深く、地中の奥深くなどで稀に採掘出来るもので、この鉱石に魔力を流すと自らに一番合った武器に変化するというものだ。
魔鉱石は、長年魔力を吸い込んだ魔石からなる。
その為、魔鉱石自体に自我のようなものが芽生え主の魔力に反応し、武器の形を変えるといわれている。
この世界にいる妖精と似た者だ。
妖精は、完全に自立した魔力の塊が自我を持った生き物である。
つまり、魔鉱石とは、魔石が長年かけて魔力を吸収し、妖精に似たようなものになった鉱石である。
それをハヴェから貰い、アルトが制作した刀が今使ってる武器だ。
その武器には能力が備わり、例えばアルトのものならば魔力無効と、再生不可である。
能力事態は作成後頭に入って来て初めてわかる。
この能力は、単純だが強い。
魔力無効は魔法が聞かない。つまり、魔法を断ち切れるというもの。
再生不可は、任意発動型であり、その刀がつけた傷は再生できないというものだ。
魔武器が魔法を切る事はよくある事だが、せいぜい中級までだ。
高ランクの魔法は魔武器でも切れない。
それに付け加え、名前を呼べば手元に来るという能力が魔鉱石から作り出した武器には備わっている。
それ故、魔鉱石は高価で、魔武器は珍しいのだ。
1
お気に入りに追加
2,213
あなたにおすすめの小説
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
お気楽、極楽⁉︎ ポンコツ女神に巻き込まれた俺は、お詫びスキルで異世界を食べ歩く!
にのまえ
ファンタジー
目が覚めたら、女性が土下座をしていた。
その女性に話を聞くと、自分を女神だと言った。そしてこの女神のミス(くしゃみ)で、俺、鈴村凛太郎(27)は勇者召喚に巻き込まれたらしい。
俺は女神のミスで巻き込まれで、勇者ではないとして勇者特有のスキルを持たないし、元の世界には帰れないようだ。
「……すみません」
巻き込みのお詫びとして、女神は異世界で生きていくためのスキルと、自分で選んだスキルをくれた。
これは趣味の食べ歩きを、異世界でするしかない、
俺、凛太郎の異世界での生活が始まった。
【オンボロ剣】も全て【神剣】に変える最強術者
月風レイ
ファンタジー
神の手違いにより死んでしまった佐藤聡太は神の計らいで異世界転移を果たすことになった。
そして、その際に神には特別に特典を与えられることになった。
そして聡太が望んだ力は『どんなものでも俺が装備すると最強になってしまう能力』というものであった。
聡太はその能力は服であれば最高の服へと変わり、防具であれば伝説級の防具の能力を持つようになり、剣に至っては神剣のような力を持つ。
そんな能力を持って、聡太は剣と魔法のファンタジー世界を謳歌していく。
ストレスフリーファンタジー。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜
出汁の素
ファンタジー
アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。
これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。
そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。
のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。
第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。
第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。
第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。
第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。
1章20話(除く閑話)予定です。
-------------------------------------------------------------
書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。
全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。
下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる