5 / 136
幼少期③
しおりを挟む
ヒヒィンと馬が鳴くと、教会に着いたのであろう、アルトが乗っていた馬車はゆっくりと減速し、停車する。
御者が御者席から降りると、アルト達が乗っている客車の扉を開く。
「グラン様、教会にご到着致しました」
「有難う」
父様は一言礼を言い、馬車から降りる。
それに続くように母様、兄様が降り、最後に僕が降りる。
教会の前には、黒の服を纏った数人の女性と、白い服に身を包んだ60歳程度の老人が深々と頭を下げた
「辺境伯様、ようこそお越しくださいました。この度は次男アルト様の洗礼とお聞きしています」
「あぁ、そうだ。アルト、挨拶をしなさい」
「ご紹介に預かりました、アルト・フォン・クリードです。今日はよろしくお願いします」
アルトは老人に頭を下げる
「これはこれは、よく出来たお坊ちゃんで……私は、クリード辺境伯の教会の神官を請け負っております、ナルマと申します。以後お見知り置きを」
神官のナルマはアルトよりも深く頭を下げた。そのような事が出来るあたり、教会の人間は教養があるのだとアルトは思った。
「では、早速ですがご案内致しても?」
「あぁ。頼む」
アルト達は、神官に連れられ、洗礼を行う場所へ向かう
壁や天井は白で統一されており、大きなステンドガラスから差し込む光は、その白を輝かせる
誰も言葉を発することが無いため、教会には足音が響く。
教会という神聖な場所、話す事がしずらい空気だったのだろう。
しばらく歩くと、あるひとつの大きな扉の前で立ち止まった神官はくるりとこちらを向き、その沈黙を打ち破るかのように話し出す
「皆様、こちらが洗礼祭壇で御座います。洗礼を受けるアルト様は祭壇の銅像に片膝をついて目を瞑って下さい。私達は隣の部屋で待機です」
「わかった。アルト、行って来い。」
「はい」
「終わりましたらお隣の部屋までおいで下さい」
アルトに一礼をすると、父様たちの方へ向かい、隣の部屋へ移動する
横に控えている修道士達が大きな扉を開く
「アルト様、どうぞ中へ。終わりましたら内側からノックして頂ければ扉を開けさせていただきます」
「分かった」
中に入ると、真っ白な空間にあったことのある神が目の前にいるかのようなリアルな銅像、思わず見とれてしまった。
「これは、凄いなぁ」
窓から差し込む太陽の光が丁度神々の銅像にあたり、その美しさが向上する
僕は言われた通り祭壇に上がり、銅像の前で片膝を立て目を瞑る。すると目の前が白く包まれる。
謎の光が去った後目を開けると、そこは以前来たことのある場所、そう転生前の部屋だった。
「やっときよったかい。久しぶりじゃの、湊いや、アルトといったほうがいいかな?」
「絶対神様でしたっけ?」
同じような部屋ではあるが今回はは位置が異なる。以前は僕を取り囲むような状態だったが、今回は対面だ
「ホッホッホ、覚えておったか。それよりどうだ? 未知の世界は」
アルトは少し微笑みながら、その裏に思い出したかのような悲しみを見せ言う。
「暖かい家族が居るので、楽しいです。前世では、何も無かったので……」
絶対神様はそれは良かったと笑顔で言ったが、直ぐに真剣な表情に変わる
「なるべくお主の生活を邪魔したくはないのじゃが、ひとつ頼まれてくれないか?」
「頼みとはなんですか?」
「あぁ、今お主がおる世界に邪神とよばれる者がおる。それを討伐して欲しい」
邪神? テンプレではあるが……
「脅すような形になるが、いずれはお主の大切な人や、者を脅かす存在となろう。じゃから、早くに討伐して欲しいのだ」
大切なものを奪う
その言葉にアルトは異常に反応し、直ぐに答えた
「引き受けます。大切なものを奪われるのは嫌です」
「そうか、有難いの。どこに潜んでおるかは分からんが、10年以内には封印が解けるじゃろう」
「分かりました」
そしてまた視界が白く包まれた。
現実世界に戻った僕は、言われた通り扉をノックする。
扉が開いたので、僕は外に出てみんなの元へ向かう
「終わったか」
「父様、終わりました。」
「アルト、良かった。結果は帰ってから、夕食時に聞く。それではナルマ神官ありがとう。」
神官は頭を下げ、馬車まで見送ってくれた。
馬車の中では熱で寝込んでいた時に起きたことをみんなが話してくれた。
家に着くと、父様が僕の部屋に来た
「アルト、夕食までまだ6時間程ある。洗礼も終わったことだし、一人で街に行くことを許可するぞ。」
そう、5歳の洗礼が終わるまでは、我が家では1人での街への外出を制限されていたのだ。
「ありがとうございます。嬉しいです」
父様が部屋を出ると、僕は直ぐにお金を持ち部屋後にする。
家を出て5分ほど歩くと少しずつ街が賑やかな場所になって行く。
タレの甘い香りや、子供達の話し声、立ち話をしているおばさん達。
僕は自分の領地がいかに平和かを実感しながら歩く。
そして、僕はひとつの建物の前で足を止める。そう、ギルドだ
ギルドとは犬を探すことからモンスター退治、護衛まで金さえ積めばなんでもこなす言わば万屋のようなものだ。
異世界といったら冒険者ギルドだろうと言うことで一番ここに来たかったのだ。
「はいるか」
ギギィ
少し軋んだ音の扉を開けるとそこにはボードを見る人、受付に並ぶ人、酒場で飲み食いをし話している人など様々な人がいる。
僕は受付に並ぶ。
10分ほど待って僕の順がやって来た。
受付嬢はやはり全員美人で冒険者のやる気を引き立てるためだとかそうで無いとか……
そんな事が前世で読んだラノベに書いてあったような気がする
「僕、今日は依頼かな?」
受付嬢にそう尋ねられる。まぁ、側から見たらただの5歳だからあたりまえなんだろうが
「いえ、違います。新規登録に来ました」
すると後ろから大きな男共3人が列を無視してやって来た。
「おいおい、クソガキが登録なんてはえぇよ。うちに帰ってねんねしてろ! 俺たちが子守唄歌ってやろうか」
「「ギャハハハ」」
後ろの2人が大笑いしている。
周りでは、可哀想に等の哀れみの言葉が呟かれるが、これもまたテンプレであるので、アルト自身、かなりワクワクしているのだ
そんな中、声をかけてみたいのを堪え、事が悪化する事を想定してその男達を無視するのであった。
御者が御者席から降りると、アルト達が乗っている客車の扉を開く。
「グラン様、教会にご到着致しました」
「有難う」
父様は一言礼を言い、馬車から降りる。
それに続くように母様、兄様が降り、最後に僕が降りる。
教会の前には、黒の服を纏った数人の女性と、白い服に身を包んだ60歳程度の老人が深々と頭を下げた
「辺境伯様、ようこそお越しくださいました。この度は次男アルト様の洗礼とお聞きしています」
「あぁ、そうだ。アルト、挨拶をしなさい」
「ご紹介に預かりました、アルト・フォン・クリードです。今日はよろしくお願いします」
アルトは老人に頭を下げる
「これはこれは、よく出来たお坊ちゃんで……私は、クリード辺境伯の教会の神官を請け負っております、ナルマと申します。以後お見知り置きを」
神官のナルマはアルトよりも深く頭を下げた。そのような事が出来るあたり、教会の人間は教養があるのだとアルトは思った。
「では、早速ですがご案内致しても?」
「あぁ。頼む」
アルト達は、神官に連れられ、洗礼を行う場所へ向かう
壁や天井は白で統一されており、大きなステンドガラスから差し込む光は、その白を輝かせる
誰も言葉を発することが無いため、教会には足音が響く。
教会という神聖な場所、話す事がしずらい空気だったのだろう。
しばらく歩くと、あるひとつの大きな扉の前で立ち止まった神官はくるりとこちらを向き、その沈黙を打ち破るかのように話し出す
「皆様、こちらが洗礼祭壇で御座います。洗礼を受けるアルト様は祭壇の銅像に片膝をついて目を瞑って下さい。私達は隣の部屋で待機です」
「わかった。アルト、行って来い。」
「はい」
「終わりましたらお隣の部屋までおいで下さい」
アルトに一礼をすると、父様たちの方へ向かい、隣の部屋へ移動する
横に控えている修道士達が大きな扉を開く
「アルト様、どうぞ中へ。終わりましたら内側からノックして頂ければ扉を開けさせていただきます」
「分かった」
中に入ると、真っ白な空間にあったことのある神が目の前にいるかのようなリアルな銅像、思わず見とれてしまった。
「これは、凄いなぁ」
窓から差し込む太陽の光が丁度神々の銅像にあたり、その美しさが向上する
僕は言われた通り祭壇に上がり、銅像の前で片膝を立て目を瞑る。すると目の前が白く包まれる。
謎の光が去った後目を開けると、そこは以前来たことのある場所、そう転生前の部屋だった。
「やっときよったかい。久しぶりじゃの、湊いや、アルトといったほうがいいかな?」
「絶対神様でしたっけ?」
同じような部屋ではあるが今回はは位置が異なる。以前は僕を取り囲むような状態だったが、今回は対面だ
「ホッホッホ、覚えておったか。それよりどうだ? 未知の世界は」
アルトは少し微笑みながら、その裏に思い出したかのような悲しみを見せ言う。
「暖かい家族が居るので、楽しいです。前世では、何も無かったので……」
絶対神様はそれは良かったと笑顔で言ったが、直ぐに真剣な表情に変わる
「なるべくお主の生活を邪魔したくはないのじゃが、ひとつ頼まれてくれないか?」
「頼みとはなんですか?」
「あぁ、今お主がおる世界に邪神とよばれる者がおる。それを討伐して欲しい」
邪神? テンプレではあるが……
「脅すような形になるが、いずれはお主の大切な人や、者を脅かす存在となろう。じゃから、早くに討伐して欲しいのだ」
大切なものを奪う
その言葉にアルトは異常に反応し、直ぐに答えた
「引き受けます。大切なものを奪われるのは嫌です」
「そうか、有難いの。どこに潜んでおるかは分からんが、10年以内には封印が解けるじゃろう」
「分かりました」
そしてまた視界が白く包まれた。
現実世界に戻った僕は、言われた通り扉をノックする。
扉が開いたので、僕は外に出てみんなの元へ向かう
「終わったか」
「父様、終わりました。」
「アルト、良かった。結果は帰ってから、夕食時に聞く。それではナルマ神官ありがとう。」
神官は頭を下げ、馬車まで見送ってくれた。
馬車の中では熱で寝込んでいた時に起きたことをみんなが話してくれた。
家に着くと、父様が僕の部屋に来た
「アルト、夕食までまだ6時間程ある。洗礼も終わったことだし、一人で街に行くことを許可するぞ。」
そう、5歳の洗礼が終わるまでは、我が家では1人での街への外出を制限されていたのだ。
「ありがとうございます。嬉しいです」
父様が部屋を出ると、僕は直ぐにお金を持ち部屋後にする。
家を出て5分ほど歩くと少しずつ街が賑やかな場所になって行く。
タレの甘い香りや、子供達の話し声、立ち話をしているおばさん達。
僕は自分の領地がいかに平和かを実感しながら歩く。
そして、僕はひとつの建物の前で足を止める。そう、ギルドだ
ギルドとは犬を探すことからモンスター退治、護衛まで金さえ積めばなんでもこなす言わば万屋のようなものだ。
異世界といったら冒険者ギルドだろうと言うことで一番ここに来たかったのだ。
「はいるか」
ギギィ
少し軋んだ音の扉を開けるとそこにはボードを見る人、受付に並ぶ人、酒場で飲み食いをし話している人など様々な人がいる。
僕は受付に並ぶ。
10分ほど待って僕の順がやって来た。
受付嬢はやはり全員美人で冒険者のやる気を引き立てるためだとかそうで無いとか……
そんな事が前世で読んだラノベに書いてあったような気がする
「僕、今日は依頼かな?」
受付嬢にそう尋ねられる。まぁ、側から見たらただの5歳だからあたりまえなんだろうが
「いえ、違います。新規登録に来ました」
すると後ろから大きな男共3人が列を無視してやって来た。
「おいおい、クソガキが登録なんてはえぇよ。うちに帰ってねんねしてろ! 俺たちが子守唄歌ってやろうか」
「「ギャハハハ」」
後ろの2人が大笑いしている。
周りでは、可哀想に等の哀れみの言葉が呟かれるが、これもまたテンプレであるので、アルト自身、かなりワクワクしているのだ
そんな中、声をかけてみたいのを堪え、事が悪化する事を想定してその男達を無視するのであった。
11
お気に入りに追加
2,217
あなたにおすすめの小説
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します
風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。
そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。
しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。
これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。
※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。
※小説家になろうでも投稿しています。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
貴族の家に転生した俺は、やり過ぎチートで異世界を自由に生きる
フリウス
ファンタジー
幼い頃からファンタジー好きな夢幻才斗(むげんさいと)。
自室でのゲーム中に突然死した才斗だが、才斗大好き女神:レアオルによって、自分が管理している異世界に転生する。
だが、事前に二人で相談して身につけたチートは…一言で言えば普通の神が裸足で逃げ出すような「やり過ぎチート」だった!?
伯爵家の三男に転生した才斗=ウェルガは、今日も気ままに非常識で遊び倒し、剣と魔法の異世界を楽しんでいる…。
アホみたいに異世界転生作品を読んでいたら、自分でも作りたくなって勢いで書いちゃいましたww
ご都合主義やらなにやら色々ありますが、主人公最強物が書きたかったので…興味がある方は是非♪
それと、作者の都合上、かなり更新が不安定になります。あしからず。
ちなみにミスって各話が1100~1500字と短めです。なのでなかなか主人公は大人になれません。
現在、最低でも月1~2月(ふたつき)に1話更新中…
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる