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曇に覆われた真っ白な空とは対象的に、黒塗りの門の奥から少し顔を覗かせる街並みは、賑やかだ。

その街並みに、ゼロは頬を緩めた。
今まで、自分がつくりあげてきた長い時をかけ、変化を繰り返した世界を、直に体験する事が出来るのだ。
心が高まらないわけがない。

いつも神界から見ていた賑わった街が、今自身の目で、何ら変わることなく賑わいを見せていた。

「はい、次!」

騒がしい門前でも届く大きな声に促されて、前に進む。
春の暖かい日、少し肌寒い風が黒塗りの門の長蛇の列に篭った熱を吹き流した。

「冒険者か? ギルドカードの提示を頼む。」

横にいたルーシェが、空中に右手を伸ばすと、そこに黒い亀裂が入り、手を飲み込んでいく。
そして手を抜くと、そこには1枚のカードが握られていた。

ルーシェは、それを門番に渡す。

「え、SSレート冒険者、''死の宣告者''様ですか!」

「その異名は久々ですな。兄ちゃん新人か? この街じゃ誰もその異名で呼ばんですぞ」

門番はカードとルーシェを見比べ、オドオドとしている。
それをゼロはクスクスと笑っている。

「は、はい。今日付で門番に配属されたものです」

「そうですかい、まぁ、覚えとってくださいな」

そう言って門をくぐろうとするルーシェにゼロはついて行く

「ちょ、ちょっと待ってください! そのお連れの方は……?」

それを聞いて止まると、ルーシェは顔だけ門番に向け、手を振りながら言う。

「それは俺の客や。こいつがなんかしたら俺が責任とるから問題ない」

「は、はぁ。ですが規則として……」

新人の門番がそう言いかけると、奥から中年の髭を生やした男が出てくる。

「あぁ、ルーシェさん! それなら構いませんよ。どうぞお通り下さい」

「おう、サンキューな! ほないこか」

こうして、ルーシェのおかげで、無事街に入ることが出来た。

規則として身分を証明できるものが必要だった故、ゼロは、1人で来なくて良かったと心底おもっていた。

街に入ると、活気のある人々の声が聞こえ、活気のある屋台からのこんがりとしたいい匂いが鼻を刺激した。
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