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「ユ、ユリウス様、お願いですから、もう……」
「先ほど疑いを晴らすためなら何でもすると言ったのは嘘だったのか?」
「そんなことは……で、ですがこんな、あっ」

 淡い月明かりに照らされる部屋に、上擦った声が響く。ここは学園に通う生徒の中でも特に地位の高い家柄の子女が居住する邸宅のひとつで、大きな声を出せばすぐに人が駆けつける。わかっていても、悲鳴じみた声を抑えられなかった。長い指を身体の奥に差し入れられるたびに、勝手に喉が震えてしまう。

「……狭い、きつく食い締めて痛いほどだ」
「ぁ、や……っん、あ、っああ……」

 初めて足を踏み入れたユリウス様の寝所。結婚前の女性には到底相応しくない場所で、私は大きなベッドに組み敷かれていた。露出の少ない簡素なドレスを膝まで捲られて、押し下げられた下着は足に引っ掛かっている。
 自分の身に起きていることが信じられなかった。まだ口付けを知らない唇に指を押し当てられて舐めるよう言われたことも、覆いかぶさるユリウス様の眼差しに滲む微かな昂りも、全く現実感がないのに肉体は熱を帯びていく。

 ぴたりと閉じた粘膜は繰り返し指で開かれ、内側の肉襞をじっくり押し広げられたことで潤み始めているものの、初めて異物を受け入れるこわばりは抜けない。それでも、指の腹で下腹部に位置をじわりと刺激されると甘い痺れが泡のように弾けた。

「っ、あ……そ、そこは駄目、あっ、んん」

 膝を擦り寄せて、ひどくはしたない声を洩らす。反応してはいけない、これは身の潔白を確かめるための行為なのだから。理解していても、神経を直接撫でられるような感覚にどう対処すべきかわからなかった。滲む視界に、ユリウス様のどこかいびつな笑みが映る。
 
「そんな顔をして、男を誘ったことなどないと言っても説得力がないな」
「も、申し訳ありませ……ん、ぅ……っ」
「ここも喜んでしゃぶりついている」

 濡れた音を聞かせるように指を浅く出し入れされて、爪先がきつく丸まる。私の意思とは関係なしに蕩けて、媚びが怯えを上回るように指に絡みつく内側が恥ずかしくてたまらなかった。きっとユリウス様も呆れている、こんな状況で快楽を拾えるなんて、純潔以前の問題だと。
 
「あ……」

 ようやく指が引き抜かれて息が詰まる。とろりと溢れるものがドレスを汚さないか不安で慌てて入り口を締めようとすると、不意に粘膜に空気が触れた。指、おそらく左右の親指で、奥を広げられている。ひくひくと震えて蜜を吐く様も、全て晒されている。理解した瞬間、全身の毛穴が開いた。

「み、見ないで……お願いです、どうか……」
「ルイーゼ、賭けをしよう。これから行うことに君が耐えられたら、私は君の潔白を認めて謝罪する」

 耐えられなければ――その先の言葉は上手く聞き取れなかった。息苦しいほど高鳴る鼓動がこめかみを揺さぶって、血の巡る音に支配されて。ただ、淡く笑みを刷いたユリウス様がゆっくり身を屈めて内腿に唇を落とした時、胸を刃で裂かれるようなおそろしい予感が広がった。
 まさか、と腰を引こうとした時にはすでに遅く、本来閉ざされているはずの部位に湿った吐息がかかる。そのまま、泥濘む入り口を熱く柔らかいもので辿られて、私は込み上げる悲鳴をあと少しのところで押さえ込んだ。

「ひ……あ、あああ……ッ」

 触れている。ユリウス様の舌が、あらわになった腿奥に。左右に引っ張られて桃色の道を覗かせる入り口を、舌の先でなぞっている。
 ざらついた表面が柔らかい粘膜を擦り取るように動いて、私は電流を流されたように背すじをしならせた。何が起きているのか全く理解できず、ただぬるぬると舌が動くたびに湧き上がる鮮烈な感覚に首を振る。

「や、あッ……ぅ、ま、待って、んん、そ、そこっ、ぁう……」

 くちゅくちゅと音を立てて中に潜り込んでくる長い舌が、震えながら口を開く肉襞を隙間なく舐める。熱く濡れた表面がぴったりと重なって、蕩けるような摩擦を生み出す。湧き上がる性感が波のように次々と押し寄せて、身体がばらばらになりそうだった。

「ユ、リウス様、あっ、もうだめ、む、無理です……あっ♡ ん、あぁッ」

 拒絶の声が甘く跳ねる。こんなことをして良いはずがないのに、全身の神経が下腹部に集まったように反応してしまう。きつく締まる狭隘な肉筒の奥、普段は意識しない臓器が何かを求めるように収縮して、息を呑んだ。
 
「んん、あ……ッん……ぇ……?」

 想像よりずっと深いところまで潜った舌が、襞を擦りながら出ていく。それさえもどうしようもなく気持ちよくて必死に声を堪えると、入り口を抜けた舌先は、そのまま離れることなくゆっくり上部へと移動した。
 指と舌で散々に内側を蕩かされて、ぴくぴくと震える桃色の秘唇、その継ぎ目に位置する部位に吐息がかかって、うなじが粟立つ。内側を探られた時とはまた違う、より鋭い性感の予感に制止の声を上げかけたのと、唇が触れたのは同時だった。

「あッあああ! だめ、ッあ♡ やだっ、らめ、ぇ♡」

 鼓膜に響くあられもない声が自分のものだとは思えなかった。唇裏の柔らかい粘膜に小さな突起のような器官を包み込まれて、凄まじい快感に身をよじる。いつも清潔に乾いている唇の中は熱くて、触れ合った粘膜ごと溶けてしまいそうな程だった。

「っは、ぁ、ユリ……ス様、は、離して、おねが……です、からぁ♡」

 甘えるような声を恥じながら、私は懸命に赦しを乞うた。途切れることなく与えられる快感の波が今にも全身を飲み込みそうで、恐ろしさと渇望との間で、おかしくなりそうだった。
 お願いします。離して。どうかどうか。お赦しを。思いつく限りの言葉を並べて何度も懇願したのに、ユリウス様は聞こえていないように突起の先端に舌先を滑らせる。根本からしごくように柔く力を込めると、ぷっくり膨らんだ全体を不意に吸い上げた。

「ひッ……ぅあ、あッ、んん♡ や、何か来ちゃ……あ、ああああッ♡」

 瞬間、目の前が真っ白になって、私はわけもわからず背を弓なりに反らした。限界まで高められた肉体が一気に弛緩して、熱した蜜めいた重たい快感が全身を支配する。
 どこまでも沈みこむような未知の感覚に付いていけず、呆然と胸を上下させていると、滲んでぼやける視界に淡い影が差した。どこか酷薄な熱を浮かべて私を見下ろす美しい瞳。銀の睫毛をそっと伏せて、ユリウス様は濡れそぼった指先で私の唇をなぞった。

「……涎を垂らすな、みっともない」
「っう……も……しわけ……ません……」
「今の君の姿を見て、清い身だと信じる人間がいると思うか?」

 蔑むような眼差しに、一気に心臓が縮み上がる。ひゅうひゅうと不規則な息を吐いて、なんとか謝罪の言葉を重ねようとした唇は、けれど膝裏に押し当てられた手に気付いて静止した。足を目一杯開かれて、再びあらわにされた奥に熱く硬い質量が押し当てられる。それが何を意味しているかおぼろげに理解した時、本当に心臓が呼吸が止まるかと思った。

「ユリウス、様……な、なにを……」
「君が賭けに敗れた以上、他に確かめる術がない」

 受精防止の魔法は施しているだろうと耳元で確認されて、血が凍りつきそうだった。有りえない、未婚の男女が。まだ正式な婚約もしていなければ、魔法使いとして一人前になるための学問も修めていないのに。
 姦淫と受精を防ぐ魔法は、貴族の娘なら誰もが施される。その内姦淫防止の魔法は、指で探られる際に命じられて解呪してしまった。それだけでも罪悪感でいっぱいになったのに、まさか本当に、こんなことが。

「っ、やめ、止めてください、お気持ちを害したことは、あ、謝りますから……っ」
「他の男は許しても、私を受け入れるつもりはないと?」
「違います、ほ、本当に違うんですっ、わた、私は、ユリウス様だけの……」

 目前に迫るおそろしい予感をなんとか避けようと混乱した頭で口走ると、ユリウス様はこれまで一度も見せたことのない、どこか陶然とした笑みを浮かべた。半ば硬直した膝に唇を落として、満足げに口にする。そう、君は私だけのものだと――同時に、いっそう熱を漲らせた先端が、有無を言わせず内側に埋め込まれていった。
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