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「あっ……ああ、ぁ……ッ」

 押し潰されるような声を上げて、アディルはびくびくと四肢を震わせた。熱く滾った、凶悪ささえ感じる性器が、狭い粘膜を押し拡げて下腹部を満たしていく。くり返し指で慣らされ、潤滑油を足されたそこは蕩けるように濡れていたため挿入自体はスムーズだったが、経験のない圧迫感で全身が軋むようだった。

「先生、ゆっくり息を吐いてください」
「無、無理、ぃ……っ」
「戦場も経験している魔法使いが何を言っているんですか」

 アディルを苛んでいる張本人とも思えない言葉とともに、シェアトが肩口に触れる。そのまま、こわばりを解すように指を這わされると徐々に血が巡る気配がして、アディルは切れ切れに息を吐いた。子供に対するような優しい手付きはこれまで経験したことのないもので、内心ひどく戸惑いながら、深い呼吸をくり返す。

「は……ぁ、あ……」

 時間をかけて胸を上下させるたびに、徐々に息苦しさが和らいでいく。やがて腹部に杭を打たれているような違和感が緩やかに引いて、ようやく喉から安堵の息が洩れた。四肢を弛緩させ、厚手のローブに身体を預ける。腕に添えられたシェアトの手のぬくもりを感じながら、無意識に下腹部に力を入れた、瞬間。

 最奥から波のように甘い痺れが広がった。

「ッ、え……? な、なに……っ」

 突然のことに目を見開き、数秒後、痛みが弱まったことで本来の感覚が戻ったのだと思い至る。散々指で弄られた内側は自ら潤んで、包み込んだ質量を柔く締めつける。僅かに身じろぎするだけで粘膜同士が擦れ合って、背すじに微弱な電流が走った。

「んっ、あ、や、やだ……ぁッ」

 自分の意思とは関係なく喜び、絡みつく奥に、アディルは耳まで赤くなった。苦痛に耐えるのとは根本的に異なる、自らの浅ましさを突きつけられるような行為に全身が高い熱を帯びていく。咄嗟に横を向いて紅潮した顔を隠そうとしたが、すぐに長い指に顎を掴まれた。

「随分と顔が赤いですが、大丈夫ですか?」

 淡々とした声音で訊ねながら、シェアトが軽く腰を揺する。それだけで強烈な快感が身体の奥で弾けて、アディルは高く無防備な声を上げた。顎を固定され、真正面から顔を注視されながら、誤魔化しようのないほど濡れそぼった奥を間断なく突き上げられる。

「ッあ、だ、だめ、そこ……は、あっ」

 先端で引っ掛けるように中を擦られたかと思えば、驚くほど深いところを掻き回される。シェアトの動きは緩慢で、アディルの反応を試しているのは明らかなのに、蕩けきったそこはどうしようもなく喜び、もっと欲しいと訴えるように脈打つ性器を締めつける。

「んっ……ぁ、ああ、やめ……ぁ」
「ここは嫌がっていないようですよ、弟子のものだろうが喜んで咥えている」

 嘲るというより事実の指摘に近いニュアンスで囁いたシェアトが唐突に腰の動きを止め、数拍後、不意に強く奥を抉る。

「ぇ、あ……、っひ、あっ!」

 何が起きたのか理解できなかった。全身が雷に打たれたようにびりびりと痺れて、アディルは背すじを弓なりにしならせた。これまで身体の中で揺蕩っていた波が急激に大きくなって、爪先から頭頂をひと息に呑み込む。
 強烈な衝撃が全身を駆け抜けて、わけがわからず目を瞬かせると、また深いところを突かれて必死に首を振った。

「だっ、だめっ、今なんか、ぁ……おかしくて……ッ」
「あなたがこういったことに適した身体をしているだけです」

 ずるりと引き抜かれて、すぐに潜り込んでくる硬い熱塊。浅い部分を段差で抉られて、瞼の裏で星が散った。
 先ほど散ったはずの波がまた押し寄せて、うまく息ができない。下腹が裂けそうなほど深く犯されて、苦しいはずなのに、限界まで拡げられた粘膜は歓迎するように性器に絡みついた。

「あっ……ひ、ぁ……やっ、あ……っ♡」
「……こんな男を喜ばせる穴で、よく今日まで処女でいられましたね。自分で触ったこともなかったんですか?」

 こうやって、と受け入れた箇所をなぞられて、アディルはびくりと身を震わせた。普段意識しない性器の上部、こわばり程度の小さな膨らみに触れられた瞬間、内側とは異なる鋭い性感が生まれて奥が締まる。

「んっ……ぁ、そこは、だめ……っ」
「良いみたいですが」
「ちが、ぁ……、っ、んんッ♡」
「ここも、一番奥まで欲しがっている」

 囁くような声と同時に最奥の狭まったところを押し上げられると、うなじの毛穴がぶわ、と開いた。しとどに濡れて、媚びるように壁をうねらせる熱い粘膜、その先にある臓器が、突き上げられる度にひくつきながら先端にしゃぶりついているのがわかる。持ち主の意思を裏切って、より濃密な瞬間を求めている。

「は、ぁ……♡ あ、ぅん……ぁ、あッ」
「先生、まだ扉が開いていないのがわかりますか? 交尾というのは言葉通り種を付ける必要があるようですね」
「え……ぇ……?」
「つまり、我々は利害が一致しているということです」

 独り言のように呟いて、シェアトがアディルの腕を引いた。痛いほど足を開いた腰が持ち上げられて、受け入れる角度が微妙に変化する。より深く、半ば串刺しのような体勢で奥を突かれて、アディルは悲鳴に近い涙声を上げた。

「あっ……ん、んんッ!ぁ、だめ、だめ深い、ぃ……ッ」

 身体が言うことを聞かない。受け入れた部位も、内側で収縮する粘膜も、桃色の壁のひとつひとつや最奥の臓器さえも、すべて熱いぬかるみのように溶けてしまう。抉られるたび、突かれるたびに何度も波に攫われそうになって、アディルはほとんど無意識にシェアトに縋りついた。夜明け前の泉のように緑の瞳を潤ませて、切羽詰まった声で名前を呼ぶ。

「シェ、アト……っ、な、なか……、へん……ッ、ぁあ♡ っ、ん♡」
「……先生」

 アディルの手を取ったシェアトが、そのまま指の関節に唇を落とす。すでに散々粘膜を重ね合わせているというのに唇が触れたのは初めてで、奇妙な気恥ずかしさがアディルを掠めたが、すぐに奥を穿たれて喉を反らした。ねだるように蕩けた子宮口をごつごつと小突かれて、壁を抜かれるのではと恐怖さえ覚える。

「あっぁ、あ……っ、んん、あッ♡ こんな、奥にっ……ああっ、は、ぁッ♡」
「先生、ここに注がれる感覚をよく覚えておいてくださいね」
 
 なにをして、なにが起きて、どうなったか、頭と身体に刻めば忘れませんから。

 それは魔法を学び始めた幼いシェアトによくアディルがよく言って聞かせた言葉で、今さらながら弟子と交わる罪悪感が噴き上げたが、すでに芯まで支配された肉体で抗うことは不可能だった。

 シェアトが微かに獣めいた息を洩らして、腰を震わせる。これ以上ないほど深く突き立てられた質量にうねる粘膜が吸いつき、甘えるようにぎゅうっと締めつけた瞬間、膨らんだ先端がびくんと弾けた。子宮をぴったりと塞いだまま、一滴も逃さないように熱い精を注がれて、アディルはきゅうっと爪先を丸めた。

「あ、ぁ、んぅ……っ♡ ぁ……は、ぁ……♡」

 全身から力が抜けて、視界が霞む。だらりとした四肢を支えたシェアトが耳元で何か言ったような気がしたが、聞き取れなかった。
 ただ、肉体の最も深いところを熱いもので満たされる疲弊と充足が揺蕩うのを感じながら、アディルはゆっくり意識を手放した。
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