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「……あ…………」

 喉が震えた。自分ですら見たことのない、本来人目に晒すはずのない部位を、二本の指で剥き出しにされている。収縮するたびにとろとろと蜜を垂らす狭い穴も、濡れ光る粘膜も、全て見られているのかと思うと今すぐ逃げ出してしまいたかった。

「こちらに私が入りますが、ご安心を。純潔でなくなった聖女が力を失うという話は、人間が作り出した迷信に過ぎませんので」

 身を屈めたヴェルムが、検分するような細やかな動きで秘部をなぞる。触れるか触れないかの、もどかしささえ感じる指遣い。やがて指の腹を濡れた入り口に押し当てられると、全身の毛穴が一気に開いた。

「ひ……ッあ、だ、だめ……!」

 それは神経に直接触れられるような鮮烈な感覚だった。紋様の影響か明らかに過敏になっている秘部は下から上へと割れ目を辿られるだけでいっそう濡れそぼり、とろりと溢れたものが内腿を濡らす。自分が自分でないような反応に心がついていかず首を左右に振ると、ヴェルムが吐息だけで笑う気配がした。

「この行為を受け入れると決めたのは貴方ご自身です、言葉を違えてはいけませんよ」

 羽根で撫でるような柔らかい声は酷薄ではあるものの事実で、胸が引き絞られるような痛みを訴える。
 ルクスはきつく眉間を寄せた。時間にすれば数秒の、ルクスにとっては途方もなく長い沈黙のあと、小さく頷く。それが合図だったように。骨ばった指先がぬるりと潜り込んできた。

「あ――――ッん、あ、あああっ、は、あッ」

 ひときわ甘やかな声が喉を抜けると同時に、これまで感じたことのない性感が急激に張りつめた。それが何を示すのか確かめるより先に蕩けた内壁を指の腹でざらりと擦られて、煽られたように魔力が大きくうねる。

「ぁ、な……なにかっ、ふあ、ぁ、あ……っ」

 軽く折り曲げられた指をきつく締めつけて、ルクスはびくびくと背すじを痙攣させた。自分の内側で起きたことが理解できない。泡のように膨らんだ衝動が唐突に弾けて、次の瞬間、蕩けた蜜に似た痺れが指先まで染みわたっていく。力が入らず、四肢をくたりとさせて息を吐くと、先ほどより赤みを帯びた紋様が視界の端に映った。

「軽く気をやったようですね」
「気を……? な、なに……っひ、あ」
「貴方が性的絶頂に達したという意味です、今は徴によって神経が鋭敏になっておりますので」

 指は体内から出ていかず、より深い部位まで入ってくる。粘膜の襞をひとつずつ撫でられる感覚までくっきりと感じられて、制止の声を上げる間もなく奥が収縮した。

「あ、ああ……っ、ん、ぅあ……ぁああっ♡」
「頻繁に上り詰めるのは少々苦痛でしょうが、こうすることでルクス様の本来の力を引き出すことができます」

 どうぞ肩の力を抜いて楽にして下さい。気遣うような口振りは、しかしどこか嬲る色を帯びて響いた。ひときわ敏感な下腹部裏の肉壁に指の腹が触れて、それだけでも入り口が締まるのに、粘膜を削るようにぐりぐりとされて舌が浮く。

「っ、んうぅぅ……ッ♡」

 上手く唇を閉じられない。ぬちゅぬちゅと濡れた音を立てる内壁が甘えるようにひくついて、また達したのだと知った。押し寄せる性感の波は引ききる前に全身を呑み込んで、絶頂から逃れられない。
 誰かに触れられるなど想像もしていなかった秘部は指を根元まで咥え込み、柔らかくしゃぶりつくたびに交わるための雌の器官へと変化していく。ずっと熱い泥濘に浸かっているような感覚のなかで、内側を掻き回される音と追い詰める指の冷えた手触りだけが鮮明だった。
 気持ちいい。もっとほしい。決してあってはならない欲が湧き上がり、清廉であろうとする魂に染み込んでいく。

「……は、ッあ、ああ……ふあ、あ♡」

 最早何度目かも分からない絶頂を迎えて膝を震わせると、二本の指がずるりと出ていった。引き止めるように絡みつく粘膜から逃れて、なおも吸いつく入り口を左右に広げる。熱い内側に触れる空気が、奥深くまで晒されていることを物語っている。

「本当はもっと時間をかけて貴方を味わいたいところですが、聖女を独占するわけにもいきませんので、また次の機会に楽しみましょう」
「……つ、ぎ……?」

 信じられない言葉に目を見開くルクスに、ヴェルムは事もなげに続けた。

「ああ、お伝えしていませんでしたか。この交わりは貴方という泉に石を投げ込むようなもの。魔力の波が収まれば、再び力を注ぐ必要があります」

 喉元を掴まれたような衝撃だった。どれほど受け入れがたい行為でも、一度きりで終わるのならば耐えられる。乗り越えるべき試練だと言い聞かせることができる。
 
 けれど回数を重ねれば、何かが変わってしまうかもしれない。取り返しがつかないことが起きるかもしれない。今ですら、長い指のもたらす絶頂に奥の奥まで潤ませてより深い性感を求めているというのに。

「ぁ……ま、まって、くださ……」

 拒んではいけない。理解していても、背すじを這い上がる本能的な怯えに声が出る。力の入らない四肢を引きずるようにして後退しようとするルクスを易々と押さえ込んで、ヴェルムが穏やかに微笑んだ。

「ルクス様が聖女に相応しい御方なら、何度身体を明け渡そうとも魂まで蝕まれることはないでしょう」

 もしも見込み違いだっとしても、私が責任を持って飼育して差し上げますので。

 揶揄とも本気ともつかない言葉とともに、蕩けきった穴を硬い質量が押し上げる。耐えがたい恐怖と、同じだけの切望が押し寄せて息を呑んだ瞬間、震える粘膜を残らず貫かれた。
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