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人類の存続
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しおりを挟むそれから8日目の朝、楓の祈りは裏切られる事となった。
ガイバーオーガが進軍してきたのだ。
「数は!!」
「10体ですじゃ!!」
「もう直ぐ100km地点に到達します!」
「どうしますの?」
「各国のギルドに一般人の警護を依頼!森沿いの村、シルバニアの民の避難を指示して下さい!俺は先に向かいます!」
「俺も行く!」
『我とルナも行こう。』
「クロードだけ行かせられないわぁ。」
「クロード!!」
「楓?!」
楓はクロードの胸に飛び込んだ。
「楓、行ってきます。」
「クロード!!お願いよ!無事に…絶対無事に帰ってきて!!」
グズグズと泣き出す楓を強く抱き締めた。
「約束しますよ。俺の帰りを待っていて下さい。じきに母さんが迎えに来ますから。」
クロードは楓の額にキスを落とすと帝達を連れて消えた。
「クロード、どうか無事で…」
楓は真っ青な快晴の空を見上げた。
クロード達はガイバーオーガの居る地点から30km距離を置いた場所に転移した。
「闇帝、様子は?」
「あの地点に留まる様です。拠点の様な物を作っています!」
「何?!拠点じゃと?クロード様拠点を構えられたら厄介じゃ、攻めるか?!」
確かに拠点が完成してしまう前に倒しておきたいですね。
「試したい事があります。帝達はガイバーオーガから1km距離を取り周りに結界を張り森を守って下さい!」
「「「「「了解!!」」」」」
クロードは浮遊魔法で高く飛び上がりガイバーオーガの所へ向かった。
上空から様子を見るとやはり拠点を作っている様だ。
丸太を使い何かの骨組みを作っていた。
「植物魔法…ウッド、クラッシュ!」
植物魔法でドンドン木を出すと同時に木を粉になるまで砕いていく。
ガイバーオーガ達に見えない程小さな粒になった木はガイバーオーガ達の回りを包み込む。
「炎魔法…炎の怒槌!」
炎が雷の様になりガイバーオーガ達に降り注ぐと大爆発が起きた。
粉状になった気に引火したのだ。
ガイバーオーガ達は慌てふためき、視界が悪くぶつかり合ったりしている者もいる。
「古代魔法…煉獄の扉…五連!!」
赤黒い扉がゴォォォン…ゴォォォン…ゴォォォンと次々に地面から出てくる。
「解錠!古代魔法…司法の鎖!!」
ガイバーオーガ達の足元から銀色に輝く鎖がジャラジャラと舞いガイバーオーガ達を拘束していく。
「チッ!二体逃しました。開扉!!間に合え!!」
逃した二体が他のガイバーオーガを助けようとしている急がなくては!
「古代風魔法…風神の憤怒!!」
凄まじい風か吹き荒れる。
「からの、司法の鎖…解!」
急に鎖が外れた三体のガイバーオーガは煉獄の扉に吸い込まれる様に消えて行った。
「施錠…禁!!」
煉獄の扉に鎖が巻き付きまた轟音を立てながら地面に消えた。
クロードは他の二つの煉獄の扉を消すと次の作戦を考えていた。
逃したガイバーオーガはクロードを見上げ咆哮を上げていた。
クロードは三体倒した事で少しの油断が生じてしまった。
ほんの一瞬…瞬き程度だ。
それがクロードの命取りになった。
扉を消し砂煙が消えかけてきた時、クロードがガイバーオーガを見た時には目の前に巨大な斧が飛んで来ていた。
寸での所で避けたが斧の切っ先がクロードの横腹を裂いた。
「グッ!!つぅ…」
『クロード!!』
結界を手伝っていたラウが落ちるクロードを回収し、ルナが帝達に撤収を伝えた。
「クロード!クロードォ!大丈夫?!今止血するわ!!」
ルナが治癒魔法を発動するが、クロードがこんな状態だ。クロードの血は全く止まらなかった。
「ラウ!!早くマキナの所に!!クロードの血が止まらないの!!」
ルナは泣きだし、クロードの流す血はラウの真っ白な毛を赤く染めて行った。
『分かった!!』
ラウは急降下し、マキナを拾い背中に乗せた。
「マキナ!!クロードを助けて!血が止まらないの!!私とラウじゃクロードがこんなだから本来の力が出せないのよ!!」
「分かりました!!」
マキナはクロードの傷を見て目を反らした。
骨は砕かれ、内臓が見えている。
マキナは必死に治癒魔法をかけた、しかしマキナの力でも中々止血出来ないでいた。
その時ラウがガクッと少し傾いた。
「きゃぁ!」
バランスを崩すマキナをルナが何とか支えた。
「ラウ!合流地点まで頑張って!!もう少しよ!!」
クロードの影響がラウにも現れ始めた。
『大丈夫だ。』
「ダメです!!止まりません!!このままでは…」
「お願いよマキナ!!何とかして!!」
マキナは俯くと涙が流れた。
その時クロードが何か呟いた。
「えっ?何?クロード、なんて言ったの?!」
ルナが必死に聞くがクロードは目を瞑ったままだ。
「あっ!」
マキナが声を上げた。
クロードの裂けた傷を植物の蔓が縫い始めた。
クロードは苦悶の表情をしているが、最後の力で魔法を使ったらしい。
蔓が傷を塞ぎ血も止まった。
クロードの表情も幾分か穏やかになっていた。
「良かった…これできっと大丈夫…ってきぁぁぁぁあ!!」
ラウも力尽き落ちて行く、マキナは何とかクロードを掴み目を瞑った。
「闇魔法…黒煙!!」
「水魔法…水の揺籃!!」
ラウとルナを闇帝の黒い煙がキャッチし、水帝の水の揺籃がマキナとクロードをキャッチした。
「危なかったのぅ、無事か?!」
「クロードは?!」
ラファイが血相を変えて走って来る。
「また怪我したの?!もう少し僕達を頼ってくれても良いのに!」
風帝はクロードを見て唇を尖らせた。
「おいマキナ!クロードは大丈夫なのか?!」
「はい、クロード様はご自分で傷を塞いでくれたので何とかなりました。やっぱり私の治癒魔法では止血すら出来なかった…」
マキナの目からはとめどなく涙が流れる。
「グズッ…クロード様、骨が…ヒック骨が砕けてズビッ!内臓が見えていたんですグズッ…」
「これからどうするんじゃ?」
「クロードが動けねえ以上俺達が殺るしかねえだろ。折角クロードが三体も殺ってくれたんだ。二体でも国に近付けば脅威だ。」
「勝算はあるの?クロード様ならだしも僕達には二体でも死に物狂いで行って勝てるかどうかじゃないの?」
「だったらどうすんだよ?!俺達はクロードに全て背負わせちまってる、本当なら俺達も一緒に背負わなきゃならねえもんをな!」
「そのら通りじゃな、儂らはクロード様の強さに甘え過ぎて居る。死線を潜らにゃ強くなるもんも強くなりゃせん。特に儂らの様なもんはな?」
「私!やります!!」
マキナが涙を拭いながら立ち上がった。
「マキナ良く言ったわ!女は度胸よ!!」
水帝リナリアも何やら火が付いた様だ。
「でもクロード様をこのままには出来ませんよ?早く治療を施さないと。」
「風…」
「僕は残るよ!絶対に前みたいにはならない、必ず倒してやる!」
「すまんが闇帝、クロード様をエデンに運んでくれるか?お前さんが戻るまで儂らで何とかしつおく、頼めるか?」
「分かりました。直ぐに僕も戻ります!闇魔法…黒煙!」
黒い煙がクロードとラウとルナを包み浮かせた。
「では!行ってきます!!」
「クロードを頼んだ!」
闇帝カイテルを見送ると五人は並んでガイバーオーガが居るが方向を見た。
「さて、行くかのぅ。」
「最後かもしれませんわ、私は貴方達と帝になれて誇りに思うわ!」
「わ、私もです!!」
「縁起でもねえ事言うんじゃねえよ…まぁ、俺も同じ帝がお前らで良かったよ。」
ラファイは笑った。
「僕は死ぬつもり無いからね!遺言みたいな事は言わないよ!」
「そうかよ、じゃあ行くぞ!!」
「「「「了解!!」」」」
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