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惑星エルリス

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執務室に戻ると近衛兵からの報告書に目を通した。
それをラファイに渡す。

「懲りない女だな?どうするんだ?」

「父親に引き取って貰いますよ。離縁したとは言え、元妻なのです。総帝の職権乱用してでも押し付けます。」
ラファイは苦笑いした。
二人は牢に向かった、見張りの近衛兵は二人を確認すると深々と頭を下げた。

「すみませんでした、迷惑を掛けましたね。」

「ととととんでもありません!恐悦至極に存じます!!」
滅多に総帝否、帝にすら中々会わない近衛兵はしどろもどろになりながらもやっと返事をした。

「あの人は私が預かります。」

「承知致しました!!」
近衛兵は敬礼する。
クロードとラファイは女の居る牢に向かう階段を降りていった。
だんだん女の喚く声が大きくなってくる。

「まだ喚いてやがるのか?」

「その様ですね?」
牢の前まで来るとクロードを確認した女は安心した様にクロード達に寄ってきた。

「クロード!やっと迎えに来てくれたのね?良かったわ、誰も私がクロードの母親だと信じてくれないのですもの!」
はぁ…と溜息を吐く女を見てラファイほ嫌悪感を隠そうともせず、クロードは眉を顰めた。

「ええ、迎えに来ました。しかし、貴女を村に強制送還する為に来たのですよ?」

「えっ?どうして?」

「私は総帝である前にこの国の公爵家の嫡男、クロード=ルイ=オズワルドなのですよ?私は貴女の息子では無いのです。」

「違うわ!!貴方は私がお腹を痛めて産んだ私の息子よ!!」

「おい!そんなに言い張るなら法的措置を取れよ?法的にもクロードは正式にオズワルド公爵家に養子に入っている。公爵家相手に一般庶民が勝てると思うならそうするんだな?」
そんなの関係ないわ!!と叫ぶ女をクロードは植物魔法で黙らせると村に転移し、元父親に女を押し付けた。

「クロード…否、総帝様。私は妻とは離縁したのです。」

「だからなんだと言うのですか?貴女の元妻が王都まで押し掛け、私の母親だと喚き散らしたのです。監禁なりなんなり出来るでしょう?」

「しかし…」

「貴女の元妻にも説明しましたが、私はオズワルド公爵家に養子に入っています。また何かあれば総帝と公爵家を敵に回すと思って頂きたい。」

「わ、分かりました。二度と妄言を吐かないように言い聞かせます。」
顔色の悪い元父親とまだ喚いている元母親を残してクロードとラファイはエデンへと戻った。

「はぁ…疲れましたね。ラファイもありがとうございました。ラファイも休んで下さい。」

「あぁ、お前もちゃんと休めよ?」

「はい、分かりました。」


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


その頃、オズワルド邸ではメイド達が歓喜の悲鳴を上げていた。
クロードの妹だけあってかなりの美少女なクラディスを前にメイド達はクラディスをこれでもかと着飾っていた。
何も見ず、何も話さないクラディスだがメイド達は一生懸命話し掛けながら絹の様な髪を弄っていた。

ーコンコン…

そこへオズワルド夫妻が様子を見に来た。

「まぁぁぁぁあ!!可愛い!!」

「これは…外には出せんな。」
ナディアはクラディスの可愛らしさに悲鳴をあげ、ウィリアムは早くもクラディスに変な虫が付かないか心配を始めた。

「ナディア…俺はクラディスを誰にも嫁にやりたくないぞ?」

「そんな事考えるのはまだ早いわよ!私だってクロードに嫁なんて考えたくもないわ!」
ナディアもウィリアムもただの親バカである。
密かに筆頭執事のチャールズもクロードやクラディスの事は親の目線で見ていた。
詰まるところ、クロードの嫁もクラディスの夫になる者もナディア、ウィリアム、チャールズのお眼鏡に叶わなければならないのだ。
中々の強敵である。
そんな彼等を見ているメイド長のメアリーはクロードとクラディスの将来が少し心配なのであった。

「チャールズ!!明日は仕立て屋を呼ぶんだ!!クラディスのドレスが足りない!」

「畏まりました、旦那様。」

「チャールズ!!クラディスの部屋の手配は?」

「もう手配済みでこざいます。一週間程で内装は出来ますでしょう。後は家具などの手配と装飾品の手配だけでございます。」

「分かった。」

「家具や小物は私達が選ぶわ。その様にして頂戴。」

「畏まりました、奥様。」
後日、クラディスに会いに来たクロードがクラディスの部屋に引いたのは言うまでもないだろう。
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