良くある異世界で幼女は今日も頑張る!

凪 冬夜

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ウェールズ王国

違和感

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「久しぶりだね、サクラ。今日は大いに料理長に腕を振るって貰ったからね、沢山食べなさい。」

「はい、陛下ありがとうございます。」
この日、久しぶりに国王と晩餐を共にした。
まともな食事を見るのはとても久しぶりな気がした。
最近では硬いパンすら懐かしい、今はカビの生えた物になったから。

「陛下なんて寂しいな、ウィルだ。」

「はい、ウィル様。」
私はもそもそと食事を始めたが直ぐに吐いてしまった。

「うっ!!」

「サクラ!!」

「陛下、私共が!!直ぐに部屋にてお休みに…。」

「あぁ、頼む。カイン直ぐに医者を!」

「畏まりました!!」
バタバタと慌ただしくなる広間を出る時に国王と目が合った。

ーごめんなさい、役立たずで…。

それから侍女に部屋に運ばれた私はまた叱責されていた。
この生活はいつまで続くのかな?



「カイン、急げ!!」

「はい!」
サクラが去って直ぐに国王ウィルもサクラの部屋に向かっていた。

ーガシャンッ!!

「何だ?」

「この役立たず!!久しぶりの陛下との晩餐で吐くなんて!!早くアクセサリーをねだれといったじゃない!!」
侍女のヒステリーな声が聞こえてカインと目配せした国王ウィルはサクラの部屋の扉を勢い良く開けた。

「なっ!!何をしている!!」
そこには鞭を持った侍女が今にもサクラに鞭を振り下ろそうとしていた。

「「「へ、陛下!」」」
床にはぐったりしたサクラが横たわっていた。

「サクラ!!大丈夫か!!サクラ!!」

「お前達、何方にこんな仕打ちをしたか分かっているのか!!」

「「「ひぃ!」」」

「カイン!医者を入れろ!」

「はい!」
サクラを寝かせると直ぐに医者が診察を始めた。

「お前達は1歩も動いてはなりません。」
カインは侍女達に冷たく言い放つとベッドへ向かった。
震える侍女達は真っ青だ。
医者は一通り見ると溜息を吐いた。

「国王陛下、失礼を承知で申し上げます。」

「何だ?サクラは大丈夫なのか?!」

「大丈夫か大丈夫でないかと言われたら大丈夫ではありません。酷い有様です。」

「なんだと!!」

「これを見ても大丈夫と言えますか?」
宮廷魔法治癒士はサクラの袖を捲って見せた。

「これは…。」
サクラの腕はとても細く、骨と皮だけではないかと思える程小枝の様だった。

「栄養不足、それに…見えない所に複数の鞭の跡、古いものから最近のものまであらります。これはもう虐待です。恐れ多くも落とし人様を虐待するなど言語道断でございます。」
治癒士は侍女達を睨んだ。

「ならば…ここ最近の魔物の出現も…。」
ウィルは頭を抱えた。
落とし人であるサクラが健やかで幸せなら平和が続き、サクラに何かあれば不幸が続く。
何故気付いてやれなかった!
サクラの部屋を見渡せば前と比べて明らかに物が少なくなっている事に気付いた。

「陛下!」
カインが開けたクローゼットにはドレス一つ無くガランとしていた。
以前は王国で用意したサクラ用のドレスでいっぱいだった筈だ。

「これは…どういう事だ!!お前達は何をしてくれた!!」

「国王陛下!」
そこにルイスも飛び込んできた。
事の次第を話すとルイスは侍女達に剣を向けた。

「お前達…命が惜しくないのか!!」

「申し訳ありません!!」

「お許しください!!」

「私たちは侍女長様に言われた事を…私達は侍女長様に逆らえません!!」

「貴様ら…!!」

「ルイス、侍女長を呼びこヤツらと共に私の執務室に…サクラを休ませてあげよう。」
抜刀したままのルイスは苦虫を噛んだ顔をして剣を納めた。

「分かりました。」

「では、カイン準備を。」

「はっ!」
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