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第一章 片腕の少女
第三話 川沿いの脅威
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佐藤の説明によると、廃工場は1ヶ月前からゾンビの襲撃が増えていた。多摩川の下流で何かが起こっていて、ゾンビが川沿いを遡ってくるらしい。数は日に日に増え、昨日は50体以上が工場の周囲を徘徊していた。生存者グループは防衛線を張ってるが、弾薬と食料が底をつきつつある。
「下流に何かあるのか?」俺が聞くと、佐藤が首を振る。
「分からん。偵察に行った奴らは戻ってこなかった。ただ、ゾンビの中に妙なのが混じってる。動きが速いんだ。」
「速いゾンビ…」俺は眉を寄せる。特殊作戦群時代、生物兵器の実験データを目にしたことがある。感染者が変異する可能性はゼロじゃない。もしそれが現実なら、厄介な事態だ。
「おじさん、私も戦うよ。」詩織が突然言う。佐藤と美奈子が驚いた顔で彼女を見る。
「お前はまだ――」俺が制止しようとすると、彼女が遮る。
「父ちゃんみたいに守りたい。私だってできるよ。」その目に迷いはなかった。
美奈子が笑い出す。「気に入ったよ、その子。いいだろう。お前ら、今日からここで戦え。物資は分ける。だが、裏切ったら容赦しないからな。」
俺は頷く。詩織が俺の隣で金属棒を握り直す。この工場が新たな戦場になる。だが、詩織が俺の隣にいる限り、俺は戦い続ける。あいつの娘を守るため、そして彼女が自分で立つ日まで。
その夜
夜が更け、工場の見張り台に俺と詩織が立つ。川の向こうでゾンビの影が蠢く。数は多い。俺は佐藤から借りた古い猟銃を手に持つ。弾は20発。詩織は金属棒を手に、俺の左側に立つ。
「おじさん、父ちゃんのこと、教えてよ。」詩織が静かに言う。
「浩二か…あいつはお前の自慢の父親だよ。市民を守るためなら命を張った。俺には真似できねえ。」俺は淡々と話し、視線を川に固定する。
「私もそうなりたい。」詩織が呟く。
「お前はもうそうなってるよ。」俺はそう答え、彼女の頭を軽く叩く。彼女が笑う。その笑顔が、初めて温かく見えた。
川の向こうでゾンビが吼える。戦いが始まる。俺たちは銃と棒を手に、夜の闇に立ち向かう。
夜の見張り台で、俺と詩織は川の向こうを睨む。ゾンビの遠吠えが風に乗り、時折水面に反射する月光が不気味に揺れる。猟銃の冷たい感触が手に馴染むが、弾が20発しかない現実が頭を離れない。詩織は金属棒を握り、俺の左側で静かに息を整えている。彼女の横顔を見ると、浩二の面影が浮かぶ。だが、今夜はそれ以上に、彼女自身の過去が気になった。
「おじさん、父ちゃんのこと、教えてよ。」彼女が言った言葉がまだ耳に残っている。浩二の話をするなら、詩織のことも知っておくべきだ。あいつの娘としてだけでなく、彼女自身として。
「詩織、お前が小さい頃のこと、覚えてるか?」俺は視線を川に固定したまま、静かに尋ねる。彼女が一瞬動きを止め、金属棒を握る手に力がこもる。
「…少しだけ。父ちゃんとお母さんが生きてた頃のこと?」彼女の声は小さく、どこか遠くを見るようだった。
「ああ。浩二から聞いてた。お前が5歳の時、あいつとお前でよく公園に行ってたって。」俺は記憶を辿る。特殊作戦群の任務で帰国した時、浩二が嬉しそうに話してくれたことがあった。「お前がブランコに乗りながら笑うのを見て、あいつは『こいつの未来を守るためなら何でもする』って言ってた。」
詩織が小さく笑う。「覚えてるよ。父ちゃん、ブランコ押すの強すぎて、私、落ちそうになったんだから。でも、楽しかった。お母さんが『危ないよ!』って怒ってたけど、笑ってた。」
その記憶が彼女の中でどれだけ鮮明かは分からないが、声に温かさが混じる。だが、次の瞬間、彼女の表情が曇る。
「お母さんが死んだのはその1年後。病気だった。父ちゃん、私には隠してたけど、夜に泣いてるの聞いてたよ。私、なんにもできなかった。」詩織の声が僅かに震える。俺は黙って聞く。彼女が続ける。
「それから、父ちゃんは私を連れて色んなところに行った。仕事が忙しくても、時間作ってくれた。キャンプとか、海とか…。ゾンビが出る前、最後に一緒に行ったのは山だった。父ちゃんが『ここなら安全だ』って言ってたけど、結局、どこに行ってもゾンビが来た。」
俺は頷く。浩二が家族を守ろうとした努力は知ってる。あいつは任務の合間を縫って、詩織と過ごす時間を確保してた。特殊作戦群の俺たちには珍しい家庭的な一面だった。だが、ゾンビの発生で全てが変わった。
「お前が腕を失くした日のこと、覚えてるか?」俺は慎重に聞く。あの日のことは俺にとっても忘れられない。
詩織が目を伏せる。「うん。あの倉庫で、父ちゃんが死んだ日から1ヶ月くらい経ってたよね。私、おじさんと一緒に逃げてた。物資を探してた時、ゾンビに囲まれた。おじさんが戦ってる間に、私、隠れてたけど…隙間から出てきたゾンビに噛まれた。」
彼女が金属棒を握る手が強張る。「痛かった。でも、それより怖かった。父ちゃんみたいにゾンビになるのが嫌だった。おじさんが腕を切った時、叫んだけど…心のどこかで『これでいい』って思った。生きてられるならって。」
俺の胸が締め付けられる。あの時、俺はナイフを手に持つ瞬間、彼女の目を直視できなかった。血が噴き出し、彼女が気を失うまで、俺はただ任務のように動いた。特殊作戦群の訓練が感情を殺してた。でも、今、彼女の言葉を聞いて、あの決断が彼女をどれだけ変えたかを実感する。
「お前、強いよ。俺ならあそこで折れてたかもしれない。」俺は正直に言う。彼女が首を振る。
「強くなんかないよ。おじさんがいたから生きられた。父ちゃんが死んだ時も、私、泣くしかできなかった。私、誰かを守るなんて無理だと思ってた。でも…」彼女が俺を見る。「おじさんと戦ってて、ちょっとだけ分かった。守るって、諦めないことなんだね。」
その言葉に、俺は浩二の最後の姿を思い出す。あいつは市民を守るため、ゾンビの群れに突っ込んでいった。諦めなかった。詩織は確かにあいつの娘だ。
工場の日常
翌朝、廃工場の生存者たちと共同生活が始まる。美奈子が俺たちに割り当てた仕事は、見張りと物資調達の支援だ。詩織は子供たちの面倒を見る役目を自ら買って出た。片腕でも、彼女は毛布を畳んだり、缶詰を配ったりと忙しく動く。子供たちに笑顔を見せる姿は、まるで姉のようだ。
「お前、意外と世話好きだな。」昼休憩中、俺が缶詰のスープを飲みながら言うと、彼女が笑う。
「昔、お母さんが病気で寝てた時、私が家のことをやってたから。慣れてるよ。」彼女がそう言って、近くの子供に水を渡す。彼女の過去が、こんな形で生きてるのか。
その時、佐藤が近づいてくる。「お前ら、午後に偵察に行くぞ。川の下流に何があるか確かめたい。美奈子が許可出した。」
「ゾンビの数が問題だ。速いやつがいるなら、なおさら危険だ。」俺は冷静に答える。特殊作戦群時代、偵察任務は得意だった。敵の動きを読み、撤退ルートを確保する。それが生き残る術だ。
「俺とあと2人で行く。お前はここで詩織と留守を頼む。」佐藤が提案するが、詩織が口を挟む。
「私も行くよ。おじさんと一緒なら戦える。」
「お前は――」俺が制止しようとすると、美奈子が割って入る。
「その子、昨日見張りでゾンビの気配に気づいたらしいな。連れてけ。戦えるなら役に立つ。」美奈子が笑う。俺は渋々頷く。詩織が俺にウィンクする。図々しくなってきたな。
川下への偵察
午後、俺、佐藤、詩織、そしてもう一人の男・田中を加えた4人で川沿いを下る。装備は俺が猟銃、佐藤がライフル、田中が鉄パイプ、詩織が金属棒。弾薬は限られてるが、接近戦なら何とかなる。
川沿いの道は荒れ果て、倒れた木や車が障害物になってる。1時間ほど進むと、ゾンビの群れが視界に入る。数は30体ほど。通常のゾンビだ。だが、その中に1体、異質な動きをするやつがいた。体が瘦せ細り、動きが速い。佐藤が言ってた変異種だ。
「あれ、ヤバそうだな。」田中が呟く。
「距離を取れ。様子を見る。」俺は指示を出し、皆を下がらせる。変異種がこちらに気づき、急に走り出す。速さは人間並み。俺は猟銃を構え、冷静に狙う。1発目で胸を撃つが、止まらない。2発目で頭を撃ち抜く。ようやく倒れる。
「頭を狙わないと駄目か…弾がもったいない。」俺は舌打ちする。残りのゾンビが動き出すが、変異種ほどの速さはない。佐藤と田中が応戦し、俺と詩織が側面を固める。
「おじさん、右!」詩織が叫び、金属棒でゾンビの膝を叩く、ゾンビの膝が砕ける音と同時に、俺はナイフをその首に突き刺す。詩織の援護がなければ、背後を取られていたかもしれない。彼女の息が荒く、金属棒を握る手が汗で濡れている。それでも、彼女は次の敵を見据えて構え直す。成長してる。あの倉庫での泣き声しか出せなかった子とは別人だ。
「詩織、落ち着け。呼吸を整えな。」俺は低い声で言い、彼女に一瞬目をやる。彼女が頷き、深呼吸する。その間に、佐藤と田中が残りのゾンビを仕留める。佐藤のライフルが正確に頭を撃ち抜き、田中が鉄パイプで殴り潰す。乱暴だが効果的だ。30体の群れは数分で片付き、川沿いに静寂が戻る。
「変異種が1体だけとは思えねえ。下流に何かある。」俺は猟銃を肩にかけ、周囲を警戒する。変異種の動きは通常のゾンビと違いすぎる。特殊作戦群時代、生物兵器の報告書に似た記述があった。感染が進行して身体機能が異常強化されるケース。もしそれが現実なら、俺たちの戦い方は根本から見直さないといけない。
「おじさん、あそこ見て。」詩織が指差す先、川の対岸に何かが見える。双眼鏡を手に覗くと、半壊したビルが立っている。窓にバリケードが築かれ、煙が薄く上がっている。人の気配だ。だが、ゾンビの群れがその周囲を徘徊している。数は50体以上。生存者が立て籠もってる可能性が高い。
「佐藤、あれは何だ?」俺が聞くと、彼が目を細める。
「…分からん。あのビル、昔は病院だったはずだ。ゾンビが出る前は避難所になってたって噂があったけど、崩壊したって聞いてた。」
「崩壊したにしては、煙が上がってる。誰かが生きてる。」田中が呟く。彼の声に緊張が混じる。
「偵察の目的は下流の状況確認だ。行くぞ。」俺は決断を下す。生存者がいるなら情報が得られる。だが、ゾンビの数が多すぎる。正面突破は無理だ。迂回ルートを探す必要がある。
俺たちは川沿いの茂みを進み、対岸への橋を探す。半壊した鉄橋が見つかり、慎重に渡る。詩織が俺の後ろで足を滑らせそうになるが、すぐに体勢を立て直す。片腕でもバランス感覚がいい。彼女の過去を思い出しながら、俺は口を開く。
「詩織、お前、浩二と山に行ったって言ってたよな。あの時、何か役に立つこと覚えたか?」俺は戦術的な意図も込めて聞く。彼女が少し考えて答える。
「うん。父ちゃんに火の起こし方教わった。木の枝とか、石で火花作るやつ。あと、罠の作り方も少し。ウサギ捕まえるやつだったけど…ゾンビには使えないよね。」彼女が苦笑する。
「いや、使える。罠はゾンビにも有効だ。動きを制限できれば戦いやすい。」俺は真剣に答える。特殊作戦群時代、即席の罠で敵を足止めした経験がある。詩織の知識が役に立つかもしれない。
「罠か…私、父ちゃんと山で過ごした時、ゾンビが出る前だったから、楽しかっただけだった。でも、父ちゃんが『いざって時は自分で生きろ』って言ってたの、覚えてる。あの時は意味分からなかったけど、今なら分かるよ。」詩織の声に懐かしさと決意が混じる。
「お前、あの時から強かったんだよ。浩二が教えてたのは、ただの遊びじゃなくて生きる術だった。」俺はそう言い、彼女の肩を軽く叩く。彼女が小さく笑う。
「父ちゃん、すごかったんだね。おじさんみたいに。」
「いや、あいつは俺より人間味があった。お前を守るために命を捨てたんだからな。」俺は淡々と答えるが、心に刺さるものがある。浩二の最後の姿が頭を離れない。
鉄橋を渡り終え、俺たちは病院の裏手に回る。ゾンビの群れは正面に集中しており、裏口は比較的静かだ。だが、油断はできない。俺は佐藤に手信号を送り、偵察を指示。佐藤が茂みに隠れながら近づき、戻ってくる。
「裏口にゾンビは2体だけ。扉が半開きで、中に明かりが見えた。生存者がいるのは確かだ。」佐藤が報告する。
「2体なら静かに片付けられる。俺と詩織でやる。佐藤と田中は援護と周囲の監視を頼む。」俺は即座に役割を割り振る。特殊作戦群の癖だ。チームワークが命。
俺と詩織は茂みに身を低くし、裏口に近づく。ゾンビ2体が扉の前でうろついている。動きは鈍い。俺はナイフを手に、詩織に金属棒を構えるよう目で指示。彼女が頷く。俺が先に飛び出し、1体の首にナイフを突き立てる。同時に、詩織がもう1体の膝を叩き、倒れたところを頭に一撃。音を最小限に抑え、2体とも仕留める。
「うまいな。」俺が囁くと、詩織が小さく笑う。「おじさんの動き見て覚えた。」
裏口から中へ入る。薄暗い廊下に血痕と散乱した医療器具。奥からかすかな話し声が聞こえる。俺たちは慎重に進み、声のする部屋へと近づく。扉の隙間から覗くと、5人の生存者がいる。男3人、女2人。武器はナイフと鉄棒程度だが、テーブルに缶詰と水が並んでいる。物資はそこそこあるようだ。
「接触するぞ。敵意がないことを示せ。」俺は詩織に言い、扉を軽く叩く。話し声が止まり、男の一人が立ち上がる。
「誰だ!?」鋭い声が響く。
「生存者だ。敵意はない。情報と物資の交換を求めてる。」俺は落ち着いて答える。
扉が開き、30代の男が顔を出す。瘦せた顔に鋭い目。手にナイフを持っているが、攻撃的な姿勢ではない。
「お前ら、どうやってここまで来た?ゾンビに囲まれてるぞ。」男が驚いたように言う。
「裏から入った。ゾンビは少ない。お前らは何者だ?」俺が逆に聞く。
「俺たちはこの病院に立て籠もってる。名前は高橋。元看護師だ。他の連中は避難民。1ヶ月前にここに逃げ込んで、バリケード張った。」高橋が答える。
「変異種を見た。速いやつだ。あれは何だ?」俺が核心を突く。高橋の顔が強張る。
「……それが問題だ。あれはゾンビじゃなくて、何か違う。病院の地下に研究所があった。ゾンビが出る前、怪しい実験やってたって噂があった。感染が広がった後、地下から出てきたんだ。」
「実験…」俺の頭に特殊作戦群時代の記憶が蘇る。生物兵器のデータ。感染者の変異。符合する。
高橋に案内され、俺たちは部屋に入る。佐藤と田中も合流し、生存者たちと対面する。詩織が片腕を見て驚く彼らに平然と対応する様子は、彼女の強さを物語る。
「ここは安全じゃない。ゾンビが増えてる。変異種もいるならなおさらだ。」俺が言うと、高橋が頷く。
「分かってる。だが、物資がここにある。移動するにもゾンビを突破しないといけない。お前ら、戦えるなら手を貸してくれ。物資を分ける。」
「条件次第だ。変異種の情報と、地下の状況を教えてくれ。」俺は交渉を持ちかける。高橋が他の生存者と目を合わせ、頷く。
「いいだろう。地下には行かない方がいい。あそこから変異種が出てきた。数は分からないが、少なくとも10体以上はいる。普通のゾンビより頭がいいみたいだ。」
「頭がいい?」佐藤が眉を寄せる。
「ああ。扉を開けようとしたり、罠を避けたりする。ゾンビじゃない何かだ。」高橋の声に恐怖が滲む。
俺は詩織を見る。彼女が金属棒を握り直し、俺に頷く。「おじさん、私も戦うよ。父ちゃんみたいに。」
「お前ならできる。」俺はそう答え、猟銃を構える。病院の地下に何が潜んでいるのか。それを知るには戦うしかない。
その夜
病院の一室で休息を取る。詩織が俺の隣で毛布にくるまり、静かに言う。「おじさん、私、怖いよ。でも、逃げたくない。」
「怖いのは当たり前だ。俺だって怖い。だが、お前がいるから戦える。」俺は正直に答える。彼女が笑う。
「父ちゃんもそうだったのかな。私を守るために怖くても戦ったんだね。」
「ああ。あいつはお前を愛してた。」俺はそう言い、彼女の頭を軽く撫でる。彼女が目を閉じ、眠りに落ちる。
外でゾンビの唸り声が響く。地下からの脅威が迫っている。俺たちは新たな戦いに備える。
「下流に何かあるのか?」俺が聞くと、佐藤が首を振る。
「分からん。偵察に行った奴らは戻ってこなかった。ただ、ゾンビの中に妙なのが混じってる。動きが速いんだ。」
「速いゾンビ…」俺は眉を寄せる。特殊作戦群時代、生物兵器の実験データを目にしたことがある。感染者が変異する可能性はゼロじゃない。もしそれが現実なら、厄介な事態だ。
「おじさん、私も戦うよ。」詩織が突然言う。佐藤と美奈子が驚いた顔で彼女を見る。
「お前はまだ――」俺が制止しようとすると、彼女が遮る。
「父ちゃんみたいに守りたい。私だってできるよ。」その目に迷いはなかった。
美奈子が笑い出す。「気に入ったよ、その子。いいだろう。お前ら、今日からここで戦え。物資は分ける。だが、裏切ったら容赦しないからな。」
俺は頷く。詩織が俺の隣で金属棒を握り直す。この工場が新たな戦場になる。だが、詩織が俺の隣にいる限り、俺は戦い続ける。あいつの娘を守るため、そして彼女が自分で立つ日まで。
その夜
夜が更け、工場の見張り台に俺と詩織が立つ。川の向こうでゾンビの影が蠢く。数は多い。俺は佐藤から借りた古い猟銃を手に持つ。弾は20発。詩織は金属棒を手に、俺の左側に立つ。
「おじさん、父ちゃんのこと、教えてよ。」詩織が静かに言う。
「浩二か…あいつはお前の自慢の父親だよ。市民を守るためなら命を張った。俺には真似できねえ。」俺は淡々と話し、視線を川に固定する。
「私もそうなりたい。」詩織が呟く。
「お前はもうそうなってるよ。」俺はそう答え、彼女の頭を軽く叩く。彼女が笑う。その笑顔が、初めて温かく見えた。
川の向こうでゾンビが吼える。戦いが始まる。俺たちは銃と棒を手に、夜の闇に立ち向かう。
夜の見張り台で、俺と詩織は川の向こうを睨む。ゾンビの遠吠えが風に乗り、時折水面に反射する月光が不気味に揺れる。猟銃の冷たい感触が手に馴染むが、弾が20発しかない現実が頭を離れない。詩織は金属棒を握り、俺の左側で静かに息を整えている。彼女の横顔を見ると、浩二の面影が浮かぶ。だが、今夜はそれ以上に、彼女自身の過去が気になった。
「おじさん、父ちゃんのこと、教えてよ。」彼女が言った言葉がまだ耳に残っている。浩二の話をするなら、詩織のことも知っておくべきだ。あいつの娘としてだけでなく、彼女自身として。
「詩織、お前が小さい頃のこと、覚えてるか?」俺は視線を川に固定したまま、静かに尋ねる。彼女が一瞬動きを止め、金属棒を握る手に力がこもる。
「…少しだけ。父ちゃんとお母さんが生きてた頃のこと?」彼女の声は小さく、どこか遠くを見るようだった。
「ああ。浩二から聞いてた。お前が5歳の時、あいつとお前でよく公園に行ってたって。」俺は記憶を辿る。特殊作戦群の任務で帰国した時、浩二が嬉しそうに話してくれたことがあった。「お前がブランコに乗りながら笑うのを見て、あいつは『こいつの未来を守るためなら何でもする』って言ってた。」
詩織が小さく笑う。「覚えてるよ。父ちゃん、ブランコ押すの強すぎて、私、落ちそうになったんだから。でも、楽しかった。お母さんが『危ないよ!』って怒ってたけど、笑ってた。」
その記憶が彼女の中でどれだけ鮮明かは分からないが、声に温かさが混じる。だが、次の瞬間、彼女の表情が曇る。
「お母さんが死んだのはその1年後。病気だった。父ちゃん、私には隠してたけど、夜に泣いてるの聞いてたよ。私、なんにもできなかった。」詩織の声が僅かに震える。俺は黙って聞く。彼女が続ける。
「それから、父ちゃんは私を連れて色んなところに行った。仕事が忙しくても、時間作ってくれた。キャンプとか、海とか…。ゾンビが出る前、最後に一緒に行ったのは山だった。父ちゃんが『ここなら安全だ』って言ってたけど、結局、どこに行ってもゾンビが来た。」
俺は頷く。浩二が家族を守ろうとした努力は知ってる。あいつは任務の合間を縫って、詩織と過ごす時間を確保してた。特殊作戦群の俺たちには珍しい家庭的な一面だった。だが、ゾンビの発生で全てが変わった。
「お前が腕を失くした日のこと、覚えてるか?」俺は慎重に聞く。あの日のことは俺にとっても忘れられない。
詩織が目を伏せる。「うん。あの倉庫で、父ちゃんが死んだ日から1ヶ月くらい経ってたよね。私、おじさんと一緒に逃げてた。物資を探してた時、ゾンビに囲まれた。おじさんが戦ってる間に、私、隠れてたけど…隙間から出てきたゾンビに噛まれた。」
彼女が金属棒を握る手が強張る。「痛かった。でも、それより怖かった。父ちゃんみたいにゾンビになるのが嫌だった。おじさんが腕を切った時、叫んだけど…心のどこかで『これでいい』って思った。生きてられるならって。」
俺の胸が締め付けられる。あの時、俺はナイフを手に持つ瞬間、彼女の目を直視できなかった。血が噴き出し、彼女が気を失うまで、俺はただ任務のように動いた。特殊作戦群の訓練が感情を殺してた。でも、今、彼女の言葉を聞いて、あの決断が彼女をどれだけ変えたかを実感する。
「お前、強いよ。俺ならあそこで折れてたかもしれない。」俺は正直に言う。彼女が首を振る。
「強くなんかないよ。おじさんがいたから生きられた。父ちゃんが死んだ時も、私、泣くしかできなかった。私、誰かを守るなんて無理だと思ってた。でも…」彼女が俺を見る。「おじさんと戦ってて、ちょっとだけ分かった。守るって、諦めないことなんだね。」
その言葉に、俺は浩二の最後の姿を思い出す。あいつは市民を守るため、ゾンビの群れに突っ込んでいった。諦めなかった。詩織は確かにあいつの娘だ。
工場の日常
翌朝、廃工場の生存者たちと共同生活が始まる。美奈子が俺たちに割り当てた仕事は、見張りと物資調達の支援だ。詩織は子供たちの面倒を見る役目を自ら買って出た。片腕でも、彼女は毛布を畳んだり、缶詰を配ったりと忙しく動く。子供たちに笑顔を見せる姿は、まるで姉のようだ。
「お前、意外と世話好きだな。」昼休憩中、俺が缶詰のスープを飲みながら言うと、彼女が笑う。
「昔、お母さんが病気で寝てた時、私が家のことをやってたから。慣れてるよ。」彼女がそう言って、近くの子供に水を渡す。彼女の過去が、こんな形で生きてるのか。
その時、佐藤が近づいてくる。「お前ら、午後に偵察に行くぞ。川の下流に何があるか確かめたい。美奈子が許可出した。」
「ゾンビの数が問題だ。速いやつがいるなら、なおさら危険だ。」俺は冷静に答える。特殊作戦群時代、偵察任務は得意だった。敵の動きを読み、撤退ルートを確保する。それが生き残る術だ。
「俺とあと2人で行く。お前はここで詩織と留守を頼む。」佐藤が提案するが、詩織が口を挟む。
「私も行くよ。おじさんと一緒なら戦える。」
「お前は――」俺が制止しようとすると、美奈子が割って入る。
「その子、昨日見張りでゾンビの気配に気づいたらしいな。連れてけ。戦えるなら役に立つ。」美奈子が笑う。俺は渋々頷く。詩織が俺にウィンクする。図々しくなってきたな。
川下への偵察
午後、俺、佐藤、詩織、そしてもう一人の男・田中を加えた4人で川沿いを下る。装備は俺が猟銃、佐藤がライフル、田中が鉄パイプ、詩織が金属棒。弾薬は限られてるが、接近戦なら何とかなる。
川沿いの道は荒れ果て、倒れた木や車が障害物になってる。1時間ほど進むと、ゾンビの群れが視界に入る。数は30体ほど。通常のゾンビだ。だが、その中に1体、異質な動きをするやつがいた。体が瘦せ細り、動きが速い。佐藤が言ってた変異種だ。
「あれ、ヤバそうだな。」田中が呟く。
「距離を取れ。様子を見る。」俺は指示を出し、皆を下がらせる。変異種がこちらに気づき、急に走り出す。速さは人間並み。俺は猟銃を構え、冷静に狙う。1発目で胸を撃つが、止まらない。2発目で頭を撃ち抜く。ようやく倒れる。
「頭を狙わないと駄目か…弾がもったいない。」俺は舌打ちする。残りのゾンビが動き出すが、変異種ほどの速さはない。佐藤と田中が応戦し、俺と詩織が側面を固める。
「おじさん、右!」詩織が叫び、金属棒でゾンビの膝を叩く、ゾンビの膝が砕ける音と同時に、俺はナイフをその首に突き刺す。詩織の援護がなければ、背後を取られていたかもしれない。彼女の息が荒く、金属棒を握る手が汗で濡れている。それでも、彼女は次の敵を見据えて構え直す。成長してる。あの倉庫での泣き声しか出せなかった子とは別人だ。
「詩織、落ち着け。呼吸を整えな。」俺は低い声で言い、彼女に一瞬目をやる。彼女が頷き、深呼吸する。その間に、佐藤と田中が残りのゾンビを仕留める。佐藤のライフルが正確に頭を撃ち抜き、田中が鉄パイプで殴り潰す。乱暴だが効果的だ。30体の群れは数分で片付き、川沿いに静寂が戻る。
「変異種が1体だけとは思えねえ。下流に何かある。」俺は猟銃を肩にかけ、周囲を警戒する。変異種の動きは通常のゾンビと違いすぎる。特殊作戦群時代、生物兵器の報告書に似た記述があった。感染が進行して身体機能が異常強化されるケース。もしそれが現実なら、俺たちの戦い方は根本から見直さないといけない。
「おじさん、あそこ見て。」詩織が指差す先、川の対岸に何かが見える。双眼鏡を手に覗くと、半壊したビルが立っている。窓にバリケードが築かれ、煙が薄く上がっている。人の気配だ。だが、ゾンビの群れがその周囲を徘徊している。数は50体以上。生存者が立て籠もってる可能性が高い。
「佐藤、あれは何だ?」俺が聞くと、彼が目を細める。
「…分からん。あのビル、昔は病院だったはずだ。ゾンビが出る前は避難所になってたって噂があったけど、崩壊したって聞いてた。」
「崩壊したにしては、煙が上がってる。誰かが生きてる。」田中が呟く。彼の声に緊張が混じる。
「偵察の目的は下流の状況確認だ。行くぞ。」俺は決断を下す。生存者がいるなら情報が得られる。だが、ゾンビの数が多すぎる。正面突破は無理だ。迂回ルートを探す必要がある。
俺たちは川沿いの茂みを進み、対岸への橋を探す。半壊した鉄橋が見つかり、慎重に渡る。詩織が俺の後ろで足を滑らせそうになるが、すぐに体勢を立て直す。片腕でもバランス感覚がいい。彼女の過去を思い出しながら、俺は口を開く。
「詩織、お前、浩二と山に行ったって言ってたよな。あの時、何か役に立つこと覚えたか?」俺は戦術的な意図も込めて聞く。彼女が少し考えて答える。
「うん。父ちゃんに火の起こし方教わった。木の枝とか、石で火花作るやつ。あと、罠の作り方も少し。ウサギ捕まえるやつだったけど…ゾンビには使えないよね。」彼女が苦笑する。
「いや、使える。罠はゾンビにも有効だ。動きを制限できれば戦いやすい。」俺は真剣に答える。特殊作戦群時代、即席の罠で敵を足止めした経験がある。詩織の知識が役に立つかもしれない。
「罠か…私、父ちゃんと山で過ごした時、ゾンビが出る前だったから、楽しかっただけだった。でも、父ちゃんが『いざって時は自分で生きろ』って言ってたの、覚えてる。あの時は意味分からなかったけど、今なら分かるよ。」詩織の声に懐かしさと決意が混じる。
「お前、あの時から強かったんだよ。浩二が教えてたのは、ただの遊びじゃなくて生きる術だった。」俺はそう言い、彼女の肩を軽く叩く。彼女が小さく笑う。
「父ちゃん、すごかったんだね。おじさんみたいに。」
「いや、あいつは俺より人間味があった。お前を守るために命を捨てたんだからな。」俺は淡々と答えるが、心に刺さるものがある。浩二の最後の姿が頭を離れない。
鉄橋を渡り終え、俺たちは病院の裏手に回る。ゾンビの群れは正面に集中しており、裏口は比較的静かだ。だが、油断はできない。俺は佐藤に手信号を送り、偵察を指示。佐藤が茂みに隠れながら近づき、戻ってくる。
「裏口にゾンビは2体だけ。扉が半開きで、中に明かりが見えた。生存者がいるのは確かだ。」佐藤が報告する。
「2体なら静かに片付けられる。俺と詩織でやる。佐藤と田中は援護と周囲の監視を頼む。」俺は即座に役割を割り振る。特殊作戦群の癖だ。チームワークが命。
俺と詩織は茂みに身を低くし、裏口に近づく。ゾンビ2体が扉の前でうろついている。動きは鈍い。俺はナイフを手に、詩織に金属棒を構えるよう目で指示。彼女が頷く。俺が先に飛び出し、1体の首にナイフを突き立てる。同時に、詩織がもう1体の膝を叩き、倒れたところを頭に一撃。音を最小限に抑え、2体とも仕留める。
「うまいな。」俺が囁くと、詩織が小さく笑う。「おじさんの動き見て覚えた。」
裏口から中へ入る。薄暗い廊下に血痕と散乱した医療器具。奥からかすかな話し声が聞こえる。俺たちは慎重に進み、声のする部屋へと近づく。扉の隙間から覗くと、5人の生存者がいる。男3人、女2人。武器はナイフと鉄棒程度だが、テーブルに缶詰と水が並んでいる。物資はそこそこあるようだ。
「接触するぞ。敵意がないことを示せ。」俺は詩織に言い、扉を軽く叩く。話し声が止まり、男の一人が立ち上がる。
「誰だ!?」鋭い声が響く。
「生存者だ。敵意はない。情報と物資の交換を求めてる。」俺は落ち着いて答える。
扉が開き、30代の男が顔を出す。瘦せた顔に鋭い目。手にナイフを持っているが、攻撃的な姿勢ではない。
「お前ら、どうやってここまで来た?ゾンビに囲まれてるぞ。」男が驚いたように言う。
「裏から入った。ゾンビは少ない。お前らは何者だ?」俺が逆に聞く。
「俺たちはこの病院に立て籠もってる。名前は高橋。元看護師だ。他の連中は避難民。1ヶ月前にここに逃げ込んで、バリケード張った。」高橋が答える。
「変異種を見た。速いやつだ。あれは何だ?」俺が核心を突く。高橋の顔が強張る。
「……それが問題だ。あれはゾンビじゃなくて、何か違う。病院の地下に研究所があった。ゾンビが出る前、怪しい実験やってたって噂があった。感染が広がった後、地下から出てきたんだ。」
「実験…」俺の頭に特殊作戦群時代の記憶が蘇る。生物兵器のデータ。感染者の変異。符合する。
高橋に案内され、俺たちは部屋に入る。佐藤と田中も合流し、生存者たちと対面する。詩織が片腕を見て驚く彼らに平然と対応する様子は、彼女の強さを物語る。
「ここは安全じゃない。ゾンビが増えてる。変異種もいるならなおさらだ。」俺が言うと、高橋が頷く。
「分かってる。だが、物資がここにある。移動するにもゾンビを突破しないといけない。お前ら、戦えるなら手を貸してくれ。物資を分ける。」
「条件次第だ。変異種の情報と、地下の状況を教えてくれ。」俺は交渉を持ちかける。高橋が他の生存者と目を合わせ、頷く。
「いいだろう。地下には行かない方がいい。あそこから変異種が出てきた。数は分からないが、少なくとも10体以上はいる。普通のゾンビより頭がいいみたいだ。」
「頭がいい?」佐藤が眉を寄せる。
「ああ。扉を開けようとしたり、罠を避けたりする。ゾンビじゃない何かだ。」高橋の声に恐怖が滲む。
俺は詩織を見る。彼女が金属棒を握り直し、俺に頷く。「おじさん、私も戦うよ。父ちゃんみたいに。」
「お前ならできる。」俺はそう答え、猟銃を構える。病院の地下に何が潜んでいるのか。それを知るには戦うしかない。
その夜
病院の一室で休息を取る。詩織が俺の隣で毛布にくるまり、静かに言う。「おじさん、私、怖いよ。でも、逃げたくない。」
「怖いのは当たり前だ。俺だって怖い。だが、お前がいるから戦える。」俺は正直に答える。彼女が笑う。
「父ちゃんもそうだったのかな。私を守るために怖くても戦ったんだね。」
「ああ。あいつはお前を愛してた。」俺はそう言い、彼女の頭を軽く撫でる。彼女が目を閉じ、眠りに落ちる。
外でゾンビの唸り声が響く。地下からの脅威が迫っている。俺たちは新たな戦いに備える。
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