[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33

文字の大きさ
上 下
4 / 328

004 ゲームの世界

しおりを挟む
「フィオナ、これが何か分かる?」

 パンプキンパイを焼き終えた後、おもむろにレティシアはフィオナに訊いた。瓶に入った白い粉を見て、フィオナは首を傾げる。

「粉砂糖じゃないの?」
「いいえ、これは妖精の粉よ。母さん、苦労して手に入れたの」
「妖精の粉? 初めて聞いたわ、そんな調味料」

 目を瞬くフィオナ。

「違うわ、真実、妖精の粉なの。妖精を捕まえて、その鱗粉りんぷんを採取したのよ」
「お母さん、私、小さい子どもじゃないんだから、騙されないわよ?」

 フィオナがじっとレティシアを見つめるのに、レティシアはうふふと微笑む。

「これをかけた食べ物を食べると、どんな人でも笑顔になるの。鉄仮面……ロベルト殿に持っていって御覧なさい。絶対に笑うから」
「ロベルトさんが……?」

 信じられなかったが、見てみたいような気もしたので、フィオナはロベルトの所にパンプキンパイを持っていった。



「ロベルトさん、こちらを召し上がってみて下さいませんか?」
「ありがとう、フィオナ殿。美味そうだな」

 警備団のロベルトの執務室に顔を出してパイを差し入れすると、ロベルトはフィオナに促されるまま、パイを食べてくれた。
 ドキドキとロベルトを見ていたフィオナは、ロベルトがにっこりと笑ったのを見て、目を丸くして驚いた。同じく、その顔を見てしまったハンスが、世界の終わりに直面したかのように呆然として、手に持っていた書類を落とす。バサバサと音を立てて紙が乱舞する。

「~~~~~!?」

 ハンスの声の無い悲鳴が上がる横で、フィオナはぱああと表情を明るくする。

(すごい! 妖精の粉ってすごい!)

 嬉しさのあまり、一言断って、家へ急いで帰る。

「お母さん、すごいわ。本当に笑ったの。ねえ、妖精の粉ってすごいのね……!」

 いつになく笑顔のフィオナは、レティシアに報告した後、浮き浮きした足取りで部屋へと帰っていった。



「で、お母さん。いつ、ハッピーハロウィーンって言うの? 姉さん、今日がハロウィンってこと、全然気付いてないわよ」
「どうしようかしら、アイシス。ここでロベルト殿と三人で仕組んだ悪戯だって言ったら、お母さん、嫌われちゃうと思うの」

 頬に手を当て、レティシアは溜息を吐く。

「何でネタばらししてないのかしら、ロベルト殿ったら」
「あの様子で言う暇無かったんじゃない? でも、副団長さん、笑うの成功したんだね。ここ一週間の母さんのしごきの甲斐があったわけだ」
「だって、アイシス。あの人が笑ったら、一番インパクトあるじゃない? 一番良い悪戯だと思ったんだけど……」
「後でバラしましょ。例え悪戯の為とはいえ、成功したのは奇跡よ」

 練習中の光景を思い出し、アイシスはぶるると震えた。

「あたし、笑ってる人があんなに怖いと思ったの、初めてよ」
「私もよ。あれは子どもが泣くわけよねえ」

 二人は青ざめた顔で言い合って、恐怖の記憶を頭から追い出した。



 一方、ネタばらしされたハンスは、安堵の息を吐いていた。

「なんだ、悪戯ですか。天変地異の前触れかと思ったじゃないですか」
「……さりげなく失礼なことを言うな」

 低く返しつつ、ロベルトは顔を手で撫でる。やがて頬をつまんでマッサージし始めるのを、ハンスは不思議そうに見る。

「顔がどうかしたんですか?」
「この一週間、笑う練習ばかりしていたせいで、顔の筋肉が痛いのだ。引きつる感じがする」

 至極真面目な、悪く言えばただの無表情でロベルトは答える。

「無茶しますね、副団長」

 そう返したハンスだが、笑顔の練習で顔面筋肉痛という状況に、笑いをこらえきれずについ吹き出してしまった。


 ……end.


 ※後日、フィオナは悪戯と知ってがっかりしましたが、ロベルトの奇跡の笑顔を見れたので大満足してました。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...