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第二章 協力してくれませんか?

おまけ

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 今日も今日とて、ハシャラは食堂で一人で食事をとっていた。

 ナラたちは食堂の壁際に控えているだけで食事はとらないし、ミミズとミツは朝早くから農作業に出ていて不在、ハチは警備に回っているし、クモはまだ寝ている。

 一人で食事をとっていることに少しだけ寂しさを感じて、ハシャラは食べるのを止めて口を開いた。

「あ、あの……虫魔物のみなさんは食事をとらないのですか? 別でとっているのですか?」

 そう尋ねると、ナラが答える。

「我々は数日に一度、少量を食べるだけで事足りるので、姫様と食事のタイミングが合わないのでございます」

「へぇ……そうなのですね」

 今まで知らなかった虫魔物の生態に、普通に感心してしまった。

 興味を持ったハシャラは、そこからさらに質問を続ける。

「普段は何を食べているのですか?」

「……姫様と暮らすようになってからは、同じような食事をとっていますよ。我々は基本的に雑食なので、肉・野菜問わず食べています」

 姫様と暮らすようになってからは、というところに間が空いたのが気になったハシャラは、さらに質問する。

「私と暮らす前はどのような食事を?」

そう尋ねると、目を伏せていたナラが薄く目を開けて、しばらく考え込んだかと思うと口を開いた。

「……雑食なのは変わらないので、魔物の森で肉・野菜・果物を食べて……たまにこことは別の人間の村を襲って、食べたりしておりました」

 真面目がゆえに正直に答えてくれたのであろうその答えに、ハシャラはひゅっと喉を鳴らした。

 自分が襲われることはないと頭では分かっていても、やはり少しだけ怖くなった。

「や、やはり……人間も、食べるのですか……?」

 ハシャラが恐る恐る尋ねると、ナラが「はい」と答える。

「魔力を持った人間は、我々魔物にとって栄養豊富ですから」

 そう言われて、ハシャラは「そ、そうなのですね」としか答えることができなかった。

 食堂がしーん……と静まり返る。

 そこにクモがやってきて、眠そうな顔で「おはよん」と声をかけてきた。

「お、おはようございます……」

 まだ気まずさを残しながら答えると、クモが不思議そうな顔で尋ねてくる。

「姫様、どうしたのん? 元気なさそうねん」

 そう言われて、ビクッとしながらも気になってしまったため、クモにも尋ねてみることにした。

「ク、クモは、人間を食べたことがありますか……?」

 そう尋ねると、ぽかんっとしたクモが答える。

「もちろん、あるわよん」

 そしてニコッと微笑んだかと思うと、さらに詳細を語ってくれた。

「森に蜘蛛の巣を張って、獲物がかかるのを待ってるとたまに人間も引っかかるのよねん。その時はありがたく頂いてたわん」

「そ、そうなのですね……」

「魔物なら、誰でも一度は人間を食べたことがあると思うわん」

 その答えを聞いて、ハシャラはいよいよ震えだしそうになっていた。

 けれどこれだけは尋ねなければと、勇気を振り絞って口を開く。

「こ、ここに来てからは……人間を食べたりしてません、よね……?」

 そう尋ねると、クモたちが口を揃えて答えた。

「ありません」
「ないわん」

 その答えを聞いて、ハシャラは心底ホッとしていた。

 ひとまず領地の人間は安全だったと。

「では、どうか……私のそばにいる間は、人間を食べずにいてもらえますか?」

 ずっと……と言うのは、魔物の長い寿命を考えると忍びなかったので、自分のそばにいる間だけはと付け加えた。

 するとナラは「かしこまりました」と、クモは「はーい」と答えた。

 良い返事をもらえたことで、ハシャラはまたホッと胸をなでおろした。

 正直、食欲がなくなりつつあったけれども、食事を残すのは作ってくれた領民やアリたちに申し訳がないと、食べ続けることにした。

 そしてフッと気になったので、さらに尋ねてみる。

「……ちなみに、人間を食べないとダメというわけではないのですよね?」

 その問いに、ナラが答える。

「はい。あくまでも精が出る程度なので、食べなければならないというわけではありません」

 その答えに、クモが付け加える。

「強くなれるからって、たまに人間を主食にしてる魔物もいるけどねん」

 ヒエッと思いつつも、自分のそばにいる虫魔物たちがその類の魔物ではなくて良かったと、またホッとして食事を続ける。

 料理はいつも通り美味しかったけれど、なんとも肝の冷える食事だった。
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