11 / 56
第二章 協力してくれませんか?
第十一話
しおりを挟む
はぁ……とため息をついていると、今度は扉のノックもなしに扉がバンッと開かれた。
「姫様! また魔物の襲撃でございます! 今度はいつもより上位の魔物らしく、我々で対処できるかどうか……」
慌てたメイドが、息を切らしながらそう告げる。
「一日に二度も!? それに強敵だなんて……ひとまず、すぐに領民の避難を……!」
「早速出番のようですね。姫様、ここはどうか私共にお任せいただけないでしょうか」
指示を出そうとするハシャラを遮るようにして、蜂の魔物がそう言った。
蟻の魔物では手に負えなさそうな魔物の襲撃、蜂の魔物に頼んでも良いのだろうか、領民の避難……。
色々なことが頭を駆け巡ったけれど、まっすぐにこちらを見つめる蜂の魔物の目を見たら、口から出た言葉は簡潔だった。
「お願いします……!」
ハシャラがそう告げると、一人の蜂の魔物を残して全員がバッと部屋の外に出ていき、素早く出現した魔物のもとへと向かっていく。
魔物はいつも魔物の森の方からやってくるので、そのことを魔物だからこそ分かっているのであろう蜂の魔物たちの動きに迷いはなかった。
あっという間に村についた蜂の魔物は、避難誘導しているミミズとミツの横もサーッと通り過ぎ、魔物と相対する。
大きなトカゲのような魔物が、今まさに村に入ろうとしているところに、蜂の魔物が立ちふさがる。
「この程度……本来の姿に戻るまでもない」
一人の蜂の魔物がそう呟くと、腰に差した剣を抜き、両手で構える。
トカゲの魔物は怯むことなく、蜂の魔物に襲いかかろうと動き出した。
けれど蜂の魔物がそれを上回るスピードで飛んでいき、手にした剣であっという間にトカゲの首を落とした。
そして剣についたトカゲの血を払うと、ゆっくりと美しい所作で納刀した。
頭を失ったトカゲの魔物は、力なく倒れ込み……ものの数秒で戦いは終わった。
魔物を撃退した蜂の魔物は、守りのために一人を村の出入り口に残し、すぐに屋敷へと戻っていった。
「なんだったんだべ……味方だべか?」
残されたミミズや領民たちは、何が起こったのか分からずに不思議そうな顔をしていた。
屋敷に戻ってきた蜂の魔物から撃退した旨を聞いたハシャラは、ホッと安心して胸をなでおろした。
「一人、村の出入り口に守りとして残しておりますので、今後は敵が来てもすぐに殲滅いたしますのでご安心ください」
「ありがとうございます……」
少し物騒だけれど力強い言葉に、魔物の襲撃に疲れ切っていたハシャラは素直にお礼を伝える。
やはり戦いに強い魔物がいるだけで、安心感が違う。
蟻の魔物たちだけでも心強かったけれど、今はそれ以上の安心感があって、ハシャラは久しぶりに心配事がなくなったような心地がしていた。
「ふっふーん。さ・ら・に! この蜘蛛の魔物ちゃんが守りを固めちゃうわよん」
蜘蛛の魔物が上機嫌にそう言っていたが、ハシャラにはどういう意味か分からず首をひねる。
「森の入口まで行きましょん」
蜘蛛の魔物がそう告げて、るんるんと部屋を出て村の近くにある森の入口まで向かうので、ハシャラも困惑しながら後に続いた。
トカゲを倒した蜂の魔物も「お前たちは屋敷の警護を」と他の蜂の魔物に指示を出し、ハシャラの後に続いた。
ナラも静かにハシャラの後に続く。
そして森の入口までやってくると蜘蛛の魔物が「見ててねん」と告げてから、ギラリっと目を光らせたかと思うと、手のひらから蜘蛛の糸を出した。
ハシャラが突然のことに驚いていると、蜘蛛の魔物はお絵かきでもするように腕を動かして蜘蛛の糸を操っていく。
そしてあっという間に、森の入口に蜘蛛の巣が完成した。
「これで、地を這う魔物は出てこれないわん。空から来るのはハチちゃんが撃退してくれるし、安心でしょん」
蜘蛛がくるっと振り返って、褒めてほしそうな笑顔でハシャラを見つめる。
「た、確かに。ちょっと乱暴ですけど……助かります。ありがとうございます」
そう告げると、蜘蛛の魔物はるんっと楽しそうに笑っていた。
「で、これで私は森に帰れなくなったから、姫様の屋敷に置いてねん」
蜘蛛の魔物がさらにそう告げる。
「……え?」
ハシャラが困惑していると、蜂の魔物も口を開く。
「私達も姫様をお守りするため、ぜひお側に置いてくださいませ」
「え? え?」
困惑するハシャラに、素知らぬ顔で蜘蛛の魔物は続ける。
「気軽にクモちゃんって呼んでねん」
「では私達のことは、どうかハチとお呼びください」
全然人の話を聞かないクモとハチたちが、ハシャラの仲間に加わった。
困惑しつつも、村の守りが強固になったことが嬉しいこともあり、ハシャラはやっぱり困惑するしかなかった。
「姫様! また魔物の襲撃でございます! 今度はいつもより上位の魔物らしく、我々で対処できるかどうか……」
慌てたメイドが、息を切らしながらそう告げる。
「一日に二度も!? それに強敵だなんて……ひとまず、すぐに領民の避難を……!」
「早速出番のようですね。姫様、ここはどうか私共にお任せいただけないでしょうか」
指示を出そうとするハシャラを遮るようにして、蜂の魔物がそう言った。
蟻の魔物では手に負えなさそうな魔物の襲撃、蜂の魔物に頼んでも良いのだろうか、領民の避難……。
色々なことが頭を駆け巡ったけれど、まっすぐにこちらを見つめる蜂の魔物の目を見たら、口から出た言葉は簡潔だった。
「お願いします……!」
ハシャラがそう告げると、一人の蜂の魔物を残して全員がバッと部屋の外に出ていき、素早く出現した魔物のもとへと向かっていく。
魔物はいつも魔物の森の方からやってくるので、そのことを魔物だからこそ分かっているのであろう蜂の魔物たちの動きに迷いはなかった。
あっという間に村についた蜂の魔物は、避難誘導しているミミズとミツの横もサーッと通り過ぎ、魔物と相対する。
大きなトカゲのような魔物が、今まさに村に入ろうとしているところに、蜂の魔物が立ちふさがる。
「この程度……本来の姿に戻るまでもない」
一人の蜂の魔物がそう呟くと、腰に差した剣を抜き、両手で構える。
トカゲの魔物は怯むことなく、蜂の魔物に襲いかかろうと動き出した。
けれど蜂の魔物がそれを上回るスピードで飛んでいき、手にした剣であっという間にトカゲの首を落とした。
そして剣についたトカゲの血を払うと、ゆっくりと美しい所作で納刀した。
頭を失ったトカゲの魔物は、力なく倒れ込み……ものの数秒で戦いは終わった。
魔物を撃退した蜂の魔物は、守りのために一人を村の出入り口に残し、すぐに屋敷へと戻っていった。
「なんだったんだべ……味方だべか?」
残されたミミズや領民たちは、何が起こったのか分からずに不思議そうな顔をしていた。
屋敷に戻ってきた蜂の魔物から撃退した旨を聞いたハシャラは、ホッと安心して胸をなでおろした。
「一人、村の出入り口に守りとして残しておりますので、今後は敵が来てもすぐに殲滅いたしますのでご安心ください」
「ありがとうございます……」
少し物騒だけれど力強い言葉に、魔物の襲撃に疲れ切っていたハシャラは素直にお礼を伝える。
やはり戦いに強い魔物がいるだけで、安心感が違う。
蟻の魔物たちだけでも心強かったけれど、今はそれ以上の安心感があって、ハシャラは久しぶりに心配事がなくなったような心地がしていた。
「ふっふーん。さ・ら・に! この蜘蛛の魔物ちゃんが守りを固めちゃうわよん」
蜘蛛の魔物が上機嫌にそう言っていたが、ハシャラにはどういう意味か分からず首をひねる。
「森の入口まで行きましょん」
蜘蛛の魔物がそう告げて、るんるんと部屋を出て村の近くにある森の入口まで向かうので、ハシャラも困惑しながら後に続いた。
トカゲを倒した蜂の魔物も「お前たちは屋敷の警護を」と他の蜂の魔物に指示を出し、ハシャラの後に続いた。
ナラも静かにハシャラの後に続く。
そして森の入口までやってくると蜘蛛の魔物が「見ててねん」と告げてから、ギラリっと目を光らせたかと思うと、手のひらから蜘蛛の糸を出した。
ハシャラが突然のことに驚いていると、蜘蛛の魔物はお絵かきでもするように腕を動かして蜘蛛の糸を操っていく。
そしてあっという間に、森の入口に蜘蛛の巣が完成した。
「これで、地を這う魔物は出てこれないわん。空から来るのはハチちゃんが撃退してくれるし、安心でしょん」
蜘蛛がくるっと振り返って、褒めてほしそうな笑顔でハシャラを見つめる。
「た、確かに。ちょっと乱暴ですけど……助かります。ありがとうございます」
そう告げると、蜘蛛の魔物はるんっと楽しそうに笑っていた。
「で、これで私は森に帰れなくなったから、姫様の屋敷に置いてねん」
蜘蛛の魔物がさらにそう告げる。
「……え?」
ハシャラが困惑していると、蜂の魔物も口を開く。
「私達も姫様をお守りするため、ぜひお側に置いてくださいませ」
「え? え?」
困惑するハシャラに、素知らぬ顔で蜘蛛の魔物は続ける。
「気軽にクモちゃんって呼んでねん」
「では私達のことは、どうかハチとお呼びください」
全然人の話を聞かないクモとハチたちが、ハシャラの仲間に加わった。
困惑しつつも、村の守りが強固になったことが嬉しいこともあり、ハシャラはやっぱり困惑するしかなかった。
10
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
配信の片隅で無双していた謎の大剣豪、最終奥義レベルを連発する美少女だと話題に
菊池 快晴
ファンタジー
配信の片隅で無双していた謎の大剣豪が美少女で、うっかり最凶剣術を披露しすぎたところ、どうやらヤバすぎると話題に
謎の大剣豪こと宮本椿姫は、叔父の死をきっかけに岡山の集落から都内に引っ越しをしてきた。
宮本流を世間に広める為、己の研鑽の為にダンジョンで籠っていると、いつのまにか掲示板で話題となる。
「配信の片隅で無双している大剣豪がいるんだが」
宮本椿姫は相棒と共に配信を始め、徐々に知名度があがり、その剣技を世に知らしめていく。
これは、謎の大剣豪こと宮本椿姫が、ダンジョンを通じて世界に衝撃を与えていく――ちょっと百合の雰囲気もあるお話です。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ループn回目の妹は兄に成りすまし、貴族だらけの学園へ通うことになりました
gari
ファンタジー
────すべては未来を変えるため。
転生者である平民のルミエラは、一家離散→巻き戻りを繰り返していた。
心が折れかけのn回目の今回、新たな展開を迎える。それは、双子の兄ルミエールに成りすまして学園に通うことだった。
開き直って、これまでと違い学園生活を楽しもうと学園の研究会『奉仕活動研究会』への入会を決めたルミエラだが、この件がきっかけで次々と貴族たちの面倒ごとに巻き込まれていくことになる。
子爵家令嬢の友人との再会。初めて出会う、苦労人な侯爵家子息や気さくな伯爵家子息との交流。間接的に一家離散エンドに絡む第二王子殿下からの寵愛?など。
次々と襲いかかるフラグをなぎ倒し、平穏とはかけ離れた三か月間の学園生活を無事に乗り切り、今度こそバッドエンドを回避できるのか。
最強騎士は料理が作りたい
菁 犬兎
ファンタジー
こんにちわ!!私はティファ。18歳。
ある国で軽い気持ちで兵士になったら気付いたら最強騎士になってしまいました!でも私、本当は小さな料理店を開くのが夢なんです。そ・れ・な・の・に!!私、仲間に裏切られて敵国に捕まってしまいました!!あわわどうしましょ!でも、何だか王様の様子がおかしいのです。私、一体どうなってしまうんでしょうか?
*小説家になろう様にも掲載されております。
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる