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第二章 協力してくれませんか?
第十話
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ミミズとミツバチの魔物は、しばらくは品種改良にかかりきりになるということだった。
病気に強い野菜と味の良い野菜、味の良い野菜と味の良い野菜と……どんどん掛け合わせていき、味が良くて病気に強い新種を作ろうとしているということだった。
その交配のための受粉やら実験に、ミツバチの魔物は協力しているらしい。
品種改良をしている間、ミツバチの魔物もしばらくは屋敷に滞在するということで、ずっとミツバチの魔物さんだと不便なのでミツと呼ぶことにした。
野菜の売買に関しては、二箇所の他領地で売買することが決まり、何とか無駄にすることなくお金に変えることができそうだ。
危機はあったものの、しばらくは平和な日常が続くと思われた。
「姫様! また村に魔物の襲撃です!」
慌てたメイドがハシャラの元にやってくるのも、もう何回目のことだろうか。
「またですか!? すぐに領民の避難と魔物の撃退を!」
そしてハシャラがそう指示を出すのも。
ナラが「はっ」と答えて、他の蟻魔物たちを引き連れて魔物の撃退をしてくれるため、今のところ村人や作物に被害は出ていないけれど、こう何回もだと疲弊してくる。
ハシャラはその間、念の為にと残された数人のメイドたちに囲まれながら、屋敷で大人しく待っている。
最初はついて行ったのだけれど、ナラたちが本来の蟻の魔物の姿に戻って魔物と戦うため、その姿を見て悲鳴を上げて倒れ込んでしまったために、お留守番と言われていた。
ちなみに村にいるミツとミミズは、基本的に戦闘能力が高くないため、領民の避難誘導に徹しているらしい。
蟻の魔物を村の出入り口に警備として置いておくことも考えたけれど、彼女たちも集まれば強いが個々が特別戦闘能力が高いわけではないらしく、その策もなしになった。
やってくる魔物はスライム状のものだったり、鹿や狐の魔物だったり様々だ。
おそらくは魔物も含めて領地に人が増えたこと、畑が良作であること、牛などの家畜を飼い始めたことが関係していると思われる。
今のところ蟻の魔物たちが大群で撃退することでなんとかなっているけれど、これ以上の魔物が来る前になんとか対策しなければ……と思っているところだった。
「私たちでは限界もあるので、そろそろ対策を考えたいところですね……」
ナラが珍しく弱音を吐いていて、その通りだなとハシャラも紅茶を飲みながら考え込む。
「誰か……強い虫魔物をお呼びした方がよいかもしれませんね」
「そうよねん。やっぱり守りって大事よねん」
「そうですね……って、誰ですか!?」
独り言のような言葉に、聞き慣れないセクシーな声で返事が聞こえたため、そちらの方に顔を向けると声色通りのセクシーな女性が目の前のソファに座っていた。
黒くウェーブがかった髪に、胸元の大きく開いた黒いマーメイドドレスのような服を身につけた女性。
ハシャラが驚いて誰か問うと、あっけらかんと返事をした。
「私? 私は蜘蛛の魔物よん。姫様は虫の姿が苦手ってことだったから、人間の姿に化けて来ちゃったわん」
ふふっと微笑むその姿は妖艶という言葉がぴったりで、ハシャラはなんだか負けたという気がしていた。
って、そんなことはどうでも良くてですね!
「……どうしてここに? それになぜ私が虫が苦手だと知っているのですか?」
「ふふっ……蜘蛛のネットワークは広いのよん。来た理由は、助けが必要かなと思ったからよん」
そう言われて、ハシャラの頭の中はまだ大混乱していた。
蜘蛛のネットワーク!? 助け!? 味方ということでしょうか……でも信じて良いのでしょうか!?
あわあわとしていると、扉をノックする音がした。
ギョッとしてそちらの方を見ると、メイドが入ってきて「お客様がお越しです」と告げた。
「お客様……? 誰でしょうか……」
「あら、もう来たのねん」
来客が誰か分からず戸惑っているハシャラとは対照的に、誰が来たか分かっている様子の蜘蛛の魔物が楽しそうに微笑んでいた。
そんな蜘蛛の魔物を不審に思いながらも「お通ししてください」とメイドに伝えた。
客がやってくると、蜘蛛の魔物がしれっと正面のソファからハシャラの隣に座り直していた。
ハシャラはギョッとしながらも、何も言えずにやってきた客人の方を見る。
客人は金髪、鎧姿に剣を携えた女性が数人だった。
勇ましいが無骨ではなく、美しいが華奢ではなく、麗人剣士という言葉がぴったりな女性たちだった。
入ってくると入口すぐに全員跪き、鎧がガシャッと音を立てる。
驚くハシャラをよそに、鎧の麗人たちは口を開いた。
「突然の訪問、失礼いたします。私たちは蜂の魔物でございます。姫様、ひいては姫様の土地に危険が迫っていると聞き及び、お守りするために参上いたしました」
だから、なぜみんな私と領地のことについて知っているのだろうかと疑問に思いつつも、どう切り出すべきなのか悩んでいると、隣にいる蜘蛛の魔物が「はーい」と手を上げた。
「私が話したのよん。姫様が危険だって。そしたらお守りするためにここに来るって言ってて、面白そうだったから先回りして来ちゃったん」
「あなたは何なんですか!? 本当に!」
ハシャラが混乱のあまり少し大きな声を出すと、蜘蛛の魔物が「怒っちゃいやん」と声を上げながらハシャラにすり寄る。
「いやね、私と彼女たち蜂の魔物がいれば、姫様の守りを強固にできるなと思ったのよん。それに姫様のおそばにいたら、暇しなさそうだしねん」
テヘッと微笑む彼女に、ハシャラはもう掛ける言葉が見当たらなかった。
病気に強い野菜と味の良い野菜、味の良い野菜と味の良い野菜と……どんどん掛け合わせていき、味が良くて病気に強い新種を作ろうとしているということだった。
その交配のための受粉やら実験に、ミツバチの魔物は協力しているらしい。
品種改良をしている間、ミツバチの魔物もしばらくは屋敷に滞在するということで、ずっとミツバチの魔物さんだと不便なのでミツと呼ぶことにした。
野菜の売買に関しては、二箇所の他領地で売買することが決まり、何とか無駄にすることなくお金に変えることができそうだ。
危機はあったものの、しばらくは平和な日常が続くと思われた。
「姫様! また村に魔物の襲撃です!」
慌てたメイドがハシャラの元にやってくるのも、もう何回目のことだろうか。
「またですか!? すぐに領民の避難と魔物の撃退を!」
そしてハシャラがそう指示を出すのも。
ナラが「はっ」と答えて、他の蟻魔物たちを引き連れて魔物の撃退をしてくれるため、今のところ村人や作物に被害は出ていないけれど、こう何回もだと疲弊してくる。
ハシャラはその間、念の為にと残された数人のメイドたちに囲まれながら、屋敷で大人しく待っている。
最初はついて行ったのだけれど、ナラたちが本来の蟻の魔物の姿に戻って魔物と戦うため、その姿を見て悲鳴を上げて倒れ込んでしまったために、お留守番と言われていた。
ちなみに村にいるミツとミミズは、基本的に戦闘能力が高くないため、領民の避難誘導に徹しているらしい。
蟻の魔物を村の出入り口に警備として置いておくことも考えたけれど、彼女たちも集まれば強いが個々が特別戦闘能力が高いわけではないらしく、その策もなしになった。
やってくる魔物はスライム状のものだったり、鹿や狐の魔物だったり様々だ。
おそらくは魔物も含めて領地に人が増えたこと、畑が良作であること、牛などの家畜を飼い始めたことが関係していると思われる。
今のところ蟻の魔物たちが大群で撃退することでなんとかなっているけれど、これ以上の魔物が来る前になんとか対策しなければ……と思っているところだった。
「私たちでは限界もあるので、そろそろ対策を考えたいところですね……」
ナラが珍しく弱音を吐いていて、その通りだなとハシャラも紅茶を飲みながら考え込む。
「誰か……強い虫魔物をお呼びした方がよいかもしれませんね」
「そうよねん。やっぱり守りって大事よねん」
「そうですね……って、誰ですか!?」
独り言のような言葉に、聞き慣れないセクシーな声で返事が聞こえたため、そちらの方に顔を向けると声色通りのセクシーな女性が目の前のソファに座っていた。
黒くウェーブがかった髪に、胸元の大きく開いた黒いマーメイドドレスのような服を身につけた女性。
ハシャラが驚いて誰か問うと、あっけらかんと返事をした。
「私? 私は蜘蛛の魔物よん。姫様は虫の姿が苦手ってことだったから、人間の姿に化けて来ちゃったわん」
ふふっと微笑むその姿は妖艶という言葉がぴったりで、ハシャラはなんだか負けたという気がしていた。
って、そんなことはどうでも良くてですね!
「……どうしてここに? それになぜ私が虫が苦手だと知っているのですか?」
「ふふっ……蜘蛛のネットワークは広いのよん。来た理由は、助けが必要かなと思ったからよん」
そう言われて、ハシャラの頭の中はまだ大混乱していた。
蜘蛛のネットワーク!? 助け!? 味方ということでしょうか……でも信じて良いのでしょうか!?
あわあわとしていると、扉をノックする音がした。
ギョッとしてそちらの方を見ると、メイドが入ってきて「お客様がお越しです」と告げた。
「お客様……? 誰でしょうか……」
「あら、もう来たのねん」
来客が誰か分からず戸惑っているハシャラとは対照的に、誰が来たか分かっている様子の蜘蛛の魔物が楽しそうに微笑んでいた。
そんな蜘蛛の魔物を不審に思いながらも「お通ししてください」とメイドに伝えた。
客がやってくると、蜘蛛の魔物がしれっと正面のソファからハシャラの隣に座り直していた。
ハシャラはギョッとしながらも、何も言えずにやってきた客人の方を見る。
客人は金髪、鎧姿に剣を携えた女性が数人だった。
勇ましいが無骨ではなく、美しいが華奢ではなく、麗人剣士という言葉がぴったりな女性たちだった。
入ってくると入口すぐに全員跪き、鎧がガシャッと音を立てる。
驚くハシャラをよそに、鎧の麗人たちは口を開いた。
「突然の訪問、失礼いたします。私たちは蜂の魔物でございます。姫様、ひいては姫様の土地に危険が迫っていると聞き及び、お守りするために参上いたしました」
だから、なぜみんな私と領地のことについて知っているのだろうかと疑問に思いつつも、どう切り出すべきなのか悩んでいると、隣にいる蜘蛛の魔物が「はーい」と手を上げた。
「私が話したのよん。姫様が危険だって。そしたらお守りするためにここに来るって言ってて、面白そうだったから先回りして来ちゃったん」
「あなたは何なんですか!? 本当に!」
ハシャラが混乱のあまり少し大きな声を出すと、蜘蛛の魔物が「怒っちゃいやん」と声を上げながらハシャラにすり寄る。
「いやね、私と彼女たち蜂の魔物がいれば、姫様の守りを強固にできるなと思ったのよん。それに姫様のおそばにいたら、暇しなさそうだしねん」
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