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第十章 幸せを知った令嬢と、神様の終わらない溺愛
第三十九話
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私達が夫婦になって、どれくらいの時間が流れたのだろうか。
あっという間で短かった気もするが、それなりの時間が流れた気もする。
今日も今日とて、教会に来てイラホン様の手伝いをしている。
ただ、もう毎日来ているというわけではない。
いつから言い始めたのかはもう覚えていないけれど、イラホン様と相談した上で交代制にして、お互いに適宜休みを取っている。
ただ身体を休めるだけの日もあるし、私はたまに人間界に降りて、今まで見ることが出来なかった町並みや人々の暮らし、自然を見に行くこともある。
外の世界をほとんど見たことがなかった私は、見るもの全てが新鮮で……あっちこっち行くのが楽しくてしょうがなかった。
一緒に休みが取れる日は、デートとして二人で散策することもある。
神は自分の意思で人間に見えるようにすることもできるらしく、たまに街で小物を買ったり食事を取ったり……これまた初めてで、楽しい経験をさせていただいている。
あとはカティ様やバハロン様と、ちょっとしたお茶会を開く日もある。
お茶会と言っても、屋敷でお茶菓子と紅茶を楽しみながらおしゃべりするだけなのだけれど……今の私には貴重な友神なので、そんなひとときがとても楽しい。
今度の週末も、お茶会の予定をたてている。
いつも招いてもらってばかりで悪いからということで、次のお茶会はカティ様の屋敷で開催されることになっている。
友神の家へ伺うのは初めてで緊張するが、とても楽しみだ。
そんなことを思いながらも仕事に勤しんでいると、そばをカーフィンが通りがかってこちらを見つめている。
カーフィンは今や歳を取って青年から大人になり、父親の跡を継いで立派な神父様になっている。
優しく思いやりのある彼は、参拝者の悩み相談に乗ったり教会に来れない事情がある人のところまで祈りに行ったり、街の人から愛される神父様になっている。
忙しそうにしながらも、ふっと足を止めて十字架の方を見つめているカーフィン。
私は笑顔で手をふるけれど、彼はそれに気付く様子がなく……そのまま立ち去ってしまった。
何度経験しても、この瞬間はやはりショックだ。
……けれどカーフィンにはもう、私やイラホン様……神の姿が見えていないから仕方がない。
分かりきっていることなのに、私は何度でも手を振ってしまうし……返事がないことに寂しさを感じずにはいられない。
……あれは結婚して、少し経った頃だっただろうか。
イラホン様はカーフィンの神を見る力について、とても希少であると同時に生命力を激しく消耗するために短命の原因になると教えてくださった。
そんなこと全く知らなかったので、驚いて何とかできないかと頼み込む私に、イラホン様は神の力を取ることで生命力の消耗を止められるかもしれないと仰った。
私がすぐさまカーフィンに事情を説明すると、彼は戸惑った様子だったけれど……私が長生きしてほしいと涙ながらに頼み込むと、分かったと了承してくれた。
カーフィンの力を取ることになった日……最後にカーフィンは笑顔で、幸せそうな二人が見れなくなるのは残念だとこぼしていた。
私は初めての友達を失うことに恐怖・絶望・悲しみ、そんな負の感情ばかりを抱いていたけれど……カーフィンは最後まで私達のことを考えてくれていた。
最後まで、笑顔で別れてくれた。
それが嬉しくて、ずっと堪えていた涙が溢れ出たけれど……その姿がカーフィンからは見えなくなっていたのは、幸いだったかも知れない。
……たとえ姿が見えなくなったとしても、私はカーフィンのことを今でも友達だと思い続けている。
彼もきっと、そう思ってくれているだろうと思うことが出来た。
私はこれからもきっと、カーフィンを見かけたら手を振り続ける。
そして彼の幸せを、参拝者の幸せと共に見守り続けられたら良いなと思っている。
「パパー!」
そんなカーフィンのそばに近寄る小さな女の子と、少女を追いかける可愛らしい女性。
女性の方はパパのお仕事邪魔しちゃダメよと女の子を諌めているけれど、カーフィンは嬉しそうに少女を抱き上げて、女の子もキャッキャッと嬉しそうな声を漏らしている。
私はそんな姿を、微笑ましく見守る。
カーフィンは結婚して、子供を授かっていた。
「あまり走ったら、お腹の子に良くないよ」
カーフィンが心配そうに女性に声を掛けて、女性はそうねとお腹を優しくさすっている。
彼らの幸せが、自分のことのように嬉しい。
心配そうにする両親を見てか、女の子が十字架の前までトコトコと歩いて祈りのポーズをする。
「げんきなあかちゃんが、うまれますように!」
カーフィンはそんな娘を見て、嬉しそうにふっと微笑んで同じように祈りのポーズをとる。
『見守っていてくれ。アルサ、イラホン様』
カーフィンが心の中で、そう語りかけてきた。
「もちろん。幸せに、カーフィン」
私はそう返して、彼らにパワーを与えて幸せを祈った。
あっという間で短かった気もするが、それなりの時間が流れた気もする。
今日も今日とて、教会に来てイラホン様の手伝いをしている。
ただ、もう毎日来ているというわけではない。
いつから言い始めたのかはもう覚えていないけれど、イラホン様と相談した上で交代制にして、お互いに適宜休みを取っている。
ただ身体を休めるだけの日もあるし、私はたまに人間界に降りて、今まで見ることが出来なかった町並みや人々の暮らし、自然を見に行くこともある。
外の世界をほとんど見たことがなかった私は、見るもの全てが新鮮で……あっちこっち行くのが楽しくてしょうがなかった。
一緒に休みが取れる日は、デートとして二人で散策することもある。
神は自分の意思で人間に見えるようにすることもできるらしく、たまに街で小物を買ったり食事を取ったり……これまた初めてで、楽しい経験をさせていただいている。
あとはカティ様やバハロン様と、ちょっとしたお茶会を開く日もある。
お茶会と言っても、屋敷でお茶菓子と紅茶を楽しみながらおしゃべりするだけなのだけれど……今の私には貴重な友神なので、そんなひとときがとても楽しい。
今度の週末も、お茶会の予定をたてている。
いつも招いてもらってばかりで悪いからということで、次のお茶会はカティ様の屋敷で開催されることになっている。
友神の家へ伺うのは初めてで緊張するが、とても楽しみだ。
そんなことを思いながらも仕事に勤しんでいると、そばをカーフィンが通りがかってこちらを見つめている。
カーフィンは今や歳を取って青年から大人になり、父親の跡を継いで立派な神父様になっている。
優しく思いやりのある彼は、参拝者の悩み相談に乗ったり教会に来れない事情がある人のところまで祈りに行ったり、街の人から愛される神父様になっている。
忙しそうにしながらも、ふっと足を止めて十字架の方を見つめているカーフィン。
私は笑顔で手をふるけれど、彼はそれに気付く様子がなく……そのまま立ち去ってしまった。
何度経験しても、この瞬間はやはりショックだ。
……けれどカーフィンにはもう、私やイラホン様……神の姿が見えていないから仕方がない。
分かりきっていることなのに、私は何度でも手を振ってしまうし……返事がないことに寂しさを感じずにはいられない。
……あれは結婚して、少し経った頃だっただろうか。
イラホン様はカーフィンの神を見る力について、とても希少であると同時に生命力を激しく消耗するために短命の原因になると教えてくださった。
そんなこと全く知らなかったので、驚いて何とかできないかと頼み込む私に、イラホン様は神の力を取ることで生命力の消耗を止められるかもしれないと仰った。
私がすぐさまカーフィンに事情を説明すると、彼は戸惑った様子だったけれど……私が長生きしてほしいと涙ながらに頼み込むと、分かったと了承してくれた。
カーフィンの力を取ることになった日……最後にカーフィンは笑顔で、幸せそうな二人が見れなくなるのは残念だとこぼしていた。
私は初めての友達を失うことに恐怖・絶望・悲しみ、そんな負の感情ばかりを抱いていたけれど……カーフィンは最後まで私達のことを考えてくれていた。
最後まで、笑顔で別れてくれた。
それが嬉しくて、ずっと堪えていた涙が溢れ出たけれど……その姿がカーフィンからは見えなくなっていたのは、幸いだったかも知れない。
……たとえ姿が見えなくなったとしても、私はカーフィンのことを今でも友達だと思い続けている。
彼もきっと、そう思ってくれているだろうと思うことが出来た。
私はこれからもきっと、カーフィンを見かけたら手を振り続ける。
そして彼の幸せを、参拝者の幸せと共に見守り続けられたら良いなと思っている。
「パパー!」
そんなカーフィンのそばに近寄る小さな女の子と、少女を追いかける可愛らしい女性。
女性の方はパパのお仕事邪魔しちゃダメよと女の子を諌めているけれど、カーフィンは嬉しそうに少女を抱き上げて、女の子もキャッキャッと嬉しそうな声を漏らしている。
私はそんな姿を、微笑ましく見守る。
カーフィンは結婚して、子供を授かっていた。
「あまり走ったら、お腹の子に良くないよ」
カーフィンが心配そうに女性に声を掛けて、女性はそうねとお腹を優しくさすっている。
彼らの幸せが、自分のことのように嬉しい。
心配そうにする両親を見てか、女の子が十字架の前までトコトコと歩いて祈りのポーズをする。
「げんきなあかちゃんが、うまれますように!」
カーフィンはそんな娘を見て、嬉しそうにふっと微笑んで同じように祈りのポーズをとる。
『見守っていてくれ。アルサ、イラホン様』
カーフィンが心の中で、そう語りかけてきた。
「もちろん。幸せに、カーフィン」
私はそう返して、彼らにパワーを与えて幸せを祈った。
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