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第五章 嵐のような友神たち
第十七話
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今日は私達の結婚を知ったイラホン様のご友神が来訪するとのことで、その出迎えのために屋敷でゆっくり待ちながら過ごしていた。
イラホン様以外の神様とお会いするのは初めてだし、うまく立ち回れるだろうかと不安が多いけれど……イラホン様は大丈夫だよと優しく微笑んでくれていた。
それに対して私もぎこちなくではあるが笑顔を返すと、イラホン様は私の頬を優しく撫でてくれる。
自分で言うのも何だが、イラホン様の妻になってからそれなりに人間らしくなったというか……表情が出るようになったし、少しずつ心も変化していっているのを感じている。
イラホン様とのやり取りも、夫婦らしくなったのではないかと思っている。
……このまま、イラホン様とのご友神ともより良い関係を築ければ良いな。
「失礼いたします。お客様がお見えになりましたので、応接室までお越しくださいませ」
部屋に入ってきたマラクがそう知らせてくれたので、胸に手を当ててゆっくりと深呼吸をしてから二人揃って応接室へと向かうことにした。
「よぉ、よく来てくれたな」
イラホン様が先に応接室に入ると、いつもと違ったフランクな口調でご友神にそう話しかけていた。
やはりご友神の前だと、口調も変わるものなのねと少しだけ新鮮味を感じた。
「紹介しよう。彼女が俺の妻、アルサだ」
イラホン様にご紹介いただいて、私も続いて部屋に入る。
応接室には夜空を映した海のような紫色の髪に、どこまでも沈んでいく深さを感じるネイビーの瞳をした見目麗しい男性がソファに座っていた。
「やぁ、はじめまして~。君がアルサちゃんか~。僕はバハロン。よろしくね~」
イラホン様とはまた違った、優しい口調でそう話しかけてくださるバハロン様。
私が慌ててお辞儀をすると、そんなに緊張しなくて良いよ~とまた優しく声を掛けてくださったので、良い人なのだなと安心していると、部屋の奥、窓際から女性の声が突き刺さってきた。
「――パッとしない女ね。人間ごときが……いったいどうやってイラホンを誑し込んだのやら」
声のした方に目を向けると、まるでイラホン様と対になっているように感じる美しい金髪を高めの位置でツインテールにしている姿が印象的な、淡いピンクの瞳でこちらを睨みつけている女性がいた。
トゲトゲとした声と言い回し……私に対して、良い感情をお持ちではないらしい。
「あっ、彼女はカティ。一応イラホンの婚約者だったからさ、拗ねてるんだよね~」
私が彼女の敵意に臆していると、バハロン様が飄々とそう教えてくださった。
……こ、婚約者!?
「イ、イラホン様には婚約者がいらっしゃったのですか!?」
「あれ、知らなかったの~? 一応いたんだよね~」
私があまりのことに声を大きくしてバハロン様に尋ねると、知らなかったことに逆にびっくりといった様子で答えてくださった。
イ、イラホン様に婚約者……?
そしてその相手がこちらにいらっしゃるカティ様なのだとすると、それは敵意を向けられて当然のことであろう。
妹に婚約者を奪われた私が、まさか人様の婚約者を奪っていたなんて……知らなかったとは言え、あまりのことにふらりとよろめいてしまった。
そんな私を隣にいたイラホン様が優しく支えてくださる。
「おい。あれは婚約などではなく、カティの一方的な思い込みだ」
めまいを起こしながらも視線をイラホン様の方に向けると、彼はうんざりとした様子でバハロン様にそう言っていて、バハロン様もケラケラと笑っている。
「大丈夫? アルサ。俺に婚約者なんていないし、愛しているのはアルサだけだから誤解しないでね」
私の顔を覗き込むようにしているイラホン様の表情は心配そうで、声はいつも通り優しくて……嘘をついているようには感じられなかった。
ひとまず、ほっと胸をなでおろす。
そして愛していると言われたことに気付いてボッと顔を赤くすると、イラホン様は嬉しそうにニコニコしているし、バハロン様は面白いものを眺めるようにニヤニヤなさっていて恥ずかしかった。
けれど窓際では、納得していないお方が俯きながらプルプルと身体を震わせていた。
「思い込みなんかじゃないわ! ちゃんと結婚するって親に伝えていたし、イラホンの親の了承も得ていたんだから!」
怒り狂っているような、泣き出しそうな表情でそう叫ぶ彼女を、バハロン様とイラホン様はいつも通りと言わんばかりに慣れた様子で耳を塞いで見守っている。
そんな彼女に、やれやれといった様子で答えるイラホン様。
「父の了承など……どうせ好きにしろと言われただけだろ。それに俺自身が納得していないのだから、婚約など成立していない」
その答えに対して口をぎゅっと結んで震えているカティ様と、傑作と言わんばかりに笑っていらっしゃるバハロン様。
……なんだか、一波乱ありそうな予感がした。
イラホン様以外の神様とお会いするのは初めてだし、うまく立ち回れるだろうかと不安が多いけれど……イラホン様は大丈夫だよと優しく微笑んでくれていた。
それに対して私もぎこちなくではあるが笑顔を返すと、イラホン様は私の頬を優しく撫でてくれる。
自分で言うのも何だが、イラホン様の妻になってからそれなりに人間らしくなったというか……表情が出るようになったし、少しずつ心も変化していっているのを感じている。
イラホン様とのやり取りも、夫婦らしくなったのではないかと思っている。
……このまま、イラホン様とのご友神ともより良い関係を築ければ良いな。
「失礼いたします。お客様がお見えになりましたので、応接室までお越しくださいませ」
部屋に入ってきたマラクがそう知らせてくれたので、胸に手を当ててゆっくりと深呼吸をしてから二人揃って応接室へと向かうことにした。
「よぉ、よく来てくれたな」
イラホン様が先に応接室に入ると、いつもと違ったフランクな口調でご友神にそう話しかけていた。
やはりご友神の前だと、口調も変わるものなのねと少しだけ新鮮味を感じた。
「紹介しよう。彼女が俺の妻、アルサだ」
イラホン様にご紹介いただいて、私も続いて部屋に入る。
応接室には夜空を映した海のような紫色の髪に、どこまでも沈んでいく深さを感じるネイビーの瞳をした見目麗しい男性がソファに座っていた。
「やぁ、はじめまして~。君がアルサちゃんか~。僕はバハロン。よろしくね~」
イラホン様とはまた違った、優しい口調でそう話しかけてくださるバハロン様。
私が慌ててお辞儀をすると、そんなに緊張しなくて良いよ~とまた優しく声を掛けてくださったので、良い人なのだなと安心していると、部屋の奥、窓際から女性の声が突き刺さってきた。
「――パッとしない女ね。人間ごときが……いったいどうやってイラホンを誑し込んだのやら」
声のした方に目を向けると、まるでイラホン様と対になっているように感じる美しい金髪を高めの位置でツインテールにしている姿が印象的な、淡いピンクの瞳でこちらを睨みつけている女性がいた。
トゲトゲとした声と言い回し……私に対して、良い感情をお持ちではないらしい。
「あっ、彼女はカティ。一応イラホンの婚約者だったからさ、拗ねてるんだよね~」
私が彼女の敵意に臆していると、バハロン様が飄々とそう教えてくださった。
……こ、婚約者!?
「イ、イラホン様には婚約者がいらっしゃったのですか!?」
「あれ、知らなかったの~? 一応いたんだよね~」
私があまりのことに声を大きくしてバハロン様に尋ねると、知らなかったことに逆にびっくりといった様子で答えてくださった。
イ、イラホン様に婚約者……?
そしてその相手がこちらにいらっしゃるカティ様なのだとすると、それは敵意を向けられて当然のことであろう。
妹に婚約者を奪われた私が、まさか人様の婚約者を奪っていたなんて……知らなかったとは言え、あまりのことにふらりとよろめいてしまった。
そんな私を隣にいたイラホン様が優しく支えてくださる。
「おい。あれは婚約などではなく、カティの一方的な思い込みだ」
めまいを起こしながらも視線をイラホン様の方に向けると、彼はうんざりとした様子でバハロン様にそう言っていて、バハロン様もケラケラと笑っている。
「大丈夫? アルサ。俺に婚約者なんていないし、愛しているのはアルサだけだから誤解しないでね」
私の顔を覗き込むようにしているイラホン様の表情は心配そうで、声はいつも通り優しくて……嘘をついているようには感じられなかった。
ひとまず、ほっと胸をなでおろす。
そして愛していると言われたことに気付いてボッと顔を赤くすると、イラホン様は嬉しそうにニコニコしているし、バハロン様は面白いものを眺めるようにニヤニヤなさっていて恥ずかしかった。
けれど窓際では、納得していないお方が俯きながらプルプルと身体を震わせていた。
「思い込みなんかじゃないわ! ちゃんと結婚するって親に伝えていたし、イラホンの親の了承も得ていたんだから!」
怒り狂っているような、泣き出しそうな表情でそう叫ぶ彼女を、バハロン様とイラホン様はいつも通りと言わんばかりに慣れた様子で耳を塞いで見守っている。
そんな彼女に、やれやれといった様子で答えるイラホン様。
「父の了承など……どうせ好きにしろと言われただけだろ。それに俺自身が納得していないのだから、婚約など成立していない」
その答えに対して口をぎゅっと結んで震えているカティ様と、傑作と言わんばかりに笑っていらっしゃるバハロン様。
……なんだか、一波乱ありそうな予感がした。
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