8 / 39
第二章 バレンタイン大作戦
第八話
しおりを挟む
翌日、朝一に学園の調理場の一角を借りて、チョコレートをつくるために私とアミーラは集まった。
プレゼントするチョコはアミーラが料理初心者ということもあり、少ない材料で簡単につくれるチョコレートトリュフにした。
朝一に作って冷やせば、放課後には出来上がって王子に渡せるだろうからね。
前世の記憶から簡単なチョコレートといえばとチョコレートトリュフを選んだけど、よくよく考えてみれば私もそこまで料理上手なわけではないので……かなり不安なクッキングになった。
ここはどうすれば、分量など細かいことが何もわからないし……この時代にはスマホも料理本なんて便利なものもないため、かなり苦戦した。
材料は失敗も予想して多めに買っていたとはいえ、そんなに無駄にできる余裕もないため困惑していると……調理場の隅から興味深そうに見ていたシェフの一人が声を掛けてくれた。
「何を作っているんですか?」
突然声を掛けた彼に驚きながらも、チョコレートトリュフを作っていると答えると、シェフはなるほどと言って、私たちの買ってきた材料を一から確認してからお手伝いしますと手慣れた様子で指示を始めた。
チョコレートを溶かす、少し冷ます、一口大に丸めてくっつかないように並べる、ココアパウダーをまぶすなど、細かく丁寧に教えてくれた。
一人が声を掛けてきたことで他の者も話しかけやすくなったのか私も私も……と、次々に他のシェフたちが声を掛けてきてくれた。
バレンタインデーのチョコを作りたいんですと伝えると、じゃああくまでもお手伝いだけしますねと言って準備や片付けなどをメインに手伝ってくれて助かった。
学校で従事しているシェフやメイドは平民なことが多いから、バレンタインデーの準備や思い入れにも理解があって助かった。
ただ上位貴族らしい見た目をしているアミーラが料理をしていることにはかなり驚いている様子で、私に比べると少しだけ声を掛けにくそうにしている様子が感じられた。
まぁ、平民丸出しの見た目で上位貴族と一目で分かるアミーラに声を掛けて仲良くしたいと思っている私の方が、どちらかといえばこの世界では異質だからね。
けれどアミーラは彼らを見下すことなく、分からないことは素直に尋ねるし、教えてもらったらちゃんと感謝もしていて……おっかなびっくりだったシェフたちも段々とアミーラに対する空気が柔らかくなっていくのを感じた。
もう、アミーラは人たらしだなぁとちょっとだけ拗ねたのは内緒だ。
そうこうしている間に、チョコレートトリュフが無事完成!
あとは放課後にまた来て、冷えたチョコをラッピングして王子に渡せばOKだ!
シェフに感謝と放課後に取りにくる旨を伝え、フッとアミーラの方を見ると、少し離れた位置から私のことを羨ましそうに見ていた。
「チョコレート作り、何とか無事に終わってよかったね!」
「そうね、ナジマのおかげだわ」
どうしたのかと思ってアミーラの方に駆け寄り、声を掛けるとアミーラは少し寂しそうな拗ねた調子で言葉を返した。
「どうしたの?」
チョコレートもできた、あとは放課後にラッピングするだけ……チョコレートを作っている時はあんなに気合が入った表情をしていたのに、どうしたことか今のアミーラの顔は少し暗い。
心配になって尋ねると、アミーラは少しばつが悪そうな恥ずかしそうな表情をする。
「……ナジマが、シェフと楽しそうに話していたから……」
この人は……私をキュン死させる天才なのだろうか。
「大好きだよ、アミーラ」
お返しに懇親のヒロインスマイルをお見舞いした。
アミーラは言葉にならないくらい顔を真赤にして、恥ずかしそうにしていた。
前世の私だったらこんな言葉はなかなか言えないけど、今は乙女ゲームのヒロインに転生したんだから……これくらいのことはやっても許されるよね。
そんな時、タイミング良く午後のチャイムが鳴り、私達は足早にそれぞれのクラスへと戻って午後の授業をこなしながら放課後を待った。
プレゼントするチョコはアミーラが料理初心者ということもあり、少ない材料で簡単につくれるチョコレートトリュフにした。
朝一に作って冷やせば、放課後には出来上がって王子に渡せるだろうからね。
前世の記憶から簡単なチョコレートといえばとチョコレートトリュフを選んだけど、よくよく考えてみれば私もそこまで料理上手なわけではないので……かなり不安なクッキングになった。
ここはどうすれば、分量など細かいことが何もわからないし……この時代にはスマホも料理本なんて便利なものもないため、かなり苦戦した。
材料は失敗も予想して多めに買っていたとはいえ、そんなに無駄にできる余裕もないため困惑していると……調理場の隅から興味深そうに見ていたシェフの一人が声を掛けてくれた。
「何を作っているんですか?」
突然声を掛けた彼に驚きながらも、チョコレートトリュフを作っていると答えると、シェフはなるほどと言って、私たちの買ってきた材料を一から確認してからお手伝いしますと手慣れた様子で指示を始めた。
チョコレートを溶かす、少し冷ます、一口大に丸めてくっつかないように並べる、ココアパウダーをまぶすなど、細かく丁寧に教えてくれた。
一人が声を掛けてきたことで他の者も話しかけやすくなったのか私も私も……と、次々に他のシェフたちが声を掛けてきてくれた。
バレンタインデーのチョコを作りたいんですと伝えると、じゃああくまでもお手伝いだけしますねと言って準備や片付けなどをメインに手伝ってくれて助かった。
学校で従事しているシェフやメイドは平民なことが多いから、バレンタインデーの準備や思い入れにも理解があって助かった。
ただ上位貴族らしい見た目をしているアミーラが料理をしていることにはかなり驚いている様子で、私に比べると少しだけ声を掛けにくそうにしている様子が感じられた。
まぁ、平民丸出しの見た目で上位貴族と一目で分かるアミーラに声を掛けて仲良くしたいと思っている私の方が、どちらかといえばこの世界では異質だからね。
けれどアミーラは彼らを見下すことなく、分からないことは素直に尋ねるし、教えてもらったらちゃんと感謝もしていて……おっかなびっくりだったシェフたちも段々とアミーラに対する空気が柔らかくなっていくのを感じた。
もう、アミーラは人たらしだなぁとちょっとだけ拗ねたのは内緒だ。
そうこうしている間に、チョコレートトリュフが無事完成!
あとは放課後にまた来て、冷えたチョコをラッピングして王子に渡せばOKだ!
シェフに感謝と放課後に取りにくる旨を伝え、フッとアミーラの方を見ると、少し離れた位置から私のことを羨ましそうに見ていた。
「チョコレート作り、何とか無事に終わってよかったね!」
「そうね、ナジマのおかげだわ」
どうしたのかと思ってアミーラの方に駆け寄り、声を掛けるとアミーラは少し寂しそうな拗ねた調子で言葉を返した。
「どうしたの?」
チョコレートもできた、あとは放課後にラッピングするだけ……チョコレートを作っている時はあんなに気合が入った表情をしていたのに、どうしたことか今のアミーラの顔は少し暗い。
心配になって尋ねると、アミーラは少しばつが悪そうな恥ずかしそうな表情をする。
「……ナジマが、シェフと楽しそうに話していたから……」
この人は……私をキュン死させる天才なのだろうか。
「大好きだよ、アミーラ」
お返しに懇親のヒロインスマイルをお見舞いした。
アミーラは言葉にならないくらい顔を真赤にして、恥ずかしそうにしていた。
前世の私だったらこんな言葉はなかなか言えないけど、今は乙女ゲームのヒロインに転生したんだから……これくらいのことはやっても許されるよね。
そんな時、タイミング良く午後のチャイムが鳴り、私達は足早にそれぞれのクラスへと戻って午後の授業をこなしながら放課後を待った。
1
更新の励みになりますので
お気に入り登録・しおり・感想・エールを
ぜひよろしくお願いいたします(*´ω`*)
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる