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第四章 ダンスパーティーとかムリ……
第十七話
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アミーラと王子の恋の始まりを感じ、幸せいっぱいだったのも束の間……すぐに楽しくない学園OBとのダンスタイムがやってきた。
最初はアミーラに教わった通りに、普通に誰かと踊るだけの予定だったのだが……公爵令嬢のアミーラとダンスを踊ったことで私は注目されていたらしく、多くの学園OBからダンスの申込みを受けてしまう。
おそらくアミーラとお近づきになりたいけど、彼女にあしらわれてしまったか爵位的に踊りを申し込むのが難しい人たちがこっちに流れてきているという感じだろう。
ここで私がダンスを踊ってしまうと、これをきっかけにアミーラに近づこうなどという不届きな者が現れかねない……アミーラの邪魔をしないためにも、それは避けなければならない。
かと言って、学園OBとのダンスは必須だから全員断って踊らないってわけにはいかない……どうしたものかと悩んでいると、少し離れた壁際に見知った顔を見かけた。
「申し訳ありません、先約があるので……」
私は集まっている学園OBに咄嗟にそう告げてその場を後にし、その人のもとに向かった。
「あの……ワハイドさん!」
アミーラと王子様の街デートを尾行していた時に出会ったワハイドに声を掛けると、彼はあの時と同じにこやかな笑顔を向けてくれた。
「ナジマ、久しぶり。何かモテモテだったね」
さっきまでの状況を見られていたらしく、その笑顔にはいたずらっぽい笑みも含まれているようだった。
少しイラッとしたが……今はそんなことにイラついている場合じゃない。
「ワハイドさんは、学園OBなのですか?」
早速ではあるが、要件を伝える。
するとワハイドさんは少しだけ鋭い目つきで微笑んでから、なんでそう思うの? と尋ね返してきた。
「へ? あの、ダンスの相手を探しているので、ただ聞いてみただけですが……」
何か悪いことを聞いたのだろうかと予想外の質問返しに少し戸惑いながらも、私は思ったままを伝える。
私の返事を聞くと、ワハイドはすぐにいつもの笑顔に戻った。
「そっか。うん、俺はこの学園のOBだよ~」
優しい口調で返事をしてくれてホッとすると共に……この見た目で学園OBってことは、やっぱり上位貴族なんじゃないかとハッと気付き、血の気が引く。
「気安くお名前をお呼びしてしまって、申し訳ありません」
すぐに謝罪をすると、ワハイドはニコッと笑う。
「そんなの気にしなくて良いよ。変わらずワハイドさんって呼んでよ。何なら呼び捨てでも良いんだよ~」
気にしなくて良いって言うということは、やはり上位貴族なのだろう。
しかし表情を見る限り気にしなくて良いという言葉に嘘はなさそうなので、ホッと胸を撫で下ろしつつお言葉に甘えることにする。
一瞬、ワハイドが上位貴族という驚きが強すぎて忘れかけていたが……私はこの人をダンスに誘おうと思っていたんだよな。
でも上位貴族と分かった今……ダンスに誘うのは少し抵抗があるなぁ。
もし私が本当にヒロインだったのであれば、王族だろうと上位貴族だろうと気にすること無くダンスに誘うことができたのだろうが……私自身はなかなかそんな風に天真爛漫にはなれない。
なかなか誘えずにいると、ワハイドが私の顔を覗き込む。
「……で? 俺をダンスに誘ってくれないの?」
さっきよりもいたずらっぽくニコっと笑って、ワハイドがそう言う。
ふいな笑顔にドキッとして、少し顔が熱くなるのを感じる。
なんでバレた!? と驚いたが、そういえばさっきダンスの相手を探しているって言っちゃってたな……というのを思い出した。
バレてるならしょうがないと、意を決してワハイドを誘うことにした。
「ワハイドさん。良ければ私と踊っていただけませんか?」
アミーラとのダンス練習で習ったとおり、背筋を伸ばしながらスカートの端を持ちつつ少し膝を曲げてお辞儀をしてダンスを申し込む。
何だかんだでこの方法でダンスを申し込むのは初めてで……ちゃんとできているか不安だし、ダンスの申込みを受けてくれるだろうかという緊張も相まって心臓がドキドキする。
するとワハイドが左腕を後ろに回し、右腕を差し出す。
「もちろん。俺と踊ってください、ナジマ」
本来であれば男性から女性を誘うのが正式なためか、ワハイドは改めて誘う形で私のダンスを受けてくれた。
私はワハイドが差し出してくれた手を取り、ダンスホールへと入る。
アミーラの時は緊張もあったものの、嬉しさの方が強くてなんとか大丈夫だったが……いざダンスをするとなると、また少し緊張してきた。
間違わないように、間違わないように……アミーラの教えを思い出しながらダンスに望む。
まずダンスホールに入ったらよろしくおねがいしますの意味を込めてお辞儀をして、男性に身を委ねるように自然な所作でポージングして……。
そして大切な人と踊るイメージ。
私はアミーラと自分とのダンスを思い出しながら……アミーラがしていたような柔らかい微笑みでワハイドを見つめ、曲に合わせて踊り始める。
すると踊っている最中に、ワハイドが声を掛けてきた。
「なんで俺を選んでくれたの?」
チラッとワハイドの方を見ると、彼はダンスの姿勢を崩さないように前を見たまま話しかけてきていたので……私も彼に習って視線を戻してから答える。
「私のことをダンスに誘ってくださるOBの方々が、大切な友達に対して下心アリアリな方ばかりだったので……彼らとは踊りたくなかったのです」
できるだけ楽しそうな表情を崩さないようにと思っていたが、話しながら思い出してしまったので完全に荒んだ顔をしてしまった気がする。
するとプッと吹き出したワハイドが、そのまま大声で笑い出したいのを堪えるようにしながら続ける。
「なるほど。俺ならナジマの友達に興味がないのはお墨付きだもんね」
はいと私が答えると、ワハイドはまだ楽しそうに笑っている。
「どんな理由であれ、選んでいただけて光栄です」
そんなことを言いながら、実に楽しそうな顔をしている。
そんなに吹き出すほど変なことを言っただろうかとは思うが……何であれ楽しそうに踊ってもらえて良かった。
少し緊張がほぐれて……改めてダンスに集中してみると、彼のダンスにとても安心感があることに気がついた。
ダンス技術の高さもさることながら、楽しそうにしてくれているのも伝わってくるし……何かに包まれているような温かい気持ちになる『何か』がある。
なんだろうと不思議に思っていると、ワハイドがチラッとこちらを見た。
「……ん?」
そして吐息のような声を漏らしながら、微笑みかけてくる。
ふいに見せる笑顔に、また不覚にもドキッとしてしまった。
アラサーだった前世からすると、彼は私よりも年下だと思うのだけど……今は学生のナジマになって大人との関わりがあまりないためか、どうも大人の余裕のようなものを見せられるとドキッとしてしまうな。
自分の意外な弱点に気付きながらも、何でもないですよと答えると、またワハイドが楽しそうに少し笑っている。
その笑顔になぜだか私もつられてしまって……二人して周りにバレないように笑いながら、楽しくダンスを踊ってダンスパーティーは終わりを迎えた。
最初はアミーラに教わった通りに、普通に誰かと踊るだけの予定だったのだが……公爵令嬢のアミーラとダンスを踊ったことで私は注目されていたらしく、多くの学園OBからダンスの申込みを受けてしまう。
おそらくアミーラとお近づきになりたいけど、彼女にあしらわれてしまったか爵位的に踊りを申し込むのが難しい人たちがこっちに流れてきているという感じだろう。
ここで私がダンスを踊ってしまうと、これをきっかけにアミーラに近づこうなどという不届きな者が現れかねない……アミーラの邪魔をしないためにも、それは避けなければならない。
かと言って、学園OBとのダンスは必須だから全員断って踊らないってわけにはいかない……どうしたものかと悩んでいると、少し離れた壁際に見知った顔を見かけた。
「申し訳ありません、先約があるので……」
私は集まっている学園OBに咄嗟にそう告げてその場を後にし、その人のもとに向かった。
「あの……ワハイドさん!」
アミーラと王子様の街デートを尾行していた時に出会ったワハイドに声を掛けると、彼はあの時と同じにこやかな笑顔を向けてくれた。
「ナジマ、久しぶり。何かモテモテだったね」
さっきまでの状況を見られていたらしく、その笑顔にはいたずらっぽい笑みも含まれているようだった。
少しイラッとしたが……今はそんなことにイラついている場合じゃない。
「ワハイドさんは、学園OBなのですか?」
早速ではあるが、要件を伝える。
するとワハイドさんは少しだけ鋭い目つきで微笑んでから、なんでそう思うの? と尋ね返してきた。
「へ? あの、ダンスの相手を探しているので、ただ聞いてみただけですが……」
何か悪いことを聞いたのだろうかと予想外の質問返しに少し戸惑いながらも、私は思ったままを伝える。
私の返事を聞くと、ワハイドはすぐにいつもの笑顔に戻った。
「そっか。うん、俺はこの学園のOBだよ~」
優しい口調で返事をしてくれてホッとすると共に……この見た目で学園OBってことは、やっぱり上位貴族なんじゃないかとハッと気付き、血の気が引く。
「気安くお名前をお呼びしてしまって、申し訳ありません」
すぐに謝罪をすると、ワハイドはニコッと笑う。
「そんなの気にしなくて良いよ。変わらずワハイドさんって呼んでよ。何なら呼び捨てでも良いんだよ~」
気にしなくて良いって言うということは、やはり上位貴族なのだろう。
しかし表情を見る限り気にしなくて良いという言葉に嘘はなさそうなので、ホッと胸を撫で下ろしつつお言葉に甘えることにする。
一瞬、ワハイドが上位貴族という驚きが強すぎて忘れかけていたが……私はこの人をダンスに誘おうと思っていたんだよな。
でも上位貴族と分かった今……ダンスに誘うのは少し抵抗があるなぁ。
もし私が本当にヒロインだったのであれば、王族だろうと上位貴族だろうと気にすること無くダンスに誘うことができたのだろうが……私自身はなかなかそんな風に天真爛漫にはなれない。
なかなか誘えずにいると、ワハイドが私の顔を覗き込む。
「……で? 俺をダンスに誘ってくれないの?」
さっきよりもいたずらっぽくニコっと笑って、ワハイドがそう言う。
ふいな笑顔にドキッとして、少し顔が熱くなるのを感じる。
なんでバレた!? と驚いたが、そういえばさっきダンスの相手を探しているって言っちゃってたな……というのを思い出した。
バレてるならしょうがないと、意を決してワハイドを誘うことにした。
「ワハイドさん。良ければ私と踊っていただけませんか?」
アミーラとのダンス練習で習ったとおり、背筋を伸ばしながらスカートの端を持ちつつ少し膝を曲げてお辞儀をしてダンスを申し込む。
何だかんだでこの方法でダンスを申し込むのは初めてで……ちゃんとできているか不安だし、ダンスの申込みを受けてくれるだろうかという緊張も相まって心臓がドキドキする。
するとワハイドが左腕を後ろに回し、右腕を差し出す。
「もちろん。俺と踊ってください、ナジマ」
本来であれば男性から女性を誘うのが正式なためか、ワハイドは改めて誘う形で私のダンスを受けてくれた。
私はワハイドが差し出してくれた手を取り、ダンスホールへと入る。
アミーラの時は緊張もあったものの、嬉しさの方が強くてなんとか大丈夫だったが……いざダンスをするとなると、また少し緊張してきた。
間違わないように、間違わないように……アミーラの教えを思い出しながらダンスに望む。
まずダンスホールに入ったらよろしくおねがいしますの意味を込めてお辞儀をして、男性に身を委ねるように自然な所作でポージングして……。
そして大切な人と踊るイメージ。
私はアミーラと自分とのダンスを思い出しながら……アミーラがしていたような柔らかい微笑みでワハイドを見つめ、曲に合わせて踊り始める。
すると踊っている最中に、ワハイドが声を掛けてきた。
「なんで俺を選んでくれたの?」
チラッとワハイドの方を見ると、彼はダンスの姿勢を崩さないように前を見たまま話しかけてきていたので……私も彼に習って視線を戻してから答える。
「私のことをダンスに誘ってくださるOBの方々が、大切な友達に対して下心アリアリな方ばかりだったので……彼らとは踊りたくなかったのです」
できるだけ楽しそうな表情を崩さないようにと思っていたが、話しながら思い出してしまったので完全に荒んだ顔をしてしまった気がする。
するとプッと吹き出したワハイドが、そのまま大声で笑い出したいのを堪えるようにしながら続ける。
「なるほど。俺ならナジマの友達に興味がないのはお墨付きだもんね」
はいと私が答えると、ワハイドはまだ楽しそうに笑っている。
「どんな理由であれ、選んでいただけて光栄です」
そんなことを言いながら、実に楽しそうな顔をしている。
そんなに吹き出すほど変なことを言っただろうかとは思うが……何であれ楽しそうに踊ってもらえて良かった。
少し緊張がほぐれて……改めてダンスに集中してみると、彼のダンスにとても安心感があることに気がついた。
ダンス技術の高さもさることながら、楽しそうにしてくれているのも伝わってくるし……何かに包まれているような温かい気持ちになる『何か』がある。
なんだろうと不思議に思っていると、ワハイドがチラッとこちらを見た。
「……ん?」
そして吐息のような声を漏らしながら、微笑みかけてくる。
ふいに見せる笑顔に、また不覚にもドキッとしてしまった。
アラサーだった前世からすると、彼は私よりも年下だと思うのだけど……今は学生のナジマになって大人との関わりがあまりないためか、どうも大人の余裕のようなものを見せられるとドキッとしてしまうな。
自分の意外な弱点に気付きながらも、何でもないですよと答えると、またワハイドが楽しそうに少し笑っている。
その笑顔になぜだか私もつられてしまって……二人して周りにバレないように笑いながら、楽しくダンスを踊ってダンスパーティーは終わりを迎えた。
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