10 / 39
第三章 デートでリベンジ!
第十話
しおりを挟む
バレンタインの悪夢から……数ヶ月が過ぎた。
王子の仕打ちに悲しむアミーラを目の当たりにしたためか、どうしてもすぐに王子攻略! アミーラヒロイン化計画! と気持ちを切り替えることができなくて、時ばかりが過ぎていた。
ただ相変わらず放課後に図書室でお話をしたり、昼食を共にして……最初はどこか悲しい顔をしていた彼女にも、次第に以前と同じような笑顔が戻ってくるようになった。
彼女の心の傷が少しずつ癒えていくにつれて、私もしっかりと気合を入れなければと、立ち直りはじめていた。
アミーラの不幸を回避しようとしていたんだろう! 彼女を助けられるのは自分だけ! と一喝して、私は新たな計画をアミーラに告げようと考えていた。
ゲーム内でバレンタインの次にあったのは……デートイベント。
現状だと起こすことすら難しいイベントかもしれないが、ゲーム内のヒロインとのイベントはできるだけ起こしたい……何としても成功させなければ!
そう意気込んだ放課後、いつもの図書室の扉を開けた。
「アミーラ! 王子様と街へお出かけをしてみてはどうかな!」
入室と同時に突拍子もないことを言い出した私に、目を丸くするアミーラは……バレンタインでのことを思い出したのか、すぐに伏し目がちになってしまった。
「でも……私は……」
珍しく歯切れが悪く言いよどむアミーラ。
そりゃそうだ、この前あんなひどい仕打ちを受けたばかり……数ヶ月で多少の傷が言えたと言っても、あれ以来、アミーラは王子様と挨拶することすらままならず会話を交わしていなかった。
今まで王子様は無視こそするけど、アミーラを拒絶することはなかったから……婚約者だから嫌われてはいないと思っていたアミーラの心の傷は深いだろう。
私にも苦い思い出が広がってチクッと胸が痛むが、ここで諦めるわけにはいかないと彼女の説得を試みる。
「バレンタインでのことは……私の配慮が足りていなかったわ。私のせいであんなことになって2人の仲が悪くなったのではないかと、ずっと気になっていたの」
私がそう言うと、アミーラは微笑んでくれた。
「あなたのせいじゃないわ。それに、仲が悪くなるなんて……」
アミーラの表情は微笑みからだんだん曇っていき、何かを言いかけたが言うことができずに口をつぐんでいた。
あんなに自信に満ちあふれていたアミーラのオーラが、小さくしぼんでいくのを感じる。
私としてはあんなツンドラ王子なんてこっちから捨ててやれ! と言いたいところだが、アミーラの初恋の人を悪く言うことはできない……アミーラはあんな奴でも、本当に愛しているのだから。
愛しているからこそ幼い頃からずっと婚約者を目指して努力して、婚約者になってからも王子様が恥ずかしくないように……彼と良い関係を築けるように努力しているのだ。
だから彼女を幸せにしたいのならば、その先にあるのはあの王子様とのハッピーエンドしかない。
ここで私が踏ん張らなければ!
暗い顔をするアミーラに、私はあえてパッと明るい顔をして彼女に話しかける。
「でもバレンタインデーのあの日、アミーラと街を散策するのは本当に楽しかった! 出店で珍しいお菓子を食べたり、雑貨屋さんで小物を見たり……街がすごくキラキラして見えたの」
あんなことがあった、こんなことがあったと楽しそうに話す私に……アミーラも思い出してきたのか、少しだけ顔に微笑みが戻ってきた。
「だからね……今度は王子と出かけてみたら、二人共楽しめるんじゃないかなと思ったの」
私がそう言うと、アミーラは少し目線を下げながら何かを考えだしていた。
正直言って私も自信があるとは言えない……でもやらなければならない! と心の内側でぐっと何かをこらえてアミーラをまっすぐ見つめていると、顔を上げた彼女と目があった。
その表情は暗い顔ではなく、バレンタイン前のような意思の強さと乙女心を感じさせる顔をしていた。
「そうね。婚約者として……私もエスネイニ様ともっと仲良くなりたいわ」
ニコッと笑った彼女の顔を見て、私はひとまずホッと胸をなでおろす。
まずはアミーラの説得は成功したようだ。
問題はあのツンドラ王子……アミーラがデートに行きましょうと誘っても、あの男は来ないと答える可能性が高い。
だが前回の失敗をもとに改めて計画を練り直した私には、デートイベント成功に向けてちょっとした秘策があった。
王子の仕打ちに悲しむアミーラを目の当たりにしたためか、どうしてもすぐに王子攻略! アミーラヒロイン化計画! と気持ちを切り替えることができなくて、時ばかりが過ぎていた。
ただ相変わらず放課後に図書室でお話をしたり、昼食を共にして……最初はどこか悲しい顔をしていた彼女にも、次第に以前と同じような笑顔が戻ってくるようになった。
彼女の心の傷が少しずつ癒えていくにつれて、私もしっかりと気合を入れなければと、立ち直りはじめていた。
アミーラの不幸を回避しようとしていたんだろう! 彼女を助けられるのは自分だけ! と一喝して、私は新たな計画をアミーラに告げようと考えていた。
ゲーム内でバレンタインの次にあったのは……デートイベント。
現状だと起こすことすら難しいイベントかもしれないが、ゲーム内のヒロインとのイベントはできるだけ起こしたい……何としても成功させなければ!
そう意気込んだ放課後、いつもの図書室の扉を開けた。
「アミーラ! 王子様と街へお出かけをしてみてはどうかな!」
入室と同時に突拍子もないことを言い出した私に、目を丸くするアミーラは……バレンタインでのことを思い出したのか、すぐに伏し目がちになってしまった。
「でも……私は……」
珍しく歯切れが悪く言いよどむアミーラ。
そりゃそうだ、この前あんなひどい仕打ちを受けたばかり……数ヶ月で多少の傷が言えたと言っても、あれ以来、アミーラは王子様と挨拶することすらままならず会話を交わしていなかった。
今まで王子様は無視こそするけど、アミーラを拒絶することはなかったから……婚約者だから嫌われてはいないと思っていたアミーラの心の傷は深いだろう。
私にも苦い思い出が広がってチクッと胸が痛むが、ここで諦めるわけにはいかないと彼女の説得を試みる。
「バレンタインでのことは……私の配慮が足りていなかったわ。私のせいであんなことになって2人の仲が悪くなったのではないかと、ずっと気になっていたの」
私がそう言うと、アミーラは微笑んでくれた。
「あなたのせいじゃないわ。それに、仲が悪くなるなんて……」
アミーラの表情は微笑みからだんだん曇っていき、何かを言いかけたが言うことができずに口をつぐんでいた。
あんなに自信に満ちあふれていたアミーラのオーラが、小さくしぼんでいくのを感じる。
私としてはあんなツンドラ王子なんてこっちから捨ててやれ! と言いたいところだが、アミーラの初恋の人を悪く言うことはできない……アミーラはあんな奴でも、本当に愛しているのだから。
愛しているからこそ幼い頃からずっと婚約者を目指して努力して、婚約者になってからも王子様が恥ずかしくないように……彼と良い関係を築けるように努力しているのだ。
だから彼女を幸せにしたいのならば、その先にあるのはあの王子様とのハッピーエンドしかない。
ここで私が踏ん張らなければ!
暗い顔をするアミーラに、私はあえてパッと明るい顔をして彼女に話しかける。
「でもバレンタインデーのあの日、アミーラと街を散策するのは本当に楽しかった! 出店で珍しいお菓子を食べたり、雑貨屋さんで小物を見たり……街がすごくキラキラして見えたの」
あんなことがあった、こんなことがあったと楽しそうに話す私に……アミーラも思い出してきたのか、少しだけ顔に微笑みが戻ってきた。
「だからね……今度は王子と出かけてみたら、二人共楽しめるんじゃないかなと思ったの」
私がそう言うと、アミーラは少し目線を下げながら何かを考えだしていた。
正直言って私も自信があるとは言えない……でもやらなければならない! と心の内側でぐっと何かをこらえてアミーラをまっすぐ見つめていると、顔を上げた彼女と目があった。
その表情は暗い顔ではなく、バレンタイン前のような意思の強さと乙女心を感じさせる顔をしていた。
「そうね。婚約者として……私もエスネイニ様ともっと仲良くなりたいわ」
ニコッと笑った彼女の顔を見て、私はひとまずホッと胸をなでおろす。
まずはアミーラの説得は成功したようだ。
問題はあのツンドラ王子……アミーラがデートに行きましょうと誘っても、あの男は来ないと答える可能性が高い。
だが前回の失敗をもとに改めて計画を練り直した私には、デートイベント成功に向けてちょっとした秘策があった。
1
更新の励みになりますので
お気に入り登録・しおり・感想・エールを
ぜひよろしくお願いいたします(*´ω`*)
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる