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第二章 バレンタイン大作戦
第六話
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アミーラとお友達になってから一ヶ月が経った。
アミーラと友達になれた喜びは一ヶ月経とうと薄れることはなく、私は浮かれ散らしながらいつも通り図書室に向かって廊下を歩いていた。
そんな私を避けるように、向こう岸から歩いてきた同じクラスの女子生徒たちが走り去っていく。
……実はこの一ヶ月で、ゲームのイベントがいくつか起きていた。
まずは先程私を避けていった彼女たち。
彼女たちはゲームではストーリー序盤で転入してきた元庶民の私をイジメてくる、悪役令嬢のアミーラとは別に用意されたいじめっ子モブだ。
だがゲームのヒロインと違ってアミーラ以外に関わっている時間が惜しかった私は、彼女たちのことをフルシカトしていた。
嫌味を言われようとも、先生に呼ばれているので失礼いたしますで、そそくさとその場を立ち去り……。
寮の私室を荒らされるイベントは、転入初日に元平民だから鍵のない部屋は不安と教師陣を説得していたおかげで、特別に鍵付きの部屋をもらうことで完全回避できていた。
そして編入から一ヶ月が経った今となっては……私とアミーラが図書室で談笑しているところを見かけた者がいたらしく、上級生かつ上位貴族であるアミーラに咎められることを恐れたのかイジメは完全になくなっていた。
アミーラにまでイジメが飛び火したらどうシメてやろうかと心配していたのだが、さすがに公爵令嬢・次期王妃の彼女にそんなことをする度胸はなかったらしい。
そしてもう一つ、ヒロインとしてイケメンたちとの出会いイベントが発生した。
生徒会長・後輩くん・弟くんとは、クラスメイトに嫌味を言われているタイミングで出会った。
ゲームだと為す術なく怯えるヒロインを、イケメンたちが颯爽と救ってくれるというイベントだったのだが……私は怯えていないので、心配して声を掛けてきた彼らに大丈夫ですと告げたため、進展は一切なく終わった。
王子様に関してはもはやゲームの展開とは全く違っていて、お友達になったアミーラが偶然廊下で会った時に紹介してくれるという出会い方になっていた。
ここでも無感情な能面顔で端的な挨拶だけで済ませたおかげで、王子の恋のベクトルがこちらに向く素振りすらなかった。
……というか私が挨拶しても向こうは無視でまともにこちらすら見ていなかったし、そのあとはお互いに無関心すぎて無言の時が流れていたことを思うと、仲良くなれる可能性すら感じられなかった。
まぁ、とにもかくにもクラスメイトのイジメ・イケメンとの出会いイベントをサクッと終わらせることができたので、これからはアミーラヒロイン化計画に専念できそうだ!
王子とアミーラがくっつくように友達として彼女にアドバイスしつつ、ゲーム内でヒロインと起こっていたイベントをアミーラ×王子で再現!
そしてヒロインである私はイケメンに対して無感情な能面顔で、素っ気なさすぎず愛想良すぎない『無』な状態で接することでイベント発生を阻止する!
こうすればヒロインだった私はアミーラの友達というモブキャラになって、悪役令嬢だったアミーラがヒロインになれるはず!
アミーラの明るい未来を考え、心の中で高笑いしながら私は図書室の扉を開けた。
「あっ、ナジマ! 待っていたわ!」
図書室には可愛らしい笑みで、明るく出迎えてくれるアミーラの姿があった。
「……おまたせ、アミーラ」
私の心の中は高笑いからすっかりデレデレ顔になっていたが、その顔は何とか心の内だけに留めて、普通の笑顔を浮かべながら彼女のいる図書室奥の丸テーブルに向かった。
正直……この一ヶ月を振り返るにあたって、クラスメイトのことやイケメンのことはどうでも良いことと言っても過言ではないだろう。
この一ヶ月!
アミーラと放課後に図書室で談笑をしたり、昼食を共にしたり昼食後のティータイムを一緒にしたりしたことで……完全に仲良しなお友達になっていた!
元々いた取り巻き共に関しては、私がアミーラとイチャイチャすることで居づらくなったのか……気付いたらいなくなっていた。別になにかしたつもりはないのだけれどね。
そんなこんなで一ヶ月……ついに身分の差も気にせず、お互い敬称を付けずに呼び合うくらい仲良しになっていた。
そして美しい微笑みだけではなく、私が来ただけで満開に咲き誇る桜のように愛らしい笑顔も見せてくれるようになって……これ以上の幸せがあるでしょうか。
もはや心の中の私は感動に咽び泣いている。
彼女を見つめながら仲良くなれた喜びにじーんっと浸っていると、黙り込んでいる私を心配したのかアミーラがこちらを覗き込むようにしてじーっと見つめ返してきた。
彼女の視線に気がついて少し慌てていると、彼女はニコッとイケメン顔負けの微笑みを見せた。
その破壊力に打ちのめされながら……今日も今日とて、アミーラとお友達になれた喜びを噛み締めて楽しい放課後ライフを過ごした。
アミーラと友達になれた喜びは一ヶ月経とうと薄れることはなく、私は浮かれ散らしながらいつも通り図書室に向かって廊下を歩いていた。
そんな私を避けるように、向こう岸から歩いてきた同じクラスの女子生徒たちが走り去っていく。
……実はこの一ヶ月で、ゲームのイベントがいくつか起きていた。
まずは先程私を避けていった彼女たち。
彼女たちはゲームではストーリー序盤で転入してきた元庶民の私をイジメてくる、悪役令嬢のアミーラとは別に用意されたいじめっ子モブだ。
だがゲームのヒロインと違ってアミーラ以外に関わっている時間が惜しかった私は、彼女たちのことをフルシカトしていた。
嫌味を言われようとも、先生に呼ばれているので失礼いたしますで、そそくさとその場を立ち去り……。
寮の私室を荒らされるイベントは、転入初日に元平民だから鍵のない部屋は不安と教師陣を説得していたおかげで、特別に鍵付きの部屋をもらうことで完全回避できていた。
そして編入から一ヶ月が経った今となっては……私とアミーラが図書室で談笑しているところを見かけた者がいたらしく、上級生かつ上位貴族であるアミーラに咎められることを恐れたのかイジメは完全になくなっていた。
アミーラにまでイジメが飛び火したらどうシメてやろうかと心配していたのだが、さすがに公爵令嬢・次期王妃の彼女にそんなことをする度胸はなかったらしい。
そしてもう一つ、ヒロインとしてイケメンたちとの出会いイベントが発生した。
生徒会長・後輩くん・弟くんとは、クラスメイトに嫌味を言われているタイミングで出会った。
ゲームだと為す術なく怯えるヒロインを、イケメンたちが颯爽と救ってくれるというイベントだったのだが……私は怯えていないので、心配して声を掛けてきた彼らに大丈夫ですと告げたため、進展は一切なく終わった。
王子様に関してはもはやゲームの展開とは全く違っていて、お友達になったアミーラが偶然廊下で会った時に紹介してくれるという出会い方になっていた。
ここでも無感情な能面顔で端的な挨拶だけで済ませたおかげで、王子の恋のベクトルがこちらに向く素振りすらなかった。
……というか私が挨拶しても向こうは無視でまともにこちらすら見ていなかったし、そのあとはお互いに無関心すぎて無言の時が流れていたことを思うと、仲良くなれる可能性すら感じられなかった。
まぁ、とにもかくにもクラスメイトのイジメ・イケメンとの出会いイベントをサクッと終わらせることができたので、これからはアミーラヒロイン化計画に専念できそうだ!
王子とアミーラがくっつくように友達として彼女にアドバイスしつつ、ゲーム内でヒロインと起こっていたイベントをアミーラ×王子で再現!
そしてヒロインである私はイケメンに対して無感情な能面顔で、素っ気なさすぎず愛想良すぎない『無』な状態で接することでイベント発生を阻止する!
こうすればヒロインだった私はアミーラの友達というモブキャラになって、悪役令嬢だったアミーラがヒロインになれるはず!
アミーラの明るい未来を考え、心の中で高笑いしながら私は図書室の扉を開けた。
「あっ、ナジマ! 待っていたわ!」
図書室には可愛らしい笑みで、明るく出迎えてくれるアミーラの姿があった。
「……おまたせ、アミーラ」
私の心の中は高笑いからすっかりデレデレ顔になっていたが、その顔は何とか心の内だけに留めて、普通の笑顔を浮かべながら彼女のいる図書室奥の丸テーブルに向かった。
正直……この一ヶ月を振り返るにあたって、クラスメイトのことやイケメンのことはどうでも良いことと言っても過言ではないだろう。
この一ヶ月!
アミーラと放課後に図書室で談笑をしたり、昼食を共にしたり昼食後のティータイムを一緒にしたりしたことで……完全に仲良しなお友達になっていた!
元々いた取り巻き共に関しては、私がアミーラとイチャイチャすることで居づらくなったのか……気付いたらいなくなっていた。別になにかしたつもりはないのだけれどね。
そんなこんなで一ヶ月……ついに身分の差も気にせず、お互い敬称を付けずに呼び合うくらい仲良しになっていた。
そして美しい微笑みだけではなく、私が来ただけで満開に咲き誇る桜のように愛らしい笑顔も見せてくれるようになって……これ以上の幸せがあるでしょうか。
もはや心の中の私は感動に咽び泣いている。
彼女を見つめながら仲良くなれた喜びにじーんっと浸っていると、黙り込んでいる私を心配したのかアミーラがこちらを覗き込むようにしてじーっと見つめ返してきた。
彼女の視線に気がついて少し慌てていると、彼女はニコッとイケメン顔負けの微笑みを見せた。
その破壊力に打ちのめされながら……今日も今日とて、アミーラとお友達になれた喜びを噛み締めて楽しい放課後ライフを過ごした。
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