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第一章 いざ学園へ!

第三話

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 校門前に降り立った私は早速、学園内へと入っていく。

 学校探索・教師への挨拶など、やらなければならないことはたくさんあるのだが……まずは、どうしてもアミーラに会いたい!

 そう思った私はゲームの記憶を思い出し、彼女がいるであろう場所へと向かった。

 アミーラはいつも登校直後、授業が始まる前に精神統一するために、学園のはずれにある人気のない教会に一人でいることが多かった。

 ゲーム内ではそれが彼女の初登場シーンでもあるのだが、あの時のスチル画は神々しく、彼女の気高さが感じられる美麗イラストで……実に良かったなぁ。

 そんなことを思いながら静かに教会を覗いてみると……彼女はいた。

 腰まで伸ばしたサラサラのブロンドヘア、透き通るようなブルーの瞳、はっきりとした美しい目鼻立ち、遠くからでも分かる自信と気品を感じさせるオーラ。

 ゲーム画面越しで一目惚れした美しい人が、私の目の前に確かに存在していた。

 彼女を見た瞬間、私の目からは涙が零れていた。

 愛すべきアミーラを直に見られた喜びと、思い出したくもなかった彼女の悲劇の記憶が蘇る。

 前世の私は彼女の婚約者である王子様とのストーリーを最初に攻略しようとするのだが……アミーラLOVE過ぎて王子様そっちのけで、常にアミーラ優先の選択肢を選ぶためバッドエンドになっていた。

 それ自体はどうでも良かったのだが……問題はバッドエンド後のアフターストーリーだ。

 ヒロインと結ばれることができなかった王子は、婚約者であるアミーラと結婚して王位を継ぐことになるのだが……王となった彼は、まるで先王のように堕落した日々を送るようになる。

 政治に関しては全て貴族に丸投げ……その結果、甘い汁を吸うだけの悪徳貴族が実権を握るようになってしまい、優秀で真面目な貴族たちは排除され、己の利益のために自己中心的な政策を打ち出すようになっていた。

 そんな状態で国が正常に機能するわけもなく、民は高い税収に耐えられずやせ衰え次々に倒れていく……腐った国が、崩壊した国になった。

 アミーラはそんな王を何度も諌め、貴族にも国の問題点を訴え続けていたが聞き入れられることはなかった。

 そしてある日、ついに不満を爆発させた民たちが数人の貴族を中心に、王政に反旗を翻し王城を攻撃……王と私腹を肥やしていた悪徳貴族たちは追い詰められることになる。

 アミーラは当然の結末と静かにその状況を受け入れていたのだが……諦めの悪い貴族は、彼女こそが王を貶めた悪女だと民衆に告げる。

 王を政治に関わらせないようにしながら税金を湯水のように使い、貴族たちには自分に都合の良い政策を通すように強要していたのだ……と自分の身可愛さに彼女を売った。

 彼女は突然のことに驚き必死に否定したが、ずる賢く実権を握っていた貴族たちの策略に勝てず……民衆としても分かりやすい敵と決着が欲しかったために納得し、彼女は傾国の悪女として処刑されてしまった。

 その後、中心となっていた貴族の努力によって民の意見を取り入れた政策が打ち出されるのだが……私腹を肥やしていた貴族の反発も凄まじく、国はさらに混沌とするエンディングを迎える。

 初めてそのエンディングを見たときは、言葉も出ないほど大きなショックを受けた。

 そこから何とか立ち直った私は、ハッピーエンドにすれば結末が変わるだろうと期待を込めて、王子様とヒロインのストーリーをハッピーエンドにしてみた。

 しかしハッピーエンドに向かうと……ヒロインをイジメていた主犯格だとアミーラが大勢の前で吊るし上げられる断罪イベントが発生し、アミーラは婚約破棄されてしまった。

 実際は彼女の取り巻きが勝手にしていたことでアミーラは関与していない……むしろイジメをやめるように諌めていたのだが、取り巻きたちは彼女に指示されたと言い、誰もアミーラのことを信じてくれなかった。

 そして王子に婚約破棄された令嬢がいてはファハンロ家に迷惑がかかると、彼女は教会に入ることを決意する。

 しかし教会へと向かう道中……彼女は金欲しさに襲ってきた賊の手によって、命を落としてしまう。

 武術にも長けていた彼女であればそんな賊、即座に排除できたはずなのに……婚約破棄・友人たちの裏切り・家族から離れる孤独から、本来の力を発揮できなかったのだろう。

 悲しみに暮れながらも他のキャラクターも攻略してみたが……ハッピーエンドだと断罪イベ→賊に襲われる死亡、バッドエンドではイケメンたちがアミーラを殺すことになる。

 隠しルートはないか、アミーラとの好感度の有無など色々検証してみたが……どんなに頑張ってもアミーラが生き残るエンディングはなかった。

 目の前にいるアミーラは、悲劇的な結末が待っているなんて知らず……美しかった。

 待っててね、あなたは私が何としても幸せな生存ルートへと導いてみせるからね。

 そう心の中で誓い、彼女にバレないようにスッと教会を後にした。
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