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第2章 北条家戦争
江戸解放
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「本当に、もののけどもはみないなくなってしまったのか?」
勝之助は困惑した様子で江戸城内を見て回っていた。
浦賀水道で氏吉が消滅した瞬間、江戸にいた妖怪たちも一斉に姿を消し、捕らわれていた家臣たちは、様子をうかがっていた忍者たちの手によって続々と解放されつつあったのである。
「はい。城内を隈なく調べましたが、もののけたちの姿は全くありませんでした。江戸市中も現在調べておりますが、今のところ姿は確認されておりません」
傍らにいる忍者にも、若干の戸惑いの色が見られる。
「……殿が、お敗れになったということなのか?」
喚び出した者がいなくなったので、妖怪たちは姿を消した。そう考えれば、一応の辻褄は合う。
ただ、強大な力を有しているであろう氏吉が、そう簡単に倒されるものなのか。勝之助はその点が引っ掛かっていた。
「拙者も、その可能性が高いと思っております」
「だが、殿がそう簡単に倒されるとは思えんのだが……」
「確かに、普通に考えればそうですが、小田原の軍勢が、相模川でもののけの大群を完膚なきまでに叩きのめしたという情報もありますので、これは十分にあり得ることかと」
相模川の戦いについては、勝之助の耳にも届いていたが、あまりにも極端な戦果だったゆえ、純粋に信じることができなかったのである。
「相模川については私も聞いている。ただ、あまりにも夢物語すぎるゆえ、にわかには信じられんのだ」
「それはわかりますが、もののけたちが敗走してきたのは事実です。報告によれば、ほぼすべての戦果が異形な大筒と、秀頼様配下の冒険者たちによるものだとのこと」
「秀頼様配下の冒険者か……それはそれで問題ではあるがな」
勝之助は顔をしかめた。
「どういうことですか?」
「もののけには滅ぼされなかったが、秀頼様によって滅ぼされるかもしれんということだ」
勝之助は複雑な感情を抱きつつ、騒動の後始末に取り掛かるのだった。
翌日、もののけ討伐軍は江戸城に到着した。
「ご苦労であったな」
わざわざ門前で待ち構えていた勝之助は、馬上の正二郎に向かって深々と頭を下げた。
「これは永島様、わざわざのお出迎え痛み入ります」
「なんの、立場からすれば当然のことだ。それで、例の冒険者と大筒というのは?」
「後ろにおりますので、お呼びしましょう。辰巳殿、ユノウ殿、大道寺殿、こちらへお越しくださーい。それと、大筒は役目を終えたということで退いております」
江戸への移動中、入ってくる情報から妖怪との戦いは完全に終わったと判断できたので、市丸や楯野など、全員が帰っていたのだ。
「そうか。絶大な威力を発揮したと聞いていたので、ひと目見たかったのだが、致し方ないな」
少し残念そうにしている勝之助のところへ、隊列の最後尾から辰巳とユノウ、そして奈々の三人がやって来た。
「永島様、こちらが冒険者で旅芸人の辰巳殿、そのお隣が冒険者のユノウ殿、そしてご存じかと思いますが、大道寺奈々殿です」
「はじめまして、辰巳です」
「どうも、ユノウです」
「永島様、お久しぶりでございます」
(まさか、このようなかたちで会うことになるとは……)
奈々の顔を見るなり、勝之助は若干顔をひきつらせた。
「お三方の活躍は聞き及んでおります。さ、どうぞこちらへ」
勝之助の案内で、辰巳たちは江戸城内へと入っていった。
勝之助は困惑した様子で江戸城内を見て回っていた。
浦賀水道で氏吉が消滅した瞬間、江戸にいた妖怪たちも一斉に姿を消し、捕らわれていた家臣たちは、様子をうかがっていた忍者たちの手によって続々と解放されつつあったのである。
「はい。城内を隈なく調べましたが、もののけたちの姿は全くありませんでした。江戸市中も現在調べておりますが、今のところ姿は確認されておりません」
傍らにいる忍者にも、若干の戸惑いの色が見られる。
「……殿が、お敗れになったということなのか?」
喚び出した者がいなくなったので、妖怪たちは姿を消した。そう考えれば、一応の辻褄は合う。
ただ、強大な力を有しているであろう氏吉が、そう簡単に倒されるものなのか。勝之助はその点が引っ掛かっていた。
「拙者も、その可能性が高いと思っております」
「だが、殿がそう簡単に倒されるとは思えんのだが……」
「確かに、普通に考えればそうですが、小田原の軍勢が、相模川でもののけの大群を完膚なきまでに叩きのめしたという情報もありますので、これは十分にあり得ることかと」
相模川の戦いについては、勝之助の耳にも届いていたが、あまりにも極端な戦果だったゆえ、純粋に信じることができなかったのである。
「相模川については私も聞いている。ただ、あまりにも夢物語すぎるゆえ、にわかには信じられんのだ」
「それはわかりますが、もののけたちが敗走してきたのは事実です。報告によれば、ほぼすべての戦果が異形な大筒と、秀頼様配下の冒険者たちによるものだとのこと」
「秀頼様配下の冒険者か……それはそれで問題ではあるがな」
勝之助は顔をしかめた。
「どういうことですか?」
「もののけには滅ぼされなかったが、秀頼様によって滅ぼされるかもしれんということだ」
勝之助は複雑な感情を抱きつつ、騒動の後始末に取り掛かるのだった。
翌日、もののけ討伐軍は江戸城に到着した。
「ご苦労であったな」
わざわざ門前で待ち構えていた勝之助は、馬上の正二郎に向かって深々と頭を下げた。
「これは永島様、わざわざのお出迎え痛み入ります」
「なんの、立場からすれば当然のことだ。それで、例の冒険者と大筒というのは?」
「後ろにおりますので、お呼びしましょう。辰巳殿、ユノウ殿、大道寺殿、こちらへお越しくださーい。それと、大筒は役目を終えたということで退いております」
江戸への移動中、入ってくる情報から妖怪との戦いは完全に終わったと判断できたので、市丸や楯野など、全員が帰っていたのだ。
「そうか。絶大な威力を発揮したと聞いていたので、ひと目見たかったのだが、致し方ないな」
少し残念そうにしている勝之助のところへ、隊列の最後尾から辰巳とユノウ、そして奈々の三人がやって来た。
「永島様、こちらが冒険者で旅芸人の辰巳殿、そのお隣が冒険者のユノウ殿、そしてご存じかと思いますが、大道寺奈々殿です」
「はじめまして、辰巳です」
「どうも、ユノウです」
「永島様、お久しぶりでございます」
(まさか、このようなかたちで会うことになるとは……)
奈々の顔を見るなり、勝之助は若干顔をひきつらせた。
「お三方の活躍は聞き及んでおります。さ、どうぞこちらへ」
勝之助の案内で、辰巳たちは江戸城内へと入っていった。
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