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第2章 北条家戦争

相模川にて陣を張る

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 ワミからの報告を受け、もののけ討伐軍は相模川で妖怪たちを待ち構えていた。

「お前ら、一体たりともここを通すなよ」

 正二郎の率いる部隊は、橋を渡ってきた妖怪を攻撃すべく、橋の小田原方出入口付近に布陣。

 一方で、辰巳たちは川岸から橋や対岸の様子をうかがっていた。

「うーむ、もう少し左か」

 照之進は橋を渡っている妖怪を弓で射るべく、弓を構えながら攻撃位置を探っている。

 その近くでは、市丸と三郎が並んで待機していた。

「い、いよいよ戦うのか……」

 初の実戦が眼前に迫っているということもあり、対岸の街道を狙う市丸の緊張はいやが上にも高まっていた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。落ち着いて戦えば何も問題ありませんから」

 三郎は、市丸の緊張をほぐすために落ち着いたトーンで話しかけた。

「ありがとうございます。なんか、知久さんにそう言ってもらえると安心します」

 戦闘車両同士通ずるものがあるのか、三郎の言葉は市丸に響いていた。

 そして橋を挟んだ反対側の川岸では、辰巳とユノウが並んで橋を眺めていた。

「こうやって布陣しておいて言うのもあれですけど、たぶん妖怪たちは橋を渡ってきませんよ」

 ユノウは率直な感想を漏らす。

「どうして?」

「どうしてって、こんな風に橋の周りで待ち構えているのを見たら、普通は渡ってきませんよ。どう考えたって、橋を渡ってる最中に攻撃されるわけですから」

「けど、橋を渡らなきゃこっちに来られないんだから、無理をしてでも渡ってくるんじゃないの? 例えば、朧車っていうのを盾代わりにするとかさ」

 主要街道の橋だけあって、強度はもちろん、馬車同士が余裕ですれ違えるだけの幅が確保されており、朧車が走行するうえでの支障は何もなかった。

「確かに、普通ならそれも有効な戦術だと思いますよ。ただ、今回は市丸さんがいるんで、その戦法は使えませんね」

 市丸に与えられた任務は朧車の撃破であり、対空ミサイルの戦果から考えれば、妖怪相手でも戦車砲は十二分に威力を発揮するはずであった。

「あ、そっか。そのためにあそこで構えてるんだもんな」

「向こうがどういう戦い方をしてくるかはわかりませんが、高い攻撃力を有しているであろう朧車を倒してしまえば、勝負はほぼ決まりですよ。ここでは大兵力を展開することはできませんし、遠距離攻撃の使い手が大勢いるとも思えません。そして橋を渡ろうとすれば、さっき言ったように集中砲火を浴びることになりますから」

「なるほど……あ、だからここに布陣したのか」

「そうですよ。偶然ここになったわけじゃないんですからね。地図で地形とかをしっかりと確認したうえで、『ここだ!』って思って提案したんですよ」

 辰巳から妖怪たちの位置情報を聞いていたユノウは、地の利が活かせるこの場所で待ち構えるべきだと、正二郎に強く進言していたのだ。

「あ、これユノウの案なんだ?」

「ええ。正二郎さんに『ここがいいですよ』って提案したら、『わかりました』って快諾してくれたんです」

 冒険者に指図されたくないという思いが、正二郎の中に少なからず存在していたものの、出発前に吉右衛門に言われた言葉や、三郎の圧倒的な戦果を前に、提案を受け入れるしかなかったのだ。

「そうなんだ。ところで、もし攻撃で橋が壊れちゃったらどうすんの?」

「ご心配なく。戦闘によって生じた損害は、北条家が責任をもって補償することになってますから」

「じゃ、問題ないな」

「あ、そうだ橋といえば、この戦いが終わったら、また頑丈なコンクリートの橋を切って出してください」

 辰巳は酒匂川に差し掛かった折、コンクリート橋を切って出していた。

「あの二人が渡る用だろ、わかってるって」

 市丸と三郎はともに五〇トン近い重量があり、いかに頑丈な木造橋といえども、耐えられるはずがなかった。

「お願いし……」

 ユノウが話している最中、強烈な発砲音が相模川に轟いた。
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