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第1章 北条家騒動
何で移動しようかな?
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「これくらいの光で大丈夫ですか?」
ユノウは懐中電灯で辰巳の手元を照らした。
「うーん……まぁ、いいか。で、どんなのを切ったらいいんだ?」
「小田原へ行くのはあたしと辰巳さん、夏ちゃん、奈々ちゃん、吉右衛門さん、仁仙さんの六人ってとこでしょうから、シンプルに考えればミニバン、余裕を持たせるならマイクロバスって感じですかね」
「マイクロバス? 俺そんなでかい車運転したことないよ」
「ご心配なく。昔トラックを運転していたんで、大型車の運転は任せてください。あ、ちなみにこれがその時の相棒です」
ユノウはレッグポーチから一枚の写真を取り出した。
「おぉっ」
写真には、電飾を組み込んだシートキャリアやフロントバンパーなどを装着したド派手なデコトラと、その前でピースサインをするユノウの姿が写っていた。
「荷台に荒波と鯛の絵を描いていたんで、仲間連中からは”乙姫”ってあだ名で呼ばれてたんですよ」
「へぇ。これって、いくらくらいかかってるの?」
「正確には覚えてないですけど、一〇〇〇万くらいはかかってますかね」
「一〇〇〇万……。このトラック、その中に入ってないの?」
「さすがに処分しましたよ。家具なんかと違って、持ってるだけで保険とか税金がかかりますからね」
「そっかぁ、本物見たかったな」
辰巳は残念そうに写真をユノウに返すと、アタッシュケースから紙とハサミを取り出し、手早く形を切り始めた。
「何を切ることにしたんですか?」
「マイクロバス」
「ちなみになんですけど、そういうお題をふられることってありました?」
「さすがにマイクロバスはないなぁ。乗り物だと鉄道系が多いかなぁ、新幹線とかSLとかね」
シンプルな形だったこともあって、辰巳はあっという間に切り終えた。
「出でよ、マイクロバス!」
眩い光とともに姿を現したのは、テレビのロケバスやホテルなどの送迎バスとして使われていそうな感じのマイクロバスだった。
「見た感じは普通そうだなぁ」
「ですね」
辰巳とユノウが近づいていくと、突然パッとヘッドライトが光り、クラクションが鳴り響いた。
「おわっ!」
「きゃっ!」
二人は驚いてその場に立ち止まり、恐る恐るバスの運転席を見たが、そこには誰もいなかった。
「ごめんなさい。挨拶のつもりだったんですけど、驚かせちゃったみたいですね。初めまして、僕はバスの迎です」
その声は、バスのフロント部分あたりから聞こえてきた。
「……自動放送って感じではないな。こっちの世界だと、バスみたいなのも普通にしゃべったりするの?」
「いえ、さすがにそこまでファンタジーじゃないですから、なんでもかんでも普通にしゃべったりはしませんよ」
「じゃあ、このバスが特別ってこと?」
「まぁ、特別っていえば特別ですよね。辰巳さんが魔法で生み出したようなものですから。あ、もしかしたら、辰巳さんが切ったものは意思を持って現れるのかもしれませんよ。今までに切ったやつだって、全部普通にしゃべってたじゃないですか」
「いや、そう言われればそうだけどさ。俺が切ったのって、騎馬武者とか魔法使いとか、全部意思を持ってるのが当たり前のやつだったじゃん」
「じゃあ、試しに何か無機物的なものを切ってみましょうよ。あ、壺なんてどうですか?」
「壺ねぇ……」
辰巳は言われるがままに壺の形を切った。
「出でよ、壺」
呼ばれて現れたのは、三〇センチほどの高さがある陶器の壺であった。
「……」
辰巳は三〇秒ほど様子を見たが、特に動いたりする素振りはなかった。
「……もしもし、壺さんでしょうか?」
辰巳は壺に向かって声をかけてみた。
ユノウは懐中電灯で辰巳の手元を照らした。
「うーん……まぁ、いいか。で、どんなのを切ったらいいんだ?」
「小田原へ行くのはあたしと辰巳さん、夏ちゃん、奈々ちゃん、吉右衛門さん、仁仙さんの六人ってとこでしょうから、シンプルに考えればミニバン、余裕を持たせるならマイクロバスって感じですかね」
「マイクロバス? 俺そんなでかい車運転したことないよ」
「ご心配なく。昔トラックを運転していたんで、大型車の運転は任せてください。あ、ちなみにこれがその時の相棒です」
ユノウはレッグポーチから一枚の写真を取り出した。
「おぉっ」
写真には、電飾を組み込んだシートキャリアやフロントバンパーなどを装着したド派手なデコトラと、その前でピースサインをするユノウの姿が写っていた。
「荷台に荒波と鯛の絵を描いていたんで、仲間連中からは”乙姫”ってあだ名で呼ばれてたんですよ」
「へぇ。これって、いくらくらいかかってるの?」
「正確には覚えてないですけど、一〇〇〇万くらいはかかってますかね」
「一〇〇〇万……。このトラック、その中に入ってないの?」
「さすがに処分しましたよ。家具なんかと違って、持ってるだけで保険とか税金がかかりますからね」
「そっかぁ、本物見たかったな」
辰巳は残念そうに写真をユノウに返すと、アタッシュケースから紙とハサミを取り出し、手早く形を切り始めた。
「何を切ることにしたんですか?」
「マイクロバス」
「ちなみになんですけど、そういうお題をふられることってありました?」
「さすがにマイクロバスはないなぁ。乗り物だと鉄道系が多いかなぁ、新幹線とかSLとかね」
シンプルな形だったこともあって、辰巳はあっという間に切り終えた。
「出でよ、マイクロバス!」
眩い光とともに姿を現したのは、テレビのロケバスやホテルなどの送迎バスとして使われていそうな感じのマイクロバスだった。
「見た感じは普通そうだなぁ」
「ですね」
辰巳とユノウが近づいていくと、突然パッとヘッドライトが光り、クラクションが鳴り響いた。
「おわっ!」
「きゃっ!」
二人は驚いてその場に立ち止まり、恐る恐るバスの運転席を見たが、そこには誰もいなかった。
「ごめんなさい。挨拶のつもりだったんですけど、驚かせちゃったみたいですね。初めまして、僕はバスの迎です」
その声は、バスのフロント部分あたりから聞こえてきた。
「……自動放送って感じではないな。こっちの世界だと、バスみたいなのも普通にしゃべったりするの?」
「いえ、さすがにそこまでファンタジーじゃないですから、なんでもかんでも普通にしゃべったりはしませんよ」
「じゃあ、このバスが特別ってこと?」
「まぁ、特別っていえば特別ですよね。辰巳さんが魔法で生み出したようなものですから。あ、もしかしたら、辰巳さんが切ったものは意思を持って現れるのかもしれませんよ。今までに切ったやつだって、全部普通にしゃべってたじゃないですか」
「いや、そう言われればそうだけどさ。俺が切ったのって、騎馬武者とか魔法使いとか、全部意思を持ってるのが当たり前のやつだったじゃん」
「じゃあ、試しに何か無機物的なものを切ってみましょうよ。あ、壺なんてどうですか?」
「壺ねぇ……」
辰巳は言われるがままに壺の形を切った。
「出でよ、壺」
呼ばれて現れたのは、三〇センチほどの高さがある陶器の壺であった。
「……」
辰巳は三〇秒ほど様子を見たが、特に動いたりする素振りはなかった。
「……もしもし、壺さんでしょうか?」
辰巳は壺に向かって声をかけてみた。
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