よもやまメモ噺

本物にかじられる噺

　福沢諭吉に樋口一葉、夏目漱石など、紙幣の表面には肖像画が描かれることが多い。

　人間の顔は他の図柄と違って、微妙な差異まで識別しやすいからで、偽造防止の一環で採用されているとのこと。

　ただし数ある日本銀行券のうち、最古の紙幣には肖像画ではなく、「大黒天」が描かれていた。

　デザインを担当したのはイタリアの画家で、当時お雇い外国人としてエドアルド・キヨッソーネである。

　そのデザインとは、大黒天が打出の小づちを持って米俵の上に座り、その下に米を狙うかのような3匹のネズミが描かれているものだ。

　この時は10円札と100円札、1円札の3種類の紙幣が発行されたが、デザインはすべて大黒天と3匹のネズミで統一されていた。

　ところが、これらのお札には強度を増すために、用紙にこんにゃく粉を混ぜてあったため、本物のネズミにかじられるという事件が頻発したとのことだ。

　そしてその4年後から、順次改造券が発行され、その改造券から肖像画が描かれるようになったという。

　では、今回はこの辺で失礼をば。