よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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マッチで気絶噺

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 今はすっかり見る機会が少なくなってしまったマッチ。

 1845年にイギリス人のジョン・ウォーカーに発明されたマッチは、幕末になって外国人とともに日本へとやって来た。

 一瞬のうちに火を発するマッチは、火打石で苦労しながら火をつけることしか知らなかった日本人にはまるで魔法のように見えたらしく、横浜居留地を歩いていた武士が、通りかかった外国人の手の中から突然炎が上がったのを見て、びっくりして刀の柄に手をかけたという話も残っている。

 これはただ外国人がタバコに火をつけようとして、マッチをこすっただけの話なのだが、それだけ日本人にとってはマッチはびっくりする存在だったのだ。

 明治に入ってマッチが輸入されるようになっても、高価だったために庶民がお目にかかることはなく、とある芸者は暗がりで客がマッチをこすり、パッと火が燃えるのを見て「キャッ」と一声上げて気絶してしまったという逸話も残っているとのこと。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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