よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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へなちょこ噺

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 1人前でない人や臆病な人、または未熟な者や取るに足らない者を意味する言葉として、へなちょこというものがあるが、この言葉の誕生にはある新聞記者が関わっているという。

 時は明治、新聞記者の野崎左文が神田明神内の料亭「開花楼」で宴会を開いた際、店側が用意した盃は外側に鬼、内側にお多福の顔が描かれた楽焼風だった。

 野崎たちは面白い盃だと早速女中に酒を注いでもらったところ、ジュウジュウと音がしたかと思うと、続いてブクブクと泡が立ち、酒が盃に吸い込まれてしまい「こいつは見かけによらない劣等品だ。へな製の猪口だからだろう」と出席者が言ったという。

 埴とは瓦や陶器の原料になる粘土を多く含んだ黒い土のことで、この出来事以来、へなちょこは悪口・軽口として花柳界から世間に広まっていったとのこと。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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