よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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死刑囚の悪あがき噺

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 江戸っ子たちは初物が大好きなことで有名であった。

 なかでも高い人気を誇っていたのが春から夏にかけて出回り始める初鰹で、「江戸っ子なら女房を質に入れてでも食べるべき」といわれたほどである。

 なぜそれほどまでに初物に執着したのか、江戸っ子が見栄っ張りで負けず嫌いだったことに加え、初物を食べると75日寿命が延びると信じられていたからである。

 なぜ75日なのか、この理由には諸説あるが、その中のひとつに死刑囚がらみのものがあった。

 江戸時代には、「死刑執行の直前には、罪人の望むものを食べさせてやる」という温情措置があり、とある罪人はそれを利用して役人に季節はずれのものを食べたいと懇願し、その結果死刑執行が75日延びたという。

 このことから「初物を食べると75日寿命が延びる」という言葉が生まれたとのこと。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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