よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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敵をメシ取れ噺

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 広島を代表するお土産のひとつといえば、宮島杓子である。

 この宮島杓子が作られるようになったのは寛政年間のことで、当時の宮島は厳島神社への参拝客は多かったものの、特別な産業がなかったために暮らしは厳しかったという。

 そんな島民の生計を助けるために、島内にある光明院の誓真という修行僧が、宮島土産として杓子の制作を思いつき、島内に広めていったのが始まりだとのこと。

 それが現在のように広く知られるようになったのは日清・日露戦争がきっかけで、当時の広島港は全国から招集された兵士が集まる場所で、出征前の兵士は無事に帰還できるように、厳島神社で「敵をメシ取れ」という強い思いを込めて、自分自身の名前を杓子に書いて奉納していたのだ。

 また、無事に復員すると兵士は宮島の杓子を故郷へのお土産として持ち帰ったので、縁起の良い杓子として全国に広まっていったのである。

 ちなみに、お土産として売られている宮島杓子に文字が書かれているのはその名残だ。

 では、今回はこの辺で失礼をば。

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