よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

文字の大きさ
上 下
348 / 965

でっちあげの卒業写真噺

しおりを挟む
 直木賞は知っているが直木三十五は知らないという人は結構多いと思う。

 直木は「大衆小説」というジャンルと用語をつくった人物で、彼を記念して1935年に始まった大衆小説の文学賞が直木賞だ。

 直木三十五は本名を植村宗一といい、大阪の谷町で育った。

 早稲田大学に入った時には既に所帯持ちだったとのことで、さらに仕送りを使い込んでしまったこともあり、授業料を滞納した直木は大学から退学を言い渡されてしまう。

 ただ、このことを親に告げると心配させてしまうと思った直木は一計を案じる。

 同級の青野季吉の横に並んでおさまる卒業写真をでっちあげ、それを大阪の父親に送ったのだ。

 大学を卒業したという事実よりも、卒業写真の方がはるかに親を安心させるという考えが、直木にはあったのだろう。

 事実、直木が苦心してでっちあげた1枚の卒業写真は、映像の力で親を安心させたとのこと。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
しおりを挟む

処理中です...