よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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裁かれたり裁いたり噺

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 1880年、渡辺魁という人物が勤務していた長崎の商社で資金を着服して逮捕された。

 彼は無期懲役の刑に服していたが、脱走を試みて成功し、名前を辻村庫太に変えて大阪府庁地方税係へ勤めることになったのだ。

 その後大分で新たに戸籍をつくって裁判所の職員となり、書記、判事試補と順調に出世していき、1890年には判事に任命されることになった。

 しかもなんの因果か、彼が判事として勤めていた裁判所は、罪を犯して逮捕された長崎の地にあったのだ。

 ある意味第二の人生を謳歌していた彼だったが、一方で辻村判事はかつての脱獄犯である渡辺魁に瓜二つだという噂が立ち始めていた。

 そしていよいよ警察も動き出し、判事就任の翌年に逮捕されてしまったのである。

 ちなみに、逮捕された渡辺は福江監獄に留置されることになったのだが、そこの看板は彼が判事時代に書いたものだったのだ。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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