よもやまメモ噺

サン・ブエナ・ベンドゥーラ噺

　日本製の船として初めて太平洋横断を達成したのは、江戸時代初期に建造された「サン・ブエナ・ベンドゥーラ」という帆船であった。

　日本の船とは思えない名前をしているが、その理由は名前をつけたのがスペイン人だったからだ。

　1610年、スペイン人で前フィリピン総督だったロドリゴ・デ・ビベロたちが乗った船が嵐に巻き込まれ、房総半島に漂着した。

　この事を知った家康は、彼らスペイン人をメキシコへ送り届けるため、外交顧問であったウィリアム・アダムズによって建造した帆船を、彼らに貸し与えたのだ。

　そしてスペイン人たちはこの船を「サン・ブエナ・ベンドゥーラ」と名付けて出港し、これが初めて太平洋を渡った日本製の船になったのである。

　ちなみに、この船に日本人は乗っていなかったが、日本人が乗った日本製の船としては、1614年に伊達政宗が使節団をローマへ送るために造らせた「サン・ファン・バウティスタ」が最初であった。

　では、今回はこの辺で失礼をば。