よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

文字の大きさ
上 下
248 / 965

応を間違えた噺

しおりを挟む
 名人、達人でも失敗するという意味で用いられる「弘法にも筆の誤り」

 これにはちゃんとモデルとなったエピソードが存在しているのだ。

 「今昔物語」によれば、舞台は大内裏の応天門。

 勅命を受けてこの門に掲げる額を書いた弘法大師は、書き終えた額を門にかけてみて衝撃を受ける。

 なんと”応”の1画目の点を書き忘れていたのだ。

 つまり、弘法が誤ったものとは”応”の字だったのである。

 なお、この時の弘法大師の反応について「今昔物語」には「応天門の額打ちつけて後これを見るに、はじめの字の点、すでに落ち失せたり。驚きて筆をなげて点を付けつ」という記載があった。

 間違いに気づいた弘法大師は、筆を投げて1画目の点を入れたというわけだから、恐ろしいコントロールである。

 ちなみに、「今昔物語」には「もろもろの人これを見て、手を打ちてこれを感ず」という周囲の反応も記されていた。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
しおりを挟む

処理中です...