よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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船は急に止まれない噺

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 車はブレーキを踏むと減速し、最終的にタイヤの回転をストップして停車する。

 そして急ブレーキをかけるとタイヤの回転が急激に落ち、タイヤと道路面の摩擦面によって停止するという仕組みになっているのだが、船にはこのようなブレーキ装置はついていない。

 その理由は簡単で、ブレーキ装置を使って船を停止させようとしても無意味だからだ。

 仮にブレーキ装置を付け、推進力を生み出すスクリュー・プロペラの回転を急停止させたとしても船はすぐに停止できない。

 なぜなら船は車よりもはるかに大きいので、一定速度で航行している船は非常に大きな運動エネルギーを持っており、プロペラの回転を止めても惰性で進み続け、なかなか止まれないのである。

 しかも、船が接している水は地面よりも抵抗がはるかに少なく、摩擦力はほとんど得られない。

 なのでもしプロペラを逆回転させたとしても、船の長さの十数倍は惰性で進むので、30万トン級の巨大タンカーになると、全速前進の状態から全速後進に切り替えたとしても、完全に停止するまでに4~5キロ進むことになるという。

 加えて全速後進を行うと、舵が利かなくなってしまうので、非常に危険な状態になる。

 そのため、船が緊急避難する時には、船を停止させるよりも、エンジンを切ったまま舵を切り、左右どちらかへ曲がる方法を選ぶとのこと。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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