よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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船首像噺

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 中世の帆船には、船首に人や動物などの像を取り付けているものが多かった。

 この船首像は、船首に絵や彫刻を施していたことがルーツとされているが、なぜそのようなことをしたのであろうか。

 理由のひとつは「護符」としての役割。

 その昔、地球は平面だと考えられていたのだが、水面の果てには大きな滝があるとか、恐ろしい魔物がいると考えられていた。
 
 そこでそういったものから逃れるために、お守りを船に付けたのだという。

 また、もうひとつの理由として「威嚇」の役割がある。

 たくましい戦士や神話に登場する神々の像などといった立派なものを付けることで、それだけの力があるんだということを他の船にアピールしていたのだ。

 このように船のシンボルとしても存在感を示していた船首像であったが、蒸気船の登場とともに船首の形状が変わり、次第にその姿を消していったのだが、その名残ともいえるものが陸上に残っていた。

 それがベンツやロールスロイスなどの先端にみられるエンブレムで、これは船首像をモチーフにして付けられたといわれている。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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