よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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怒りの個展噺

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 ギュスターヴ・クールベのことを知っている人は、そんなにいないと思う。

 彼は19世紀半ばに活躍した画家で、自分が生きている”今”を描くことに強いこだわりを持っていた。

 1855年、クールベは横幅が6メートル近くある「画家のアトリエ」という大作を発表した。

 これは自分のアトリエをテーマにした作品で、そこには彼自身をはじめ、裸婦のモデルや友人たち、商人や子持ちの女性など様々な人々の”今”が描かれている。

 クールベはこの作品を同年に開かれるパリ万博に出品しようとしたが、事前審査の段階で「サイズが大きすぎる」といわれて断られてしまう。

 ただ本当の理由は、フランスの繁栄などを誇示する万博において、クールベの絵はふさわしくないというものであって、サイズは方便だったともいわれている。

 いずれにせよ、出品を断られたクールベはこの決定に対抗すべく、万博会場のすぐそばで個展を開いたのだ。

 当時は画家のグループによる展示が一般的であり、クールベの開いた展示会が世界初の個展だといわれている。

 しかし残念ながら、この個展は世間に受け入れられず、会場は閑散としていたとのこと。

 では、今回はこの辺で失礼をば。

 
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