よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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境界事件噺

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 警視庁なら東京都、神奈川県警なら神奈川県など、現在の警察は都道府県単位で組織されており、管轄もその都道府県内となっている。

 そのため、県境で起きた事件は、どちらの警察が管轄するのか調整することがあった。

 江戸時代の事件捜査もこれと似ており、武家地、寺社地、町人地など、事件が起きた場所によって管轄が異なっていた。

 武家地であれば幕府の評定所、寺社地は寺社奉行、町人地は町奉行がそれぞれ管轄していたため、寺社地で起きた事件は、遠山の金さんや大岡越前といった町奉行が手出しをすることはできなかったのである。

 ある時、浅草の仁王門で面倒くさい事件が発生した。

 それは首つりだったのだが、発見された時には首の縄が切れ、死体が石垣の上に乗っかっていたのだ。

 石垣の内側は寺社奉行の管轄で、外側は町奉行の管轄になるのだが、死体はその境に位置しているようなかたちになる。

 そのため、どちらが管轄するかで揉め事になり、最終的には老中たちが「首つりならば、首のある方が担当せよ」との裁定を下し、町奉行の担当案件となったのだ。

 では、今回はこの辺で失礼をば。
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